2
───“河野から聞いた。送るから終わったら連絡して”
“終わりました。すみません”
───“了解”
「(はああ、やってしまった⋯⋯)」
何でこう、学習しないのか。
自分の限界が他のひとより低いこと、きちんと生活しないとすぐ身体に出ることも、わかっているのに。
「(せんぱいみたいに、なりたいのに⋯⋯)」
追いつきたくて頑張ってるのに、迷惑をかけて、どんどん追いつけなくなる。
「(せんぱい、おこってるかなあ、おこってるだろうなあ⋯⋯)」
そりゃあそうだ。
身体が弱くて、無理をするなと約束した後輩が、無理をして案の定身体を壊し、業務の合間に家まで送り届けなければならないのだから。
エントランスのソファに腰掛けて、目をつぶる。
「(さむいなあ⋯⋯)」
もし電車で帰ることになってたら、家までもっただろうか。
途中の道端でぶっ倒れていた可能性もある。
河野さんもそれをわかっていて、せんぱいに連絡したのだろう。
迷惑をかけてごめんなさいという気持ちと、ありがとうございますという気持ちがごちゃ混ぜになっている。
───「お待たせ。大丈夫?じゃないよな」
しばらくして聞こえてきた声は、いつも通りやさしかった。
「あ、せ、んぱい⋯⋯、あ、りがとう、ございます、すみません⋯⋯」
「ぜんぜん大丈夫だから、泣かないで。大丈夫だよ」
弱っている身体にせんぱいはだめだ。涙が止まらない。
せんぱいが目線を合わせるようにしゃがみこんで、頭を撫でてくれる。
その手の温かさに、ますますあふれてくる。
「ふ、号泣じゃん。弱ってんなー」
「うー⋯⋯め、いわく、っかけて、ごめんなさ、い、っ」
「大丈夫。とりあえずはやく帰ろ。車までいける?」
こくりと頷いて、ゆっくり立ち上がる。
せんぱいが荷物を持ってくれて、身体を支えながら歩いてくれた。
「後ろ座る?寝転んだ方が楽でしょ」
「あ、りがと、ございます」
せんぱいが後部座席のドアを開けてくれる。
ゆっくりと乗り込み、お言葉に甘えてそのままごろんと寝転がった。
せんぱいの心地良い運転に微睡む。
アンノンの曲がかすかに聞こえてきて、頭の中で歌う。
そのまま浅い眠りに落ちていたようで、気づいたときには家に着いていた。
「着いたよ。上がれそう?」
「ん、はい⋯⋯あ、ありがとう、ございました」
「荷物もつから一緒に上がるよ」
「あ、りがと、ございます」
車をアパートのそばに停めて、せんぱいが荷物を持ってくれる。
ゆっくりと後部座席から降りたわたしに、掴まりな、とせんぱいが腕を差し出してくれるので、ありがたくそっと巻きついた。
「あ、かぎ、かばんの、」
「ん、出せそう?」
「あ、りました」
オートロックを開ける。
いつもはポストも覗くけれど、そんな力は残っていないので階段へ直行。
「平気?ゆっくりでいいからな」
「ん、はい、」
一段ずつゆっくりと上る。
すぐに息が切れてきたけれど、せんぱいが横で頑張れ、あとちょっと、と応援してくれるので、何とか上りきれた。
部屋の鍵を開けると、せんぱいが扉を大きく開いてくれる。
「ごめんな、お邪魔します」
「すみません、きたない、です」
誰かの訪問なんて想定外だったから、パジャマの残骸が床に落ちており、テーブルにもマグカップが置きっぱなしになっている。
「荷物この辺でいい?」
こくりと頷き、きがえてきます、とパジャマの残骸を拾い、洗面所に向かう。
いま着てる服を脱ぎ捨てパジャマに着替え、髪を解いてリビングに戻った。
「ゼリーとかポカリとかある?冷えピタとか」
「あ、なにも、ない、かも」
