青春は午前中だけ

@ogasawara19

第1話 運命的でない出会い

「今回は翼さんと2人がいいです!」


それが彼女からの誘いだった。有頂天になったのは想像に難くない。

1年近く前から(かわいいな…)と思っていた人からそう言われたのだ。有頂天になるな、というのは酷だろう。


(これ…デートって捉えていいやつだよな?)



僕は“運命的”という言葉に弱いし、憧れている。


でも、彼女との出会いは運命的というには大袈裟過ぎる程のものだった。あの出会いを運命的という人がいれば、あまりにも感受性が豊か過ぎるだろう。


出会いは、夕方のかろうじて窓からの光が届いてる薄暗い玄関だった。ショートボブというのだろうか。僕好みの長さの髪が、綺麗なピンク色に染まっていた。おそらく歳上だろうが、歳下と言われても信じてしまう可愛らしい見た目だった。頭の中で簡単な計算をして、流石に歳上だろうと予想を立てた。


「初めまして!翼です。よろしくお願いします!」


出来るだけ愛想よく挨拶をした。彼女は微笑んで会釈をしてくれた。僕の悪い癖だ。可愛い!と思った相手にすぐに気に入られようとしてしまう。理性というブレーキが故障している。ナンパなんてしたことないし、しようと思ったこともない。そんな勇気がない。でも、ここは僕のテリトリーだ。ちょっとくらい出しゃばってもいいだろう。


数十秒だろうか、立ち話をして、お別れした。また来週も会えるかな…。あまり好きじゃない職場だったが、それを楽しみに仕事を頑張れるくらいには、僕は昔から単純だ。

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