四発目『宇宙の果てまでイッテぷぅ【第三部】マルコ・ヘッポの最後っ屁』

——暗黒の宇宙空間。


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 マルコは、最後の力を振り絞った!


「四発目…………………………………………クワトロ!」


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 ついに……


 マルコの進む向きは、地球側へと転じた。


「待っていろ! 愛しの妻オナーラよ!」



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 マルコ・ヘッポはついに、独力で宇宙ステーションへ帰還してのけた。彼は勤務先の企業スプゥトニク・ヘコキ社から、宇宙の恐怖に打ち勝った勇敢な宇宙飛行士として表彰され、『最高の旅仲間ルチシィ・スプゥトニク』勲章を得た。さらに、副賞として破格の宇宙作業員年金が保証された。


 そして直後、同社の特別な計らいにより、報酬はそのままにして五年の契約期間が即時満了となったマルコは、三年ぶりに地球にある自宅へと戻り、妻との念願の再会を果たした。


「オナーラ! 会いたかったぞ! お前のいない宇宙は……寂しかった」

 マルコは、妻オナーラを抱きしめる。

「ああ、愛しいマルコ。また会えて……よかったわ」

 オナーラも、それに応じる。

「ああ。一時はどうなるかと思ったよ。でも、自己救命用推進装置セイファーのおかげで、助かった」

「窒素ガスの残量はゼロだったって聞いたわ。本当に、ギリギリの戦いだったのね」

「ああ。でもそれには、ちょっとしたカラクリがあるんだ」

「カラクリって?」

「実は、ガスが底を突いたとき、まだ僕の体は地球とは真逆の方向に飛んでいた」

「なんですって? 宇宙って無重力よね? それじゃあ絶対に帰って来れないはずじゃなくって?」

「それが違ったんだ。あと、意地悪く少し訂正させてもらうと、宇宙空間は無重力ではなく、だ」

、そうなの。で、どんな方法を使ったの?」

「『おなら』だ。四発のな」

「まぁ! そうだったの。今まであなたのおならを馬鹿にしてごめんなさい。おならは、必要だったのね。『炭素10おっさん化炭素』の均衡バランスのために、そして何より…………あなたが生き延びるために!!」

 二人は再び、強く、抱きしめ合った。



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——奇跡の生還から数日後。


 マルコとオナーラの暮らす家に、報道陣が押し寄せた。


 というのも、彼は自己救命用推進装置セイファーの有用性を身をもって示した初めての人類として、世間から窒素ガス王子ニトロ・プリンスと呼ばれ、一躍有名人となっていたのである。


 玄関先で、報道陣がマルコを質問攻めにする。


「改めて、奇跡の生還を果たしたご感想を!」

「そうだなぁ。生きる喜びを、噛み締める毎日です」

 『死』を覚悟して初めて、『生』を感じるのだろうか。


自己救命用推進装置セイファーの素晴らしさを、一言で!」

「あれは、最高の旅仲間ルチシィ・スプゥトニクです」

 案件狙いなのか、宣伝もしっかり行う。


「世間がヘッポさんを窒素ガス王子ニトロ・プリンスと呼ぶことについて、どう思いますか?」

「うーん、『窒素ガスニトロ』はまだしも、『王子プリンス』はちょっとやりすぎです。僕、おっさんなんでね」

「そうですか。なら、どんなふうに呼ばれたいですか?」

「そうですねぇ、実は……」


 マルコは、窒素ガスが尽きたあとのことを、報道陣に事細ことこまかに伝えた。


「そういうわけで僕は、文明の利器である自己救命用推進装置セイファーと、生命の神秘、おなら、この両方に助けられたってわけです」

 マルコは、真剣な眼差しで、そう言った。


「なるほど。では、再度お尋ねしますが、マルコ・ヘッポさん、あなたはどんなに呼ばれたいですか?」


 マルコは、目を閉じ、ニヤッと笑う。


 そして、こう言いった。


放出王キング・オブ・ブゥストとか、どうでしょう? 僕、こういうアホ語感が、大好きなんです」



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——数年後。


 全ての宇宙ステーションが完成し、億万もの男性作業員たちが、地球に戻っていた。そういうわけで、地球内の人類の男女比は、およそ一三〇対一〇〇と、かなりの男性過多になっていた。マルコ・ヘッポも例に漏れず地球に帰還しており、決死の帰還で得た宇宙作業員年金を使って豪邸を建て、妻のオナーラと穏やかな生活を送っていた。


「やっぱり、にんにくは最高だなぁ。元気が出る出る!」

 マルコは、好物のにんにくボイル焼きをバクバク食べている。

「そうね。でもって、おならも出るわね…………ってあれ? ねぇ、あなた……」

 オナーラは、不思議そうな顔でマルコを見つめる。

「ん、なんだい?」


 オナーラは夫に、こう問うた。


「おならの回数、減った?」



〈第三部完ッケツ!〉

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おっさん化炭素 加賀倉 創作【コールドスリープ中】 @sousakukagakura

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