「了解、買ってくるわ。鍵借りてもいい?」
「あ、はい、ぜんぜん」
「じゃ、寝ときなね」
「ありがと、ございます」
「ん、おやすみ」
くしゃっと頭を撫でられる。
そのままリビングから出ていくせんぱいを見送って、寝室に向かった。
ふと意識が戻ってくる。
「(ん、あれ、ねてた⋯⋯)」
おでこに貼られた冷えピタはまだ冷たい。
「ん⋯⋯」
いま何時だろう、ときょろきょろしていると、せんぱいがドアからひょこっと顔を出した。
「あ、起きた?買ってきたもの冷蔵庫に入れといたから、食べれそうだったら食べて」
「あ、りがと、ございます」
「心配だから、仕事終わったら様子見に来る」
「すみ、ません⋯⋯」
「いっぱい寝なよ。じゃ、いってきます」
「がんば、て、くだ、さい」
「ん、ありがと」
手を振ってくれたので振り返す。
ドアが閉まる音が聞こえて、それが何だかさびしい。
誤魔化すように目を閉じると、いつの間にか眠りに落ちていた。
次に目が覚めたとき、外はもう薄暗かった。
んー、と大きな伸びをしてから起き上がる。
「(あ、だいぶまし⋯⋯)」
ぐっすりと眠ったからか、身体はずいぶん軽くなっている。
ゆっくりとベッドから降りて、外れかけている冷えピタを剥がす。
リビングの時計は18時を指していた。
「(おなか、すいた⋯⋯)」
冷蔵庫を開けると、たくさんのゼリーやプリン、ポカリ、冷えピタが入っていた。
「(すごい、いっぱいだ⋯⋯)」
とりあえずポカリを一口飲み、いろんな果物が入ったゼリーと冷えピタを1枚取り出した。
「ん、おいし⋯⋯」
冷えピタを貼って、ダイニングテーブルでゼリーを頬張る。
そういえばスマホ、と途中で思い出し、カバンから取り出すと、少し前にせんぱいから連絡が来ていた。
───“起きてるかな?いまから寄ります”
“いま起きました。ゼリー、ありがとうございます。お気をつけて”
何だかそわそわしてしまう気持ちを抑えながら、気持ち程度前髪を触って整えた。
ゼリーを食べ終わってポカリを飲んでいると、ガチャっと鍵が開く音がした。
「お邪魔します」
「おつかれさまです」
「おー、おはよう。体調どう?」
「おかげさまで良くなりました。ありがとうございます」
「よかった。お粥とか食べれそう?」
「え!たべたい、です⋯⋯」
「キッチン借りていいならつくるよ」
「いいんですか⋯⋯!」
帰りにスーパーに寄ってきたのだろう、片手にビニール袋を下げている。
ここでいい?と、わたしの家の鍵をダイニングテーブルに置き、せんぱいはキッチンに向かった。
「じゃ、お借りします」
「おねがいします!」
「ゆっくりしときなよ」
「見てます」
「ふ。元気そうでよかった」
せんぱいがわたしの家のキッチンにいる。
この光景を脳裏に焼き付けたくて、思わずじっと見つめていると、せんぱいがときどき目を合わせてくれるので、その度にときめいた。
「おまたせ」
「わー!ありがとうございます、おいしそう⋯⋯」
できたてのたまごがゆ。ほかほかの湯気とやさしい匂いで食欲がそそられる。
いただきますをして、ふーふーと冷ましてから一口食べると、とってもやさしい味がした。
「んん!おいひい⋯⋯!」
「よかった。おれもたべよ」
せんぱいは同じたまごがゆと、スーパーのお惣菜を食べるみたい。
「せんぱいもおかゆでよかったんですか?」
「ん、こんなときしか食べないし。焼き鳥とか買ってきたから余裕」
やさしいなあ⋯⋯。
熱くても平気なのか、どんどん食べ進めていくせんぱいを見ながら、胸がじーんとする。
