文章を書く力とエッセイについて

犀川 よう

エッセイを練習してみませんか?

 拙作「根性論みたいな創作論(補修版)」で、「話を作る力」と「文章を書く力」は別物という話をしました。要は小説を書くにはまずは話を作る力が大事で、文章を書く力は後で養えばいいよねってことを言っております。話を作るということは小説における重要な作業でもありますが、何よりも大きな楽しみでもありますから、みなさんが楽しく小説を書き続けることによって自然と磨かれていくわけです。ですのである人の小説を拝読して「書きなれているな」と感じるときは、大抵は小説をたくさん書いていることによって話を作る力が結果的に養われているからなんですね。


 では後で養えばいいよねという文章を書く力はどこで養っていけばいいのでしょうかということについて、みなさんはどうお考えになりますでしょうか。実はわたしはこれを「エッセイを書くこと」で養っていけばいいのだと考えております。つまり、文章を書く力というのはエッセイを書くことで磨かれていくのですね。おやおや。エッセイという言葉を出てくると、「これは犀川の自主企画への参加を促しているのか!」なんて思うかもしれませんが、まあとりあえず話を聞いてやってください。


 そもそも文章を書く力というのは具体的に何なのかといいますと、大別すると三つありまして、


①説明能力・・・物事を相手に対して理解できるように簡明に説明する力

②論理展開力・・物事を相手に対して論理性のみ(感情表現抜き)で理路整然と説ける力

③説得力・・・・物事を相手に対して納得させる力


 なんですね。つまり文章(やエッセイ)とはどこまでも、


・論理性をもって表現する

・相手に簡明な言葉で理解させる


 ことが大事なんですね。ですので文章(やエッセイ)というのは「一部の人間しか理解できない論理」や「感情表現で主張する」や「装飾技術やレトリックを披露する」というものとはちょっと違うものなわけです。あくまでもロジカルかつシンプルに「相手に伝える力」をわたしは文章力だと言っているわけですね。おそらく、みなさんがここまでの文章を読んで、内容の賛否はともかく文章自体においては「この人は一体何を言ってるの?」という気持ちにはなっていないと思います。(そう願っております……)


 さて、普通の文章であれば①と②が要件の大半になるのですが、これがエッセイというジャンルになるとさらに③の要素も必要になります。つまり説得力ですね。この説得力というのはわたしが今こうして書いているように、みなさんにわかりやすくかつ「面白く」思ってもらう文章を書く力です。究極的な表現としては「つまらないものをいかに魅力的に伝えるか」ということになります。①と②は論理性であれば、③は表現性といってもいいかもしれません。エッセイは論文ではありませんから、読んでいて面白くなければなりません。


 エッセイというと「自分を語らなければならない恥ずかしさ」や「客観的な事実に基づいてしか書けないつまらなさ」というものを感じて嫌煙しがちです。ですがこの文章だってエッセイなわけです。しかも別にわたし自身を語っているわけではないですし、事実に基づくというわけでもなく、わたしの論理性のみで書かれております。ですので、みなさんがエッセイを書くということに抵抗感があるとすれば、もしかしたらそれはここまで説明してきた意味の文章力が不足していることを自分自身で感じているから、苦手意識を持ってしまっているだけなのかもしれません。


 文章を書く力というのは小説を書くだけでは養われません。なぜならばここまで説明した①から③のような力が必要で、養われる分野が違うからです。筋トレでいえば「鍛える箇所が違う」ということでしょうか。小説を書いていて自分の小説が「魅力がない」「面白いのかわからない」と思っている人がいるとすれば、それは文章を書く力が未熟だからであって、話を作る力が不足しているわけではないのです。ですので小説をいくら書きなおしてもそれらは解決しないのです。

 話を戻しますと、先述した通りエッセイになるとただ論理性を駆使するだけでなく「面白さ」も追及していかなくてはなりません。ですのでわたしは「エッセイは文字を使った総合芸術」だと思っております。これはまったくもって余談ですが、エッセイが小説よりも下だと思っている人に出会うと「いやいやちょっと待ってくださいよ」なんて気持ちになるのです。


 ということで、エッセイを書くというのは小説や文章を書く以前のもっと根本的な「文字で相手に伝える」ための基礎訓練であり、ひいては文章を書く力を養うことになるというわけです。

 このエッセイで、「エッセイ苦手なんだよね」とか「エッセイ書くのがどうも恥ずかしくて」とか思っているみなさんの意識が少しでも前向きになればいいなと思っています。


おしまい




 というエッセイを書きましたが、内容は理解していただいたとして、「物事を論理性をもって順序立てて面白く説明する」という観点において読み直してみてください。そうしたら、「自分でもこうやって書ける」と思うか、あるいは「もっと上手に書ける」と思うか、それとも「ちょっと無理」と思うかみなさんの考えができると思います。

 いずれにしても、これからも小説を書いていきたいのであれば、エッセイはジャンル違いだからとか畑違いだからとかいうことではなく、「自分の小説を別観点から鍛えることのできる面白いもの」だと思ってチャレンジしてほしいと思う次第です。最初は下手で当たり前です。だからこそお互い楽しく練習していければいいとは思いませんか?

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