感想と批評について考えるなかで

月詠 透音(つくよみとおね)

感想と批評について考えるなかで

 *この投稿は近況ノートに書いた文章のコピーです


 私は以前、自分の創作能力を高める為に他の作家さんのファンタジー小説の感想を書くという感想企画をやっておりました。


 しかし、これは感想企画と言っていながら「やっている内容は感想ではないな」といつも思っておりました。

 感想というのは「物語についての感想」ですから。



 物語の表現である作品を読む際に

 意識的にせよ、無意識的にせよ私が見ていたのは

 ・(作品から読み取れる)作家さんの生い立ちから、なぜその物語を書こうと思ったのか?

 であり、

 次に

 ・どれくらい正確に、ご本人が書きたいものを書き表せているか?

 という点です。

 

*商業作品としてどのくらい通用するか?の視点では見ていません(そもそも商業作品に求められるものを詳しく知らないので)

*作家さんの生い立ちなどは、文章のまとまり方や雰囲気、エピソードの用い方や用いる角度、無限に選べる文章のなかから何故その文章を選んだのか、作品に登場する道具、キャラクターの示す態度、などからまずは勘で読み取っています。



 さらに、その中でいつも考えていたのは「この作家さんは、作品のどこを見て欲しいのか?(つまり作品設計の段階で力を入れている点) どこを褒めたらやる気を出して次の創作へ向かってもらえるだろうか?」という点でした。


 かなりの精度で私の読みは当たっていたようで「エスパーですか?」「(良い意味で)気味が悪いです」との感想をよくいただきました。


 この読みというのは、上記のように勘にちかいんですけど、説明しろと言われたら推理の過程をすべて文章化して説明できます。無意識の領域から様々な思考を拾って組み上げる作業なので膨大な時間がかかりますけど。





 で、当然ですけど

 作品の中で上手く表現できていない点も見えてきますが、あえてそこには触れませんでした。

 作品の描写の用い方や、描写から感じる(作者自身の)世界との接し方から推測して

 ・この人はいずれこの問題を自分で解決できる

 ・人に指摘されれば解決できる

 ・いずれにせよ現状のままでは解決できない

 といった点が見えてきます。


 私に依頼されたほとんどの方は、最後者ではありませんでした。

 また、私に依頼されてこられる地点で他者の指摘を受け入れる最低限度の度量はお持ちであると判断し

 そのような点の指摘は一切行いませんでした。



 また批評される方のなかには、なぜかわかりませんが「人が素直に受け入れるには苦しいであろう」悪辣・辛辣な表現をする人がいます。

 普通の表現で

『ここが改善できる点だと思うから、こうしたほうが良いと思いますよ』

 と言えないのだろうか?といつも思います。


 創作者って、そうとうに根性ねじ曲がってないと出来ないんですが『教育者』『指導者』であろうとするなら、ねじ曲がりは不要です。

 ……私自身は、ねじ曲がりの度合いが低い方なので創作者には向いていないのかもしれません。実際、上手い小説は書けません。

 


 アドバイスの目的は、人に受け入れてもらって成長してもらう事だとおもうのですが、辛口評価をする自分に酔ってるだけで本来の目的を放棄しているのでは?と感じます。

*批評ってアドバイスを含むものではなく単なる評価なのかもしれませんが、普通に考えてアドバイスを含むものだと感じます。


 一般社会ではこういった行為は上司(先生)が部下(生徒)に行うとパワハラと言われ嫌悪される時代になってきています。

 作家とは、人や時代が求めるものを提供するのが存在意義ならば、時代に逆行するようなパワハラを提供するのは存在意義に反する行動です。また、自身の首を絞める行為だと思います。

 直木賞選考委員の方の批評を本で見ましたが、厳しい指摘はされていますが、それなりにフォローを入れたりして文面を綺麗にしていらっしゃいます。



 変な方向に話が行きましたが

 感想は、物語として読んだ際に発生した感情の表記

 批評は、(物語ではなく)作品の設計者に対する敬意の表明と、設計図と設計図から創造された作品に対する評価である

 と考えています。



 (追記)

 そもそも批評してる人って何が目的なのだろう。私は自分の創作活動の役に立てようと思ったのですが、あまり役に立たないと判断しています。

 そのため感想企画は終了させました。


 本気で作家さんを応援したいなら付きっ切りで文章をみるなどして、面倒見たほうが良いと思います。

 仕事として責任もって料金もらって批評やるならわかるけど、無料で行うのは気力・体力の消耗が激しすぎるので行う意味はないと思います。


 気力体力が消耗しない批評なら、それは遊びでしょう。

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