「おしごと、どうですか?」
「今年めっちゃ忙しかったよな。そろそろ落ち着きそう」
「忙しかったですねえ⋯⋯」
「でも青葉のおかげで頑張れたわ」
「わ、わたしも、せんぱいのおかげで頑張れました⋯⋯!」
わたし、本当にせんぱいの頑張る理由になれていたのか。うれしい。
「でも青葉、“無理せず”って言ったのに無理した」
「う⋯⋯、ご、めんなさい。だ、だって⋯⋯っ!」
「ふ、怒ってない怒ってない。ただ、身体壊すまで頑張らなくていいんだよってこと」
「⋯⋯っ」
せんぱいがスプーンを置いて、真剣に話し出した。
「青葉は“頑張ってる”つもりだったんだろうけど、どっかで“無理する”になってた。頑張ると無理するはちがうんだよ。自分の限界を超えてまで頑張ると、それは無理してることになるから」
やさしい顔で語りかけてくれる。
「限界はひとによってちがうんだから、誰かと比べる必要はまったくない。自分の限界まで頑張れたんだから、青葉は頑張った。で、自分の限界を超えようと無理をして身体を壊した。きょう、ネガティブなこといっぱい考えたと思うけど、それぜんぶ捨てていいから。頑張ったな」
せんぱいのやさしい言葉とお粥のやさしい味が涙腺をいっぺんに刺激する。
涙とともにリミッターが外れ、気持ちがあふれてくる。
「う⋯⋯っ、せ、せんぱ、い、みたいにっ、なり、たい、って⋯⋯っ」
「ん?」
「せん、ぱいの、っと、なりに、いても、恥ずかしくない、わたしに、っ、なり、たくて⋯⋯」
「⋯⋯」
ひくっ、と嗚咽が漏れると、せんぱいが隣にきて背中をさすってくれた。
深呼吸をして、少し落ち着く。
「ストーカーのことで、せんぱいに助けてもらって、わたし、す、すきに、なって、しまって、っ。だから、いつか、うそなんかじゃなくって、本当に、せんぱいの、本物の彼女に、なりたくて、おいつきたくて⋯⋯」
「ちょ、ストップストップ」
必死でしゃべっているとせんぱいから止められる。
変なことを言ったかもしれないけれど、すでに何を言ったかあまり覚えてない。
放心状態でせんぱいを見ると、若干頬がピンクに染まっている。
「⋯⋯青葉、おれのこと、すきなの?」
「⋯⋯!」
「⋯⋯まじか」
問われた瞬間沸騰したように顔に熱が集まった感覚がしたので、せんぱいそれで察したのだろう。
そのまま下を向いて髪をぐしゃぐしゃにしているので、困ってるよね、と一気に熱が冷める。
「あ、ご、ごめんなさい、困ります、よね⋯⋯」
「⋯⋯何で?」
「だ、だって、ただの後輩を、きにかけていた、だけ、なのに⋯⋯」
「⋯⋯そんなわけない」
いつになく強い口調になったせんぱいが、顔を上げて言う。
「おれ、ただの後輩のことをここまで気にかけるほど暇じゃないよ」
「⋯⋯っ」
「たしかに最初は、大学からの知り合いが危険な目に遭ってるのに見過ごすわけにはいかないって気持ちだったけど。ご飯誘ったのはほとんど下心だし、家に招いたのもすきだからだよ」
「⋯⋯!」
「てかそもそも、大学の頃からふつうにかわいいなって思ってたし」
「えっ!それは、うそ⋯⋯!」
「何でだよ」
なんてこった。
まさか、せんぱいも、すきでいてくれたなんて。
この恋が、こんなにもすぐに実を結ぶなんて、思ってもいなかった。
ふう、とひとつ息を吐いたせんぱいが、真剣な表情で言う。
「⋯⋯これからは、本物の彼氏に、なりたい」
「⋯⋯っ、わ、わたしも、本物の、彼女に、なりたい、です」
「⋯⋯ん」
せんぱいが照れたように視線を逸らす。
