第2話 腑に落ちない日常

翼は個人経営の小さい学習塾でアルバイトをしていた。自宅の、本来ならリビングとして使うであろうスペースを塾として使っている、小さい学習塾だ。


そこでの業務が好きではなかった。いや、キッパリ言ってしまえば嫌いだった。サークルの先輩から紹介してもらった職場だったため、すぐに辞めるわけにも(もちろんブッチする勇気もない)いかず、ただ時給は高かったためダラダラ続けていた。


元々、子供の頃から教師を志していた翼。周りがサークル、飲み会、アルバイト、恋人とのデート…に明け暮れている中、教職課程を必死に受講していた。何度、生まれ変わってまた大学生になったら「教職課程なんて取らず、たくさん女の子と遊んで、SEXに明け暮れるんだ!」と思ったことか。


大学3年生、4年生と学年が上がっていくなか、就活ムードが蔓延して来た。友人の見慣れないスーツ姿に言葉では表せない焦燥感を抱いたこともある。


(え、ちょっと前まで女の子お持ち帰りしたわ!とか言ってたお前が就活?やっていけんのかよ。)


1年生の頃から他の人の約1.5倍の授業を取り、大変だが、このルートを完走してしまえば、教員免許を取って晴れて子供の頃からの夢だった教師になる。お前らは妥協して、妥協して、結局はやりたくもない仕事に就くんだろ?そんな風に見下していた翼だった。


しかし、周りから見下される未来が待っていたのは僕、翼の方であった。

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青春は午前中だけ @ogasawara19

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