かないたちのよる
イタチ
jh
「シュプール」
突然夫が、旅行に行こうなんて突拍子もない事を言い始めた
いつも仕事の三段重ね三段論法で
家族の顔さえ覚えていないのであろうあも人にしては珍しい事だ
私はすぐに娘に言うと
「っえ、あのかまいたちの
かの有名なチュンソフ党の」
そんなに有名な宿なのだろうか
夫は長野の白馬にあるペンションだと言っていたが
「ちゅんそふとう ちゅんそふとう」
娘が珍しく、着物まで出して
盆踊りをして踊っている
ゲームのことしか興味のない、この娘がこれほど動くのなんて
ゲーム以外に目にした記憶がない
つまり、じゃあ、それは、どうせ、ゲームのことであろう
私は、繰り返される日常に、きっちりとしている
それ以外の行為は、直ぐに対応できる程度に、余裕はあった
旅行の用意を直ぐに済ませ
パソコンに、ちゅんそふとうと打って居る頃に
玄関でチャイムが鳴る
夫だ、自分の家にもかかわらずいまだにチャイムを鳴らしている
もちろんカギを忘れるなんてことは今までに一度もない
それどころか・・・
私は、旅行鞄を玄関に持っていく
いつものナメクジ並みの行動力の娘は玄関に出てこっちを遅いという顔で見ていた
「はいはい」
私はかばんをもって玄関に向かう
空は、曇っており
水の匂いが辺りを包む
廊下の向こうには線を見せながら雨が落ち行った
「行くぞ」
夫の珍しい行動に、首をかしげながら三人でエレベーターに乗った
この雨も、長野では、冷たい雪に変わっていることであろう
いまだに踊っている娘の姿に胸が騒がしく危険信号を鳴らしていた
大丈夫であろうか
誰も何も見ていない
分かるのは、その宿の名前のみであった
「いやーようこそや、遠いところおいでやー」
関西弁ではない関西弁らしき言葉に、私の頭は痛くなっている
でっぷり太っている男は、ちょび髭を生やしたダンディーな男である
胡散臭い恰好とは別に、その生地は高級感を放ちあべこべさをたたえている
「いや、どうも、私、阿部桐江と、申します
今回は、お呼びいただきありがとうございます
まさか、あのシュプールが、本当に、あるなんて思い及びもありませんでしたよ」
相手の男はイエイエとわざとらしい大きな素振りで
「私こそ、これほどまでの大作を、していただき
先生のような方の助言をこれほどやっていただけるなんて
いやはやいやはや」
娘は、辺りを、見渡して、キョロキョロとこの場所を何かと重ね合わすように見ていた
「こら三貝、人様の家を」
私は、それをたしなめて、襟を、掴もうとする
「何言っているんですか、お母さま、ここが、何処だか、知って居るのですか
お母さま」
何処なのであろうか
先ほどから、何か神聖な場所のように言ってはいるが
危ない組織なのではないだろうか
ちゅんそふとうとは
「しかし、父も不思議ですね、あれも、機械関係の人間のくせに、オタクでないなんて
何で学校に行ったのでしょうか、その割に、好きそうですが」
この場所を父親が知らないことが不思議であるのだろう
「何十年前から、この場所にあるのは皆知って居る
しかし、それほど好きではなかったのであろうか」
娘が逃げ出しそうに、動いていると言うのに、父親は、
先ほどの会話を続けている
「紹介いたします、このペンションの管理人 目白氏です
これから一泊の短い時間ですが
我々のお世話をしていただきます ちなみに、私は、今回の責任者で、三藤と申しますです」
細身の男がエプロン姿で、こちらを見るが、サングラスが怪しすぎる
にこやかに挨拶をしているのだろうが、この怪しさは何だろう
チュンソフトウが駄目なのか
それとも、夫と娘は二人で、この組織に騙されようとしているとでも言うのだろうか
「こちらが、妻の美嘉子です、よろしくお願いします」
私はすぐに、彼らの前に進み出た
「いやはやこれはこれはいやはやお美しくいやはやいやはや」
私は頭を下げるが、それにしても、曖昧な言葉が嫌に多いな
「今回は、夫が、普段は騒ぐこともありませんのに、お呼びいただきありがとうございます」
私は、一言もしゃべれないような夫の姿を見る
「いえいえ、何度も言うようですが、今回、ご主人の開発したaiにより、初代かまいたち1に、近い作風を大筋だけで100 小道なら無限に近く別れるaiをゲーム内にも搭載しているなんて
