午後一時、私は焼うどんを作った

隅田 天美

午後一時 私は焼うどんを作った

 私の父は電気技師をしていた。


 性格は私以上に変、というか、非科学的なことが嫌いな人だった。


 嫌なことを書けば、子供としてみると「俺=世界の常識」という認識がどうも合わない。


 しかし、私の持病(発達障害)が分かると、「もしかしたら、俺もそうかも知れないなぁ」と言うようになる。


 正直、疎ましい人であった。


 何かあると暴力をふるった。


 ただ、気分がいいと一緒に買い物に行ったり本を買ってくれたから、露骨に嫌な顔はしなかった。


 料理もそこそこ嗜めたが、カレーに味噌を入れて母と弟、私で大反対をした記憶もある。


 今ではぜいたく品になったが、網の上でハマグリを焼いて開いた身に少し醤油をたらして食べさせてくれた。


 私の食の好みは母より父に近いのかも知れない。



 さて、一日外出録ハンチョウ、大槻太郎の父との思い出のメニューは焼うどんである。


 今回肉は要れない。


 なぜなら、大量に作った鶏肉の幽庵焼きが残っているから。


 野菜もスーパーやコンビニで買えるカット野菜を使った。


 だって、ジムの帰りでコンビニ寄ったらカット野菜三割引き。


 お買い得。


 即ゲット。


 

 この焼うどんの最初のコツはうどんを茹で直しすること。


 すると、麺がもちっとして食べ応えがある。


 カット野菜をササッとフライパンで炒めたら湯切りしたうどんを投入。


 これも水分を飛ばし野菜と馴染ませる。


 次のコツは味付けに醤油だけではなく、顆粒和風出汁を使うこと。


 すると、醤油の尖った塩っ気がだいぶ丸くなる。


 皿に盛り、完成……ではない。


 最後のコツはパックの鰹節と刻み海苔を振りかけること。


 この鰹節と海苔が非常にうどんの味を引き立てる名脇役になってくれる。


 

 今、私の父は趣味の鉄道や母と一緒に旅行をしたり、好きなことをしている。


 黒々とした髪は完全に白髪になり、会う度に後頭部が歴史の教科書で見た宣教師フランシスコ・ザビエルみたいになっている。


(なお、宣教師のほうは自発的に剃っている。「はーげ」と言ったらザビエル宣教師からニードロップを食らっても文句は言えまい)



 たまには、私のほうから親に会いに行こうかな?


 熊が出るらしいけど……

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午後一時、私は焼うどんを作った 隅田 天美 @sumida-amami

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