第4話 いつまでも

 小さな仏壇には、黒やピンクのけばけばしい名刺がずらりと並んだ。

 その中で明枝の小さな遺影は、にまにまご機嫌に笑っていた。

 進一は彼女の横にまたけばけばしい名刺を追加しながら、ひとごとを言う。

「まったく、僕が君のことを忘れられないからって、キャバクラがよいをさせるなんて」

 すると、明枝の遺影が不意に、ばたんと後ろへひっくり返る。――大笑いをしているかのようだ。

「それに君は、車まで壊してしまったんだから」

 進一が何とか立て直そうとするのにあらがい、明枝の遺影は笑い続ける。

 彼女は死んでも、その声が進一のそばから消えても、やはり、おかしな人であった。

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奥さんはカーナビゲーションシステム 柿月籠野(カキヅキコモノ) @komo_yukihara

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