第2話 鬼面の少女
おっさんと目が合った瞬間、俺は「やらかした」と思っていた。
恐らくこのおっさんはボロ屋敷の持ち主。
『なぜ空から降って来たのか?』という疑問は残っていたが、あまりの出来事にパニックに陥った俺は取り敢えず不法侵入の件を謝らなければと謝罪から入った。
「す、すみません。早く家に帰らなきゃと思ってここ通ってただけで…不審者とかじゃないんで通報だけは勘弁して貰えませんか?」
傷だらけのおっさんは、俺の謝罪兼言い訳を聞いてぽかーんと口を開けていた。
それもそのはず、俺自身もいきなり何を言ってるんだと後悔している。
急に空から降って来たおっさんと、急に謝罪と言い訳を喋り出す高校生。
どちらもお互いの状況を把握できず、時間にして約10秒、完全にフリーズしていた。
そして、先に静寂を破ったのはおっさんの方だった。
「——ッ!!危ないっ!!」
おっさんは人の動きか?と疑いたくなる身体能力で俺の方へ向かって来ると、抵抗する暇もなく抱き抱えられてしまった。
——え?なに?誘拐?
いきなり体を抱えられて身の危険を感じた俺は、おっさんの腕を振り解こうとしたが、次の瞬間、もの凄い衝突音と共に何かが地面に降りて来た。
そこはさっきまで俺がいた場所だ。
「全く…彼は通りすがりの一般人だよ。申し訳ないんだけど、見逃してやっちゃあくれないかな?」
「馬鹿を言うな。儂の視界に入ったんだ。一部の例外なく殺す。お前も視界を横切るハエを鬱陶しいと思った事があるだろう?それと同じことだ。」
「やれやれ。まあ、君ならそう言うと思ってたけど…」
土煙が晴れ、落ちて来た何者かの姿が見える……が、俺はその姿を見て驚嘆した。
何故なら、声質は完全に男のそれだったのに、土煙の向こうから現れたのは黒い鬼の仮面を被ったセーラー服の女の子だったから。
「それじゃあまあ、僕もぼちぼち本気でやるとしますか」
「クハハハ、いいぞ。もっと儂を楽しませろ!!」
おっさんは俺に「そこから動かないでね」とだけ言い残すと鬼面の女子と戦い始めた。
「お菊ノ
おっさんが呟くと辺りは更に薄暗くなり、背後に白装束の綺麗な女性が現れる。
『1枚……2枚……』と女性が数える度におっさんと鬼面の間には巨大な回転する皿が出現する。
こんな時代だ。
能力者同士の戦いも見たことはあるし、何より妹に与えたい能力を見つける為に、この科学特区で売られている能力一覧には全て目を通していた。
だからこれだけは断言できる。
今、このおっさんが使っている力は超能力ではない。
——もう、何が何だか訳わかんねえよ。
空から降って来た謎の力を操るおっさん
そのおっさんと戦う鬼の仮面を被った男声の女の子
2人の戦いは俺が何一つ状況を理解出来ないままに、激しさを増していった。
科学特区の鬼面童子 雨降って地固まる @sou1234
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