第六話 白虎の夢

 ◇◆◇


 誰が、我を創造したのだろうか。

 気付いたときには、既にこの西の地を守護する白虎と崇められていた。


 魔獣が巣食うこの地で、歩けば魔獣が襲って来おったな。懐かしい。

 爪を振り下ろせば裂け、尻尾を振れば彼方に吹き飛んでいくような、弱き、そして邪魔な魔獣どもを、蹴散らす毎日であった。


 昔は、そこら中にあった、我の好物であるマタタビ石。結晶化したそれが、よく地面から生えておったわ。


 高純度のアレは美味であったな。


 我はアレさえ食えれば、他には何もいらなかった。

 散歩がてら北の地にまで足を伸ばしてみたことがある。


 そこで出会ったのが、玄武という、あの化け亀だ。

 でかい魔獣だと思って、引っ掻いてやったとき、あやつの硬さには驚いた。

 同時に、同じ聖獣であることを理解した。


 あやつの好物は何だったかな。

 とにかく、友と呼べる存在を知ったのはその時だった。


 あれはいい時代だった。

 溢れるマタタビ石に囲まれて、我が物顔でこの地を闊歩かっぽして。


 だが、それも、これもあの野郎が……。


 ◇◆◇


「……きろって」

「ンニャ?」

「小白虎! いい加減起きろって!」

 

 ったく、コイツ。本当に四聖獣かな? ヨダレ垂らしながら、うなされてる猫なんて、見たこと無い。


「フニャァァァァ」

「そろそろ、出発するぞ! 小白虎」

「誰が小白虎ニャ! 元の姿に戻ったら切り裂いてやるニャぞ!」

「へー。なら、マタタビ石探してやらないからな」

「待て待てニャ! それは困るのニャ」


 野営は好きじゃない。地面に体温を奪われて、震えながら夜中に起きるんだ。

 公爵令息の僕のひ弱な部分だな。


「ニャぁ、マタタビ石さがしてくれニャ」

「だめ! 今日は、何としてもこの森を越えるんだから」

「マタタビ石を喰らえば、白虎になって、こんな森ひとっ走りで抜けられるのにニャ」

「え、僕を背中に乗せて?」

「人間風情が、ニャレの背中にまたがる気かニャ。まぁ、マタタビ石のためなら、やぶさかではないがニャ」


 とにかく、早くこの森を抜けたい僕は、『ダウジング』を使うことにした。


「『ダウジング』! マタタビ石」

 

 キィィィィィン。

 

「……」

「どうニャ? ライカ」

「だめだ。反応が無いみたい」

「ちっくしょう! この辺もめっきりマタタビ石が減ってしまったニャ」

「しょうがないよ。小白虎。諦めて歩こう」


 三〇〇〇年もこの地に居る、小白虎が言うには、僕らの足でこの森を抜けるまでは、あと数日かかるらしい。


「あぁ、お腹へったな。料理長さんの料理が食べたいなぁ」

「ニャレもニャ。高純度のマタタビ石なんて、もう一〇〇〇年も齧っておらんニャ」

「狩りの技術もないしなぁ。木の実も無さそうだし」

「阿呆だニャぁ。なんのための『ダウジング』だと思っておるニャ」

「あっ」


 そうか、小白虎の餌を探せるなら、僕の食料だって探せるはずじゃないか。


「『ダウジング』野ウサギ」


 キィィィィィン


 獲物は簡単に穫れた。飛んでいく剣を追いかけていくと、野ウサギがしっかりと仕留められていた。『ダウジング』ってめちゃくちゃ使えるじゃないか。


 「『ダウジング』果実」

 「『ダウジング』きのこ」


 面白いほどに、食材が集まっていく。


「ダウジングって便利だね」

「六つ星だからニャ。普通、そんな広範囲で使用できるものではないんニャぞ」

「過去にも六つ星の神託を授かった人っているの?」

「うーん。ニャレは今、腹が減ってるから、今度、機会があったら話してやるニャ」

 

 その夜、ただ焼いただけの食材と果実を食べ、僕は昨日と同じく、寝心地の悪い夜を過ごすのだった。


 ◇◆◇


「二〇〇〇年もの間、共存関係を築いて来たが、私とたもとを分かつというのが、貴様らの総意……か。」

「ああ、我ら四聖獣と貴様一人で、勝てると思っておるのか?」

「所詮、動物。浅はか極まりない。それでは、私は貴様らの必要なものを奪ってやろうぞ。飢えに飢えるがよい。永く苦しい持久戦と行こうではないか」


 ◇◆◇ 


「ニャろーーー! 切り刻んでやるニャ」


 ゴンッ


「うるさい小白虎! どんな寝言だよ」

「フニャ……痛ててて。おい、ライカ。人間の分際でニャレを殴るとはどうゆう了見ニャ」

「まだ夜中だよ。いい加減にしてくれよ」

「ウニャ、ちょっと嫌な夢をみてニャ……」

 

 本当に変な猫だ。神に等しき存在だって? 叫ぶほどの寝言をいう阿呆猫じゃないか。そりゃ、白虎の時は心強い味方だけど、マタタビ石が無い時は、口うるさいただの猫だ。今後の旅が心配になってしまう。


「ふわぁ、もう一眠りしよう。もう、寝言は勘弁してくれよね」

「ニャ……」


 森の朝は、心地が良い。草木の葉を滴る朝露。小鳥の鳴き声が響き渡る。

僕は、昨日収穫した果実をかじりながら、ランプを鞄に仕舞う。


「出発しよう! 小白虎」

「ニャぁ。途中、マタタビ石のダウジングをしながら行くニャ」

「はいはい。わかったよ」


 僕らは、森を抜けホワイトス家の別荘を目指し、歩き始める。

 途中、何度かマタタビ石を見つけるためにダウジングしたが、剣が反応することはなかった。


 森を抜けると、そこは拓けた土地が待ち構えていた。

 流れる小川に沿って、歩いていくと、やっと別荘が見えてきたのだ。


「……廃墟みたいニャな」

「う、うん。僕ら、ここに暮らすのか……」

「絶対に嫌ニャぁぁぁぁ」

 



★☆★☆★☆★☆


「お前ら、読んでくれてありがとうニャ(ΦωΦ)」

「おい小白虎! 上から目線をやめろって」

「ライカはうるさいニャ。おい! ちゃんと★を三つよこすんニャぞ」

「こらー! なんて事を……このバカ猫がすみません、読者の皆さん」


「ライカは★★★要らニャいのか?」

「そ、そりゃぁ欲しいさ。三つ星どころか六つ星くらい欲しいさ」

「ニャぁ、一緒にお願いするニャ」


「「ブックマーク、★★★よろしくおねがいします!」」


毎日18時頃に更新します。

是非お読みいただければ幸いです。

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2024年9月25日 18:02
2024年9月26日 18:02

★★★★★★六つ星ユニークスキル【ダウジング】は伝説級~雑魚だと追放されたので、もふもふ白虎と自由気ままなスローライフ~ いぬがみとうま @tomainugami

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