何より、2のopそっくりのストーリーもあれは」
二人の間に、二階から登場する人物がいた
娘がいつの間にか遠くの方でその人物と距離を開けて
「燕尾松丸だ」と
失礼な事に指さして、その割に隠れるように言う
聞いたことがあるような気がする、確か、気難しい推理小説作家ではなかったっけ
「ああ、先生、今回は協力いただきありがとうございます」
いつの間にか関西弁のようなものが消えた男が
改めてと言いながらそう言う
「イエイエ、私は最初の一作だけですから・・あれも、殆どが、楽屋ネタ、推理小説ネタをネタにしたようなものです、その愛が受けたのでしょうね」
夫が前に向かう
「いえ、そのすべてがaiには、及びません
少し前よりは、自我は弁えていますが
それでも、及べないんです機械には」
夫がここまで、感情を出すのをはじめてみた
如何に、機械の小説を書く難しさと、先生に対する愛を、語っている
「でも、先生」
いつの間にやら横から娘が顔を出している
何しているの、私は、そんな事を、思いながら、直ぐに、彼女を引きはがそうとする
「でも、先生、私が、見た所、やっぱり、ゲームと、普通の本書だと、全然書き方が、違うじゃないですか、私、このゲームが好きで、先生の本を、直ぐにすべて買いましたが、期待外れです」
夫が、やめなさいと、怒鳴る
感情的な、表現を出すのも、また初めて見た
娘は、頭を下げるが
「いや、まあ、全てが、正しいと言う訳ではありませんよ
あれは、分かりやすいように、書きましたので、
ほら、いうではありませんか、本人の意思とは別のものの方が、分かりやすいと
あれは、私の作品では、半分ない物ですから、遊びやすかったんですよ、ゲームだけにね」
「先生、すいません」
夫が、頭を下げながら、話を、変えていく
ソファーに、並んだのは、私、娘、夫
反対側に、竹丸先生
その横に、阿部さん
目白さんは、料理を作ると言って、奥に向かう
一月の下旬、外は、先ほどまで曇り空だっただけなのに
ふと横を見ると、白い物が窓にこびりついていた
暖炉の温かさの中
先ほど運ばれたココアが、湯気を、五つ立てている
「それで、今日は、何人御泊りになっているんでしょうか」
三藤さんは、こちらを、にこやかに、見ていった
「皆さまで、全員です
あと一人、本当であれば、お越しになるはずでしたが、今日は、無理そうです」
話の内容から、察して、新しいゲーム、いや、昔流行ったゲームを、もう一度、今どきに、システムを変えて、リニューアルしたという話なのであろうと思う
しかし、問題は、そこではない、わざわざ、私たちを連れだすまでの心意気を
夫が持っているのかが、いまいち不明なのだ
「しかし、私たちも、一緒に、来てよかったんでしょうか」
急に、三藤さんが、こちらを真剣な顔で見ていた
「実は、今回のプロジェクトも、チュンソフトの会長が、お亡くなりになり、その追悼と言う事もあるんですが
一番は、遺言に、こんなことがあるんです
「かまいたちの夜4を、作ってくれ」
そんな、爆死するようなことを、いうのも、非常に、奇妙なんですよ
元々、あのノベルシリーズは、回を追うごとに、低迷を、落ちていった
かまいたちシリーズの前の弟切草
そして、かまいたち
そのすべてが、ドラマ化に関して、失敗しているというしかない
ゲームで儲けて、ドラマを、相手に任せて失敗しているようだ
ゲームにしても、奇妙で、ゲーム黎明期大爆発とでも言うような
出せば、売れる
この機械の箱のおもちゃが、ものめずらさが、あった時代
その奇妙さに、人は、引かれて連れ去られて行った
対人を必要としないゲームの中に
その中で、一番輝き、更には、その先を、誰よりも、見ていた
それは、セガ信者を、産む様に
チュンソフトに、外れなし
そんな、色が、この会社にはある
何かをやってくれる
失敗するならおおごけ
それほどまでに思いっきりが出来た自信が、上からしみ込んでいたかのうに
しかし、二番三番が、停滞するように
新しい革新は上手くても、継続は、得意としていないような
それも愛される一つだろう
しかし、明らかな迷走と言うしかない
別次元以上にはいってくれるが
