第15話

 カルマンハイルの王都はアサルカルナの王都とはまた違った賑やかさがあった。戦争が終結し、人々は落ち着きを取り戻しているのだろう。



 王宮に着くと私はノイマン様のエスコートでそのまま城の中へと入っていく。


赤絨毯の両端には一定間隔で騎士が立っており、すれ違う時に皆敬礼をしている。そして私達はそのまま謁見の間へと通された。


 謁見の間には王様と王妃様、そして宰相と王太子のザモンド様が立っていた。


「陛下、並びに王妃殿下、グラード領、国領の一部を攻略し只今戻りました」


「ノイマン、お帰りなさい。待っていましたよ。ローザアネットをよく連れて帰ってきましたね」


王妃様は優しくノイマンに声を掛けた。


「我が息子よ、この度の件よくやった。2年前の褒賞を保留にしておいて、自分で取りに行くと突然言って出て行ったのは流石に驚いたがな!


嫁取りだったとはな。領土も広がった。褒美を取らせよう。何がいいのか?」


「では、郊外に新居を建てる許可を」


陛下はははっと笑いながら許可を出してくれた。


「ローザアネット様、お久しぶりですね。会う度に窶れていく姿、心配していたわ。あちらの国での生活は辛かったわね。色々と聞いていましたよ。


貴女がノイマンの嫁になってくれると聞いて私達はホッとしていますの。こんな素晴らしい嫁を連れてくるなんて鼻が高いわね」


「王妃様、お久しぶりでございます。私自身戸惑う部分もまだありますが、微力ながらもノイマン様を支えて行きたいと思っています」


「雑談もそれくらいに、後の処理はザモンドが行う。疲れただろう、ゆっくり休むのだ」


そうして私達は報告を終え、王宮のノイマン様の部屋へと下がった。



 ノイマン様の部屋は寝るためだけの部屋と言っても可笑しくはないほど物が無かった。ソファに腰を掛けてようやくほっとする。


「何もないだろう?」


「そうですね。もっとこう、剣とか防具が飾られてるイメージが」


「俺、そんなイメージを持たれていたんだ。そうだ、隣の部屋がローザアネットの部屋になっている。


新居が出来上がるまでここに住む事になる。結婚式はいつにしようか。俺としては今日このまま結婚届を出してもいいとさえ思っているんだ」


「ノイマン様、本当に私で良いのですか?」


「当たり前だ。こんなにも待ち焦がれて隣国から攫ってくる程君が愛おしい」


「私、こんなにも愛され、求められた事がなかったから・・・上手く、表現出来ないのですが、ノイマン様、私、今までで一番幸せで、嬉しくて、ノイマン様とずっと一緒に居たい。


私、ノイマン様に、ノイマン様だけに愛されたい。そして私だけをずっと、この先も愛して貰いたい、です」


ノイマンはローザアネットのストレートな言葉に感極まったようで彼女をギュッと抱きしめた。


「今すぐ結婚しよう」


そこからの行動はとてつもなく早かった。そのまま従者を呼び、書類を持ってこさせてサインし、陛下にすぐに持っていくようにと指示を出した。


「これでもう俺たちは夫婦だ。これからも末永くよろしく。愛しい我妻」


「はい、これからも末永く宜しくお願いいたします」



 それから1年後に私達は結婚式を挙げ、新居へと移り住んだ。ノイマン様は国の英雄として変わらず軍を纏めている。私はのんびりと奥方ライフを送らせて貰っているわ。


大国となったカルマンハイルは周辺国全てと平和協定を結び、周辺国と平和を共有し目覚ましい発展を遂げる事になった。


そしてグラード公爵家はノルン侯爵と改め引き続き領地を治める事になった。



 アサルカルナ国はというと、ツィルトン陛下が割れた貴族たちを纏め上げ、国内の紛争は一気に解決する事になった。そして国内が纏まった事で他国のつけ入る隙が無くなり、また元の平和な時が戻ってきたようだ。


ザイル王太子殿下はというと、父を反面教師にしたおかげか、ツィルトン陛下に似ているのかとても優秀だと専らの噂になっている。


弟妹達もザイル王太子殿下を慕い、支えているとか。


 そしてアロイス前陛下はというと、早々に王宮から追い出され、側妃3人と北の離宮へと住む事になったようだ。離宮へと移動してしまえば政治に口を出す権限もないし、情報も入ってこない。穏やかとはほど遠いけれど、仲良く過ごしているのかもしれない。




「ノイマン、今、お腹を蹴ったわ」


「元気な子だ。生まれてくるのが楽しみだ」


私はそっとノイマンに口づけをする。


「ノイマン、私に幸せをくれてありがとう」


「俺も幸せだよ。愛している」


【完】

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疲れました。後は離宮で過ごす予定です。 まるねこ @yukiseri

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