また戻ってきて、少し躊躇してから、ぎゅっと抱きしめてくれた。
むずむずした空気が漂う中、残っていたおかゆを平らげる。
わたしの家に食洗機はないので、せんぱいが皿洗いまでしてくれた。
「あの、ありがとうございました」
「んーん」
髪をくしゃくしゃと撫でられる。
⋯⋯せんぱい、頭撫でるのすきなのかな。
よく撫でられている気がする。
ぼーっとせんぱいを見つめていると、だんだん顔が緩んできて甘くなる。
「かわいーな」
「へっ」
「あしたも無理はするなよ」
「⋯⋯はい」
「ん、じゃあ、帰るな。身体冷やさんように」
「ありがとうございました」
せんぱいを見送りに玄関へ向かう。
「あれ、そういえば、車は⋯⋯?」
「近くのパーキングに停めてるよ」
「あ、じゃあ、駐車代⋯⋯」
「え、いらんいらん」
財布を取りにリビングへ戻ろうとすると、腕を引っ張られ引き戻される。
「代わりに」
そういって引き寄せられる。
背の高いせんぱいに包み込まれるようにハグをされ、安心する匂いをめいっぱい吸い込む。
「⋯⋯じゃあな」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ」
名残惜しくなりながらばいばいと手を振って、帰っていくせんぱいを見送った。
シャワーを浴びながら、きょうのことを振り返る。
「(せんぱいが、彼氏⋯⋯)」
夢みたいだ。
ずっと憧れだった、遠くにいたひとが、いちばん近くにいるひとになった。
せんぱいのせいで熱が上がりそうだ。
恋人としての距離感はまだ掴めない。
胸を張って隣に立つことも、しばらくは難しいかもしれない。
けれど、自分の限界まで頑張るわたしのことを、せんぱいは必ず見てくれていて、褒めてくれる。
いつまでも先を走るせんぱいの背中を追いかけ続けられるのも、幸せなことなのかもしれない。
お風呂から上がると、河野さんから連絡が来ていた。
───“おつかれさま。体調どう?仕事、何とか回りそうだから、あしたも家でゆっくり休んでね。また来週からばりばり働いてもらうので、よろしく”
あしたは金曜日だから、通常業務も多いはず。
“何とか回る”というのは本当にぎりぎりなのだろう。
それなのに、こうした連絡をくれる河野さんには頭が上がらない。
“おつかれさまです。だいぶ良くなりました。ありがとうございます、ではお言葉に甘えてお休みさせていただきます。来週からは馬車馬のごとく働くので、よろしくお願いします”
新人のときから、河野さんには何度も助けていただいている。
来週、ランチをご馳走しよう。
少し躊躇しながらも朝のアラームを解除し、ベッドに入った。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
───それから。
夏を越え、秋が過ぎ、凍える寒さが襲う12月。
せんぱいとのお付き合いは、順調に続いている。
アンノンのライブは無事当選し、8月にせんぱいと参戦した。
ノリノリで楽しんでいるせんぱいの姿はいまでも覚えている。
普段は、金曜日に一緒にごはんを食べて、そのまませんぱいのお家に泊まるのがルーティン。
せんぱいのお家にわたしの私物がどんどん増えていくのがうれしかったりする。
たまーに、河野さんも交えて、お昼ごはんを一緒に食べることもある。
社内には、彼氏(仮)のときに知られてから時間も経っているので、周りの視線が気になることもなくなった。
そしてきょうは、待ちに待った金曜日。
更になんと、あした12月15日は、わたしの25歳の誕生日でもあるのです!
