第2話 「奇術の証明」お題・ぱちぱち

 さあさ皆様、ごらんあれ。

 このシルクハットの中から、はとを出してご覧にいれましょう。

 見事成功しましたら、拍手はくしゅを。

 では。おいでませ、鳩よ!


 奇術師きじゅつしの掛け声と共に、ばさあっという音がして、シルクハットの中から鳩が飛び出た!

 見物客たちからは、わあっという歓声かんせいと共に、ぱちぱちという拍手はくしゅが起こる。


 しかし中にはひねくれた客もいるのか、どうせ仕掛けがあるんだよ、という声がそこかしこで出ていた。

 だがそれを聞いた奇術師はあわてることもなく、悠然ゆうぜんと言い放った。


 おや。これではまだ、私の術が本物と証明出来ませんか。

 よろしい。それでは今度こそ、皆様が驚愕きょうがくするような術をご覧に入れましょう。


 ──ワン、ツー、スリー!


 奇術師がそう唱えると同時に、彼の姿がかき消えた‼

 客たちは驚き、そのすぐあと、消えた奇術師に対し、割れんばかりの拍手がき上がる。

 これなら、さっきケチをつけた客も納得しただろうと思い、彼らがいた場所を見やる観客たち。

 だがそこには、文句を言った観客はいなかった。


 まるで奇術によって、き消されてしまったかのように。

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