それは、アニメで言う所の庵野秀明とでも言う所であろうか
今現在様々な、良作ノベルげーを、もちながらも
合併してしまった
スパイチュンソフトに
実に残念だが、残ったことは喜ばしいところであろうか
しかし、かまいたちに続くストーリーにどうして、ここまで、愛されなかったのか
人選が、悪かったのか」
男は、言葉を切った
何を言おうとしているのか
「しかし、奇跡とは、偶然以外に起こせる方法がある
機械だ
機械には、プレッシャーもなければ、成功以上も成功以下も、存在しない
やれることがすべてだ、それ以上は、それ以上を越せる人間が導かなければならない
小説が無ければ、機械は小説を書けなかったのではなかろうか
今回、先生に、お願いしたのも、阿部先生の開発した有能な機械が、いてくれたからこそ、作ることを、計画したんです、これも、社長の思いを、受け継いでいるとも言えます
常に最先端のその先を、それも、おもてなし第一でです
それは万人受けではない、好きな人を巻き込んでの一番です
この作品は、第一作準拠のあの迷宮を、更に、進んだ
別物ではない
あの作品のその先を、あらぬ方向ではなく
少し進んだ程度で、見せてくれる
これは、念願なんです
私も、あの時代に居たわけじゃない
でも、あのゲームの大ファンなんです
社長には、好きな人間がやると、先ほどの松丸先生の言葉じゃないですが
からまわりすると・・まあ、それで、全く別で、しかも、あの作品の匂いを、続けられる
そんなものは、機械にしかない
いいえ、阿部先生に言わせれば、探せばいるそうですが、しかし、新しいとは、そう言うものです
とにかく、これで、全てのバグとり、つまり、システムの不調も、無く
無事製品として、発表出来ます
それで、どうなるかは、分かりませんが
最低でも、このゲームを、踏破することは、不可能
無限に、増える選択しは、誰も最後まで行きつく事は出来ません
それでは、困る人もいるでしょうから、モードで、短落ち中落ち長落ち兆長落ち最後に特別編の無限などがあります
中編位が、最初の作品ほどの長さになりますね一つの話が
これは、ある意味悪夢です
いつまでやっても終わらない
もし、何かの間違いで、ものすごく面白くて、そして、永遠に、終わらない作品が、機械の中で現れたら、それは、楽しいんでしょうか、それとも、つらいんでしょうか」
足音とともに
コーヒーを持った目白氏がエプロン姿で現れる
「皆さま、今日は、特別なジビエ料理を、ご提供できます
食卓へどうぞ」
その明るい声に、一人また一人と、席を立つ
「ねえ、どう言う事、三貝」
小さな頭を頷いて
「ああ、多分、ソフトだと、先ほどの会話から想像するに、100の大筋
これは、元からある話なのでしょうけれど
ネットにつないだ場合
サーバーを介して」
私は首を振る
「凄く楽しい話が、いつまでも終わらないって言うの、其れの何が、苦しいの
ものすごく楽しいんじゃない」
娘は、もう一度頭を振る
「楽しい事って、終わるから、楽しいんだよ
終わらなかったら、その世界から出てこれない
本当に、それが、面白いのか、面白くないのか
其れさえも、示してくれない
なぜなら」
夫が、こちらに来てと、手を招いて居ていた
「ねえ、三貝」
私が彼女を、皆さんが向かう場所へと進ませる
「其れさえも、示してくれない、なぜなら」
「ねえ、三貝」
私の言葉に、彼女は乱暴に手を振りほどき
もう一度繰り返す
「なぜなら、ストーリーは、最後までないと、評価が出来ないから
眠れない夜をするなんて」
娘が、言い終える前に、夫に連れ去られていく
食卓には、豪勢な料理が並んでいる
前菜のサラダだろうか、見た事のない葉物が奇麗に、皿の中に、落ちている
パズルのような美しさだ
数本の瓶が、テーブルに置かれているが、どれも、高い物である
「わーこれ、三社ルドフランスンのぶどうジュースじゃないですか
ワインよりもよほど少数しか出荷されないうえに、ぶどうジュース用に、別に、葡萄を、栽培しているらしいと」
良く知って居ますね
阿部が、そんな事を言いながら頷いている
全員が、食卓に着いた時
大きな音が、夕食のテーブルに響き渡った
硝子の向こうから、雪風が、入り込んだ
ラジオから、大きな声が、流れ込む
