たもつくん 第八話
「あれ?あげはさんと彰さん?」
「たもつ君、お疲れ様です」
たもつ君は現状を理解しようと周りを見渡している。
「ここはドトール?僕はドトールで寝ちゃってたのかな」
「うん、少し疲れていたみたいよ」
あげはさんが優しく声をかける。
「ねぇ、たもつ君、どうして2×9=12なの?」
僕は思い切って疑問に思っていたことを聞いてみる。
「えっ、僕とお父さんとお母さんが両手に一つずつリンゴを持つからさ。「2×9=18-6=12」だよ。この話をしたとき、お父さんとお母さんがすごく喜んでくれたんだ。私たちにもリンゴをくれるのねって」
僕とあげはさんは顔を見合わせた。あげはさんはほっとした表情をしていた。僕もおそらくほっとした表情をしていただろう。
「そういうことなのね」「一つ謎が解けたよ」
「うん、新しい宇宙でもさ。きっと2×9=12だよ。僕と彰さんとあげはさんが両手にリンゴを一つずつ、ね?」
あげはさんと僕は声をあげて笑った。たもつ君も嬉しそうな表情を浮かべている。
「私たちにもリンゴをくれるのね。よかった、本当に…」
「ねぇ、たもつ君。また、宇宙の話をしてくれるかな?」
「うん。今日はなんだか疲れちゃったからまた明日ね。明日、宇宙の話をするよ」
しばらく僕たちはのんびりとお茶をすすり心地のいい疲労感を味わっていた。
「そろそろ行こうか」
そういうことになり、それぞれの家路についた。
〒
「今日は大変な一日だったよ」
「
「うん。僕はだめだったんだけど、あげはさんが人鬼を説得したんだ」
「ほう、うまくいったか。よかったの。たもつとやらも無事だったか?」
「うん」
「それはよかった」
「ワタリ、人鬼はさ、ただの概念だったんだね。彼は最後に僕たちにお礼を言って去っていったよ。現世のことを教えてくれてありがとうって。なんというか、僕はその態度に好感を持ってしまってさ」
「人外のものも様々じゃからな。悪い体験じゃなかったじゃろう?」
「うん。人とかそういう見た目の話じゃなくて。改めてさ、お互いに分かり合おうとすることが大切だと実感したよ」
「いいことじゃ。わしも人外じゃしな」
「そうだったね、忘れてた」
ワタリは嬉しそうな表情を浮かべ外の景色を眺めている。僕もつられて外の景色を眺める。地上では人々が灯す明かりが優しく輝いている。
「ワタリ、ありがとう。君のおかげで解決することが出来たよ」
「いや、彰たちが行動した結果じゃ。わしはなにもしとらんよ」
それからしばらくして
「そろそろ行く」
ワタリはそういうといつものように闇の中に消えていった。
「本当にありがとう」
僕は心の中で改めてワタリに礼を言った。
窓から入る風が冷たく冬の到来を予感させていた_
ワタリと僕 ぼうし @ookamitokarasu
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