試験記録
柳 一葉
試験記録〜3日目〜
期末試験3日目の当日私は、熱が出て魘されながらずっとベッドに沈んでた。
サイドテーブルに置いてあった栄養ドリンクを飲んで時計の針を確認する。
もう少しで試験が終わるなと。
また一眠りする。本当に痛くて辛い。
母は気を使ってくれて私の名前を呼んで
「ご飯出来たけど、食べれる?一応お粥を作ってみたけど」
私はベッドから起き上がり、トットッと怠い足を動かし1階のリビングへと向かった。
「ありがとう」と母へと感謝を伝えて、静かに一緒に食事をとった。
お粥ど言えども、私はまだ腫れ上がった扁桃腺に刺激が生じた。2階の自室へ戻った。まだ良くなる気配は無いかもしれない。口にペットボトルの水を含み錠剤の薬を体内へと流し込む。
明日は土曜で学校は休みだ。気長に治していくかと思いまたベッドに横たわる。
「はぁ、なんでこうなったんだろうか。」
出席日数ギリギリかもしれない。
ベッドの上で、頭上の照明へ腕を伸ばし左右の指を触り合う。
私は近頃学校へ通うのが難しくなってきてた。
体が弱いのもあるが、何にせよ協調性が乏しいし、同級生からも
「あの子変わってるよね。この前話してみたけどそこに観点置くんだって思ったもん。意味わかんないよね〜」
という【変人】の印を押されてる。教室に居る皆が敵に思ってる。勉強は好きだが、そういう思想を持つ人間と授業を受けたくない。と言う私も拗れてはいるとは分かってる。分かってはいるが。
私も好きでこうなった訳じゃないんだよ。 唯、貴方たちとは違うマイノリティな客観性を持ち成長したこの過程を否定などのされたくない。
私は幼い頃から独特な世界観を持っていた。
今思うと、それを気づかせたのは、同じアニメの映画ばっかり繰り返して見てたり、近所にある歴史資料館へと小学生低学年からずっと誘われるかの様に1人で行ってた頃。帳簿に住所や名前を書くのが楽しかったのもあるが、何にせよそこには、その時代にタイムスリップしたかの如く、何やら懐かしい気持ちになって心がホクホクしていた。この静寂の中私の足音しかならない程の無音、尚且つその場の雰囲気や気分が堪らなく好きで私生活で嫌な事があると、その時代の持ち主と対話出来てた様にも感じ通った。
その事を小学生の頃、友達数人に話をして連れて行くと最初は凄いって静かに喋っていたが、徐々に奥へと進むと「気味悪い」「早く出て外でバトミントンでもしよう」と言われた。
私はそれさえも、今までの体験もあの高揚とした気分まで全否定されたと思った。
その辺から私は【変人】と言われた。
それでも私は変わらず、ずっとその歴史資料館へと足を運んでいた。
こういう懐かしい気持ちも、気持ち悪いと言われた。癪に障ると感じるが、まあ今ではやはりあの頃の感性は独特だと中学生の自分も思う。少し潤っと頬を撫でた。
「早く熱が良くなりますように。今日はいい夢見れますように」
そう祈り私は休日に思いを託す。
土日も結局ベッドにいる時間が殆どだった。
月曜日になり洗面台で喉を確認する。
「漸く喉の腫れが治まったな。お母さん行ってくるね」
と私は通学する。徒歩15分といった所だ、まだ暑くて汗が額に滲んで目元へと流れてツンと痛かった。無事に学校へと到着した。
その日は1限目から私だけ別の教室で3日目に休んだ分のテストを受けた。冷房が効いててとても心地よかった。
今日受ける教科は
「英語」「数学」「美術」
着々と次から次へと問題を解き筆記していく。
3日目の教科はどれもあまり勉強してなくてもまあ、平均点はいくかなと思い軽い気持ちで受けてた。
英語、数学と終わり、後残るは美術だ。
構図の問題や、三原色は何色なのか、ゲルニカの作者は誰なのか等だ。私は楽しく解いていった。
最後はただ単なる筆記では無く、絵を描くと言うタイプの問題だった。この問題を解こうとすると、こちらへ来た先生が「大体15分位と時間をかけて解いて」と言った。
【問題】「実のなる木を一本描いてください」
私は今の思いのまま描いてく、一生懸命無心で描いていく。
無事に15分たっぷりと時間をかけて描いた。試験も終わりテストのプリントを先生が回収して「まだ相談室には戻らないで」と言われた。
先生はなぜ私が教室では無く、そこへと戻るのが分かったのか。と言うより、初めて見るこの先生と思う1人の女性は一体誰なんだ。
窓から風が吹きプリントを弄ぶ。スカートも揺らぎ足元に舞い込んで来たプリント
そこには木の幹は細々く根は無く、枝は荒れ果て、1つの林檎の実は木から落ち朽ち腐ってた。
そうこれは最初から、この問題を解く、今の私の心理状態、精神状態を図る為だけの「バウムテスト」だったのだ。
だから、私は学校が嫌いだ。治りかけの喉がまだ痛む。
試験記録 柳 一葉 @YanagiKazuha
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