「只今、冬将軍が、北海から、入り込み
長野新潟周囲に、今年一番の大雪が強風とともに、入り込んでおり」
黒いガラスの向こうに破片の向こうには、何も見えない
ただ、息をのむ
大人たちの顔は、何処か嬉しそうに歪んでいた
一部を除いてだが
三貝が、席から立つと、すっ飛んで、そのガラスに、向かう
「危ないじゃない」
私の静止を、聞き留める事もなく、ガラスの向こうに、目を向ける娘
辺りを、見まわしているようだが
首を振る
周りの大人も、それにならうように、首を出して、その四十センチ程の穴から、向こうを見るが
特に、何もないらしく、顔を戻す
目白さんが、チリトリと掃除機とガムテープを、持って、現れた
「もう宜しいでしょうか」
分かった風に、皆が楽しそうに見て回るのが終わってから、余裕をもって、テキパキと的確に、あっという間に掃除を終える
「しかし、やりますな、いや、これを言うのはよろしくないのかも知れませんな」
三藤が、松丸の方へと目を向けるが
酒瓶に目を向けて居るだけである
「あれ、先生の仕業じゃ・・いや、やはり、これは」
しかし、その匂わせに、先生は、首を振った
「無理ですよ、私、今日呼ばれて、締め切りから逃げるために、ここにいるんですから」
その目が、目白に向くが、彼は驚いて、首を振った
その目線の最後は、私たち家族へと向いたが、恐れ多いと、首や手を振ったり私は首を傾げた
「しかし、おかしいでんな、皆さんが、していないとなると、本当に、誰かが・・・いや、しかし」
また関西弁擬きが混じり始めた三藤が首をひねた
「どうしたんですか、三藤さん」
松丸が、酒を注ぎながら聞く
「ああ、先ほど言いました、もう一人なんですが、声優さん何です」
「声優ですか」
三貝が、立ち上がる
「輪廻で、フルボイス・・いや、ドラマcdを、かまいたちでも、でも、でもですよ
今回も声優で、フルボイスですか人数は」
三藤は首を振る
「いや、多分考えているのとはちょっと違う
実は、アナウンサーのような癖のない声質を録音して、それを、機械が、癖のなく、聞いても分からないくらい現実の人間がしゃべっていると、思うほどに、つなぎ合わせて、読んでくれるんだ
それで、彼にも、今日は、来てもらおうとしたんだけど、電車が、この雪で、止まっちゃって
・・・来てるのかな」
彼は、携帯を、見始めたが、やはりと首を振って
「うーん、止まっているからな」
酒を飲んでいた松丸が、口をはさむ
「まあ、言っているだけで、実際に、電車で来るとは、限らないですしね
それに、聞いた所、そのかたも、推理小説お好きだそうじゃないですか
そんな、変わった人が、本当のことを、電車以外で来る程度のことは、するのではないですか」
夫が、それに対して
「いや、さすが、松丸先生、言う事が違いますね
しかし、そうなると、もう事件は、始まっていると考えていいのでしょうか
これが、本当に、誰かの、事件を起こしているのだとしたら
それをほっとくのは、バッドえんどに、なりかねませんし
それに、こういうのには、よくありきたりに
実際に事件が起こってからでは、お終いですし
何か、調べておいた方が、本気に、我々が思う以上に」
頷いていた三藤さんが
「まあ、本当に、御堂さんだとしても、本当に、殺しましかね
細身ですし、気弱そうでもありますし」
ガラスには、段ボールが、張られて、ガムテープに、固定されている
「それで、その、御堂さんですが、本当に、事件を起こしそうな人なんですか」
またまたーと、首を振る
ラジオからは、相変わらず、停滞している雪の中で、車が止まっていた
「僕は、少し、ペンションを、探ってみようと、考えています」
夫の声が、テーブルに響くが
「でも、食事は・・それは、ゲームなんでしょ、そう言うドラマなんでしょ
それとも、食事より優先すべきものなのでしょうか」
皆黙りこくっては居たが
酒瓶を置いた松丸が
「それはそれ、これはこれ、食事をするよりも、面白い事があるなら、優先しても良いんじゃないですか
明日には、みんな死んでいるならば、最善手は、広がって居た方が、分からない」
私は、ぎょっとした目を向けた
「死って、ああ、そうですよね、これ、皆さんで、私たち親子を、楽しませようと