いつも通りエントランスで待ち合わせをして、駐車場に向かう。
「あした外で食べるから、きょうは家でいい?」
「もちろんです!」
あしたは、せんぱいが前々から予約してくれていたディナーに行く予定。
レストランは一緒に選んだ。
ローストビーフが美味しそうで、夜景を眺めながら食事ができるとってもおしゃれな場所。
そんな高級なところに行くのは初めてだから緊張するけど、とても楽しみだ。
「お邪魔します」
「おかえり」
「ふふ、ただいまです」
いつもせんぱいは、おかえり、と声をかけてくれる。
最初はなかなか慣れなかったけれど、しばらく経つと自然に、ただいま、と言えるようになった。
玄関の棚には、ライブに行った日からアンノンのラババンが飾られている。
お家の雰囲気にはあまり合っていないけれど、見る度ににこにこしてしまう。
せんぱいの家にわたしの欠片が残されていくのがうれしい。
きょうはわたしリクエストの、だいすきな生姜焼きをつくってくれるみたい。
お手伝いを買って出たけれど、バースデーガールは休んでて、と断られた。
テレビを観ながらだらだらしていると、いい匂いが漂ってきたので、素早くご飯をよそいにいく。
「せんぱい、どのくらい食べますか?」
「んー、さなのお任せ盛りで」
「了解しました!」
お付き合いを始めてから、せんぱいは自然に“さな”と呼ぶようになった。
あまりに自然すぎて赤面する暇もなかった。
しかし、わたしは相変わらず“せんぱい”呼びである。
練習してるんだけど、恥ずかしさと緊張でなかなか呼べそうにない。
ご飯をよそい、生姜焼きとともにテーブルに並べる。
缶ビールで乾杯し、いただきますをした。
せんぱいお手製の生姜焼きは本当においしかった。
あっという間になくなってしまってしょんぼりしていると、せんぱいがデザートを持ってきてくれた。
「わー!ティラミスだ!」
「ん、さながすきって聞いて買っといた」
「うれしい!ありがとうございます」
こんな調子でたくさん甘やかされている。
思わずせんぱいに抱きつくと、ぽんぽんと頭を撫でてくれた。
「ん!すごい本格的だ!おいしい〜!」
「よかった。一口ちょうだい」
せんぱいがあ、と口を開くのでティラミスをあーんする。
「ん、うまいな。甘すぎなくて」
「ですよね!」
コーヒーの苦味とチーズのクリーミーさがマッチしてとてもおいしい。
これもあっという間に食べ終わってしまったので、ごちそうさまをして、皿洗いを食洗機にお任せした。
順番にお風呂に入り、歯磨きをする。
大きなベッドにふたりで寝転がり、毛布をかぶってプロジェクターで動画を見ていると、日付が変わり、誕生日を迎えた。
「さな、誕生日おめでとう」
「えへへ、ありがとうございます!」
「ちょっと待ってて」
そう言ってせんぱいがベッドから降り、クローゼットから紙袋を持ってくる。
「はい」
「え〜!ありがとうございます、うれしい!」
わたしも起き上がって、紙袋を受け取った。
「開けていいですか?」
「ん」
高級ブランドらしい丁寧な包装。
ひとつずつ解いていくと、中からは真っ白なマフラーが出てきた。
「ええっ、かわいい⋯⋯!ふわっふわだ〜」
「さなは白が似合うから」
「ありがとうございます!うれしい〜!」
思わずマフラーをぎゅっと抱きしめる。
少し照れているせんぱいが愛おしい。
「うれしい、毎日つけます」
「ん」
「ありがとうございます」
マフラーごとせんぱいに抱きつく。
温かい体温とやさしい匂いに安心する。
しばらく堪能してから離れ、どちらからともなく顔を近づける。
だんだんと深くなっていくキス。
息が上がってきて、せんぱいのスウェットをきゅっと掴むと、そのままゆっくり押し倒される。
「⋯⋯っ、ん⋯⋯」
ようやく唇が離れると、おでこをこつんとぶつけ合う。
「⋯⋯すきだよ」
「ん、わたしも、だいすき⋯⋯」
せんぱいの首に腕を回すと、またキスが始まる。
そのままふたり、濃密な夜に溶けていった。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
この恋は、ロマンスなんて素敵なものには、
なり得ないと思っていた。
願わくば、これから先もずっと、
せんぱいの隣で、
───このロマンスに、心酔していたい。
ロマンスに心酔
Fin.
♡.*・゚
ここまでお読みくださったすべての方に、感謝を込めて。
結城すみれ
ロマンスに心酔【完】 結城すみれ @yuuki_sumire
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます