ふたりだけの結婚式
挙式をしないなら、フォトウェディングという選択肢もあった。
けれど、教会で二人っきりで誓いを交わすのに憧れがあって、そうした。
実際にはスタッフの方々が花びらを撒いてくれているし、写真撮影をしてくれるカメラマンもいるのだが、それはそれ。
いまこの世界には二人きりだった。
ウェディングドレスを着た苺果ちゃんは、この世の誰よりも綺麗で、幸福そうに頬を染めていた。
「私が、羊さんを幸せにしてあげるね」
「それは嬉しい」
「羊さんも、誓ってね。私のこと、幸福にしなくていいから、不幸にはしないこと。私は羊さんの隣にいれれば幸せだから」
「……誓うよ」
白い手袋の手をとって、指にキスをする。
「苺果ちゃんに全部捧げるから、だから捨てないでほしい」
「捨てないよ。苺果が選んだ人だもん。そういう次元じゃない」
「……ずっといっしょ」
「そう、ずうっといっしょね!」
苺果ちゃんは、天使みたいに純真な笑顔で、約束してくれた。
幸せというものから何年も遠ざかっていた僕には、いまいち掴みかねるけれど。
愛し合う二人が永遠に一緒にいられるならば、それは幸せな未来のはずだ。
苺果ちゃんはまた日記を書き始めていて、結婚式の前に見せてくれた一文目にはこうある。
〈私たちは絶対に幸せになります〉
そんな強制力のある言葉、苺果ちゃん以外、使えないから少し笑った。
――死がふたりを別つまで、健やかなるときも、病めるときも、ともにいましょう。
完
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ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
近況報告のほうにも書いたのですが、エピソードと描写を増やし10万字超えの作品に直したいと思っています。
この物語の完全版が気になる方は、ぜひ作者フォローをして、お待ちください
2024/11/18
改稿版の連載を開始しました
【旧】自殺企図して地雷系彼女と交際することになった話【改稿前】 凪紗夜 @toumeinagisa
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