でもすいません、私のようなものには、そう言うのは、ちょっと、お昼のサスペンスも
夜の推理ドラマも・・違いますよね」
そう、皆それが嘘だろうと、いうと思ったが、なぜか、まるでお葬式のように、歯切れが悪い
まるで、触れてはいけないことが、そこに横たわっているように
「あの、すいません、そのかまいたちの夜って何なんですか
この場所が、何か関係があるって言っていましたけど、どう言う」
そこで、夫は、ペンションの見回りに行く
「なあ、間、どう言うのが、犯人だと思う」
彼の胸ポケットに置かれたaiに、夫が話しかける姿が、見えたが、曲がり角に消えていく
「まだ、何も知らない、奥さんは、非常に、運がいい
もちろん好きぶすきは、あるでしょうが
しかし」
今では珍しいブラウン管の前に、古い確か、ファミコン機が、コントローラーを、釣り糸のように垂らして、置かれている
そこには、古臭い画面と、独特の明るい音が横のスピーカーから流れてくる
悪くない音であるけど
こんな古臭い物を見て、楽しめるだろうか
少なくとも、彼らみたいな、熱狂的な人たちの前で・・・
三十分後
「・・・・・でも、まあ、これくらいなら・・・でも、うん、まあまあ、面白かったですね
時代的には、これくらいの容量で」
娘が、横に来て言う
「序の口ですよ、何言っているんですか
このゲームは」
周りの大人が、娘に群がり口をふさいだ
「っえ、何ですか、これ、何があるんですか」
三藤さんが、前に出た
「いや、奥さん凄いですよ、最初から、犯人を、見つけるなんて、ありえないくらいに、筋が良い
しかし、娘さんの言っていることは正しいです
これは、後半戦にも行っていない
かまいたちの神髄は
まだ始まりもしていないのですよ」
まさか
私は頭を悩ませる
一体どこに、伏線があったと言うのであろうか
私にはわからない
分からないが、行動が出来ない
どうすれば
食事もせずに、私は、血眼に、行動し
そして、ついに、気が付いてしまった
それはまるで、これが、本だとでも言うような
そんな
私は、トリックを、解いて、次のステージへと、向かい
彼らの言っていた理由が分かり始めていた
これが、チュンソフ党
恐るべき陰謀である
「奥さん、猪のスペアリブですよ、珍しい
これ食べないと、勿体ない」
ウルサイ
私は、その時、無意識に声を出していた
というか、終わった後に娘に言われるまで気が付かなかった
「黄金の栞でました」
皆が、デザートを、食べる中
私は、ようやくそこで、料理を食べる
そう言えば、ここがシュプール
そう言われると、恐ろしい、感嘆が内側から、映えだす
ここが
登場人物の名前は違う
料理も、創作料理はない
しかし、旨い
さすがに、地料理と言うのは、地元の時間が、長いだけに、それは非常に、美味である
「シュプールにいるんだね」
私の声に、何をいまさらだと言うように、横で、三貝が、ぶどうジュースを飲みながら
偉そうに、胸を打つ
「ここが、シュプールです」
苦笑いするオーナーの目白さんに、全ての料理を、運ばせて
私は、一人優々と、食事なんかを謳歌させてもらっていた
そこで、私は、そう言えばと、今回の問題を、思い出していた
あれ、なんかあったな、窓ガラスが
あれは
「そう言えば、夫は、帰ってきていませんか」
私は辺りを見渡す
ゲームばかりに集中して、気が付くと、料理ばかりに、気をとられた
それどころではないことがあったことを、思い出す
それで、私は、こんなことに
「ちょっと私、見て来ましょうか」
三藤が、連れ立ち
「僕も行きますよ、目白さん、もし犯人がいたら、大変ですしね」
二人が、そう言いながら、部屋を出ていく
作家先生は、寝ているし
娘は、部屋を探し回っている
私は、食べた皿などを、片付けることを、考え始めたとき
強烈な音が鳴り響いた
それは一体何だったのだろうか
いや、何処かで聴いたことのある
三貝が、こちらを見る
私は知って居る、それは、危険を知らせるものだ
「これって、aiの危険音声だよね」
わたしたちは、部屋を飛び出す
持っていた皿を置く
これは高そうである
その音は、鳴り響き続いている
何処かは、直ぐに分かる
一階を、探していた、二人とも、途中で合流する
何処だ
その音を、探れば
それが、如何やら、上の階から聞こえてくる
皆の顔が、明かりのついていない、階段の上を、見ている
「ギィイーーーーーーー」
「これ何ですか、何の音ですか」
三藤が、上を見る
目白さんが首をひねる
「さあ、聞いたことがありませんね」
いつの間にか、その後ろには、寝ていた作家先生が立っていた
「かまいたちの声かも知れませんね」
またまたと、誰かが言うが、そんな声に聞こえる
しかし私たち二人は知って居た
だからこそ説明する
「急ぎましょう、これは、危険を知らせるaiの音声です」
「っえ」
電気をつけると、上に駆け付ける
その音は、廊下以外にあるらしく
姿は見えない
「皆さん、部屋をひとつづつ耳を当てて調べましょう」
松丸が、そう声をかけると、ドアの一つに耳を当てる
それぞれが、部屋の端から、探る
「ここ」
三貝の声に、大人たちが、集まっていく
「確かにな目白さん、鍵は」
三藤の声に、腰に差していた、目白は、鍵穴に、鍵を刺すが
おかしなことに入って行かない
「おかしいな」
別のカギを出そうとするが、どちらにしても入って行かないのは、おかしい
中からは、相変わらず、異様な機械音が、響き渡っている
松丸は、目白を見て
「何か壊すものは」
と、尋ねた
「ありますよ」
廊下には、斧が、壁にあけられた穴にケースがかぶされている
それを、取り出して、ドアの前に立つ
皆がわきに除け
それを手に持った目白が、ドアを、数回にわたり、殴り割り
ようやくドアが開いた
中からは一層大きな音が、外部に、勢いをつけたように飛び出す
「うるさいな」
三貝は、隣で、そのドアを見ている
かぎが開けられ
中に入り込む
「ちょっと待て」
松丸の静止に皆動かない
「もし内部に、犯人がいた場合、ここで、皆が入り込むことにより、証拠が怪しくなる場合がある
しかし、だからと言って、この中の誰かを、信用できる人物とは言いかねない
だからと言って、この叫び声をあげる機械の主を、救わずに放置もできない
ですから、目白さんと三貝さんは、外を見張ってください
誰も出れないように
我々は、内部を探ります
良いですね」
直ぐに、私たちは、内部に入る
そこには、倒れた夫が仰向けに、血を胸から垂らしている
直ぐに駆け寄ろうとしたが、松丸が、それをとどめた
「少し待ってください
私も信用ならない登場人物ですが、しかし」
そう言って、首筋に、手を当てる
「死んでますね」
私は顔が青くなるのを感じる
そんな訳
私は、急いで、夫に近づく
ここまで顔が近いのはいつぶりであろうか
手首の動脈を調べるが
動いていない
雪の防音の中
機械の悲鳴が上がり続いていた
部屋に他の人物がいることは無かった
この部屋の持主は、夫であった
つまりは、鍵は、彼が持っていたと言う事になり、入らないのは、鍵穴には蝋が入っているらしく、
それ故に、鍵が、入らなかったという
部屋の窓には、カギがかけられており
内部から、かぎづめを、回す形であり、外から、回すことは難しそうであり
なおかつ、表は、板がはめられ、入る事は出来無さそうである
換気扇は、小さく赤子でも通ることは難しそうである
しかし、そうなると、奇妙な事がある
主人は、自殺だったのであろうか
胸には、刺し跡が一つ
それは、深々と刺さったことが判断容易であり
実に奇妙な事に、誰もそれに対しての異常性に異議を唱えるものは居ないような雰囲気を感じられた
「主人は自殺でしょうか」
それに対して、首を振ったのは、松丸さんであった
「もし、この傷口が死因であるとするのであれば、その殺傷したものは何処に消えたと言うのでしょうか、もしもですが、氷による殺傷の場合、鋭く研いだ氷は解けるでしょう
しかし、そのようなものは裂傷はもちろん辺りに見受けられない
部屋を、一通り見ましたが、何処にも凶器はこれも見当たらない
しかし、死んでいる人間は居る、どう言う事でしょうか」
先ほど、部屋に突入したころには、ロボットの音声は消え去り、静寂に包まれていた
「見た所、毒殺の心配はなさそうだけど
そうなると、目撃者は、このロボット一つだけになる
奥さん三貝さん、この機械は、どうやって調べればいいのでしょうか」
胸ポケットから、タバコみたいに顔を出した小さな長細い箱
黒い目が二つ顔をのぞかせている
「簡単です、聞けばいいんですよ、聞けば、単純な話です」
三貝は、そう言って、ポケットから、その箱を抜き出した
「間、お父さんを殺したのは誰」
機械は、黒い口を開けて喋った
「はい、三貝さん
あなたのお父様を、殺したのは、奥さまです
機械は嘘言いません」
唖然とする、大人の中、私は混乱していた
私がいつ夫を・・・いいや、私は殺していないはずなんですが
殺したのは、いつ私が起こしたのか、私にはわかりかねました
しかし、それに対しての言葉が、松丸により、問われた
「おかしいですね、奥さんが、食卓やテレビの前から姿を消したことは、トイレもない
しかし、では、この機械が言ったのはどういうことか
三貝君
機械に、映像を、見せてもらう事は出来ないのかい
いくら脳みそを模しているとはいっても、映像を、本物みたいに見る事が出来ないほどにあやふやなものではなく物理的に残しているんだろ」
しかし、それに対して娘は首を振る
「プライバシーの優先です
それに、百歩譲っても、その機械が見せてくれるのは、コード
つまりは、文字の羅列であり直感的な映像ではありません
記憶とは、忘れるものです
機械さえもそれをあいまいにすることで本物に近づけるようにする
知って居ますか、人間の記憶は正しく記憶しているとは限らないと」
松丸は、頭を抱える
「直ぐに犯人が分かると思ったのですが、それでは、映像的に殺害するときを見る事は出来ないんですね」
それに対しても、娘は首を横に振る
「違います、映像に、変換する事は出来ますが、そう言うサーバーに接続しないと、どちらにしても二三日はかかりますね」
皆が、沈黙したような空気を、辺りへと響かせる
しかし、松丸が、黒いのロボットを見ながら
「ちなみに、お尋ねいたしますが、このロボットは、変形するようなことは、ありませんよね」
何を言っているんだという目を向ける者もいれば
そういうことがと、三藤とは別に、目白はうなずいていたが
私は、それを否定する
「それはないと思います、ただの会話ロボットですので
分解すればわかると思いますが」
私のことにうなずいてはいるが
横で、娘が
「それは、親族が言ってしまえば、どうしようもないし
仮に私が言っても、それは同じこと
まあ、実際に、これが、超変形することも
また、うちの父親がそういうものが好きだという感じもない
ただのロボットです
しゃべるだけの」
松丸が、頷きながら
「しかし、その確証も、また、私が分解することもできない
百歩譲って、口が開くだけのロボットが、殺人を、行えないとすると
果たして一体、誰が、彼を、殺したのでしょうか
ねえ、ロボット君
どうやって、そこに立っている奥さんが、君の飼い主を、主を、殺したんだい」
aiが、ゆっくりと、しゃべり始める
「実はですね、彼女は、ゆっくりと、部屋に入りますと
胸ポケットの上に、刃物をさしました」
娘が、私を振り返る
「ねえ、問、目の前にいるお母さんが、本当に、殺したのお父さんを」
機械は、それに対して、首を振る
「いいえ、奥様が、殺したかどうかは、私には、分かりかねます
なぜなら、私に、人の死を把握する手立ては、無いのですから
勿論、わたくしが、変形して、父親を、殺したわけでもありません
ただ、我が主は、刺された後、動かなくなってしまっただけであります」
視線が、下へと向かう
しかし、父親は、確実に死んでいる
そう、目が言っているし、確実に、鼓動が動いていない
世の中の発展が、どのようなものかは、分からないが
ゴムが肌の上にあったとしても、動脈の動きが読めないほどなのであろうか
確実に、動いてなどいない
心音は
しかし、だとしたら、誰が、殺したというのであろうか
「奥さんが、殺したかもしれないとして、いつ頃に、この部屋に、入ってきたんだ」
黒い箱は、自慢げに話す
「あれは、7時ごろの事です
部屋に入ってきました奥様は、刃物で、胸にいました私の下に
刺したのを、この目ではっきりと、確認できました
それはもう恐ろしい、恐ろしいことでありますよ」
機械にしては、機械だからこそか、それは、大げさな言い回しで、話始める
「しかしでんな、彼らが、このペンションに来たのが、六時ごろ
そのあとに、奥さんが、移動したことなんて、一度たりとも」
三藤が、どういうも
「知りませんもん、私見ました、機械は嘘言わない
嘘言うのは人間です
べーだべーだーべろべろばーあだ」
機械のどこにいんぷっつとされたのか、してしまったのか覚えたのかは知らないが
憎々しいことを、問は言う
「憎たらしいでんな、これ、本当に、誰かがマイクでしゃべってんじゃないのおますか」
三貝は、それを否定した
「ゲームがどの程度かは、知りませんか、役を設定すれば、その程度は、再現できます
ただ、この場合、父の趣味で、こういう言動を、望んだということになりますね」
私は、それを聞いても一向に、心が動揺している
私が、いつ殺したというのか
「少し、お伺いを、したいのですが、この機械は、確実に、人間の判別は、可能なんでしょうか」
松丸の問いに、三貝が、繰り返す
「それはかなり難しいと思います
機械は、人間の特徴で、その人間を判別します
一卵性の双子でも、それは難しいかと思います
ねえ、問」
機械は、しゃべりを止めずに
「ええ、まったくそのとーぉりでございます
わたくしは、機械ですから、人間のようなあいまいに、人を間違えるなど、名前を忘れるなどありません」
どうですかという風に、娘が機械と二人して胸を張っているように見えた
「ですが、あなたは、ただの機械ではない
曖昧性を含んでいる
監視カメラであれば、嘘をついていないように、一見見える
しかし、あなたは、どの程度信用していいのか、私には、分かりません
あなたが本当にうそを言わないという証拠はありますか」
小さなロボットは、それに対して、機械のように冷徹に
「わたくしの正しさは、人間が、決めることで、わたくしめのような機械では、到底」
「そういうことは良いんだ、うその証言
そう、彼らに、情を持って、嘘の事を言ったりしないんだな」
機械は、うんざりし始めていた
「全く、私は、機械です、嘘は言いません」
オトナはそれを信用するとして話を進めることにした
「まあ、まずは、警察ですね」
目白さんは、急いで、廊下に走っていった
しかしその顔は、どうしても、笑顔とは程遠い
焦りを含んだものとなっていたのである
「しかし、奥さんが、上に行ったことはないにしても、どういう殺人動機だったんですか」
機械の言うことを、信じるのであれば
そんな小さな声が聞こえるが、私は、それほど主人が、不満だったのだろうか
普通だとそうは思うのであるが
もし、私が、分身の術なり
なんなりで、あの場所を抜け出したとしても
動機については、今一つ、自分自身で考え込む
「わっ私が、本当に、主人を殺したんでしょうか」
一人、能天気な機械が、憎たらしく
「こいつが、刺したー刺したー」とわめき散らす中
あわただしい音が、下から駆け上がっている
また別の何かがあったとでもいうのだろうか
皆が、あけ放たれた扉のじゅうたんの向こうに
白いエプロンをした目白が叫ぶ
「電話線が、切れたのか、電話がつながりません」
頭の中で、通電音さえも
吹雪の中、消える幻聴が、私の頭の中で聞こえた気がした
それでも、娘は、明るく言う
「まあ、明日になれば、つながりますよ
それよりも、電気が消えなくてよかったですよ、最近は、メールがありますし」
それは、フラグのように、彼女が、言い終わるのを待ったかのように
一斉に、辺りが暗闇に、沈み込んだ
あまりにも、一瞬のことで、瞬きでもしたかのように感じるが
実際問題は、目を開けようが閉じようが、変化を見ることはできない
「あわわ、大変なことになりましたけど、けど、でもですよ
最新の端末は、ライトも」
娘が、しばらくごそごそと、服をあさっているようであり
周りの大人も、同じような事をしていたようであったが
「ない」「忘れた」「充電が」
と、皆の声が漏れる
「ちょっと、わい、下に自分のカバンがあるから、取りに行ってきますわ」
三藤の声が響く
「そういえば、目白さん、このペンション内には、発電機や懐中電灯の類はないんですか」
闇の中で、目白らしき人間が動くのがわかる
「すいません、点検に出していて、発電機は
懐中電灯も、玄関に、一つあったのですが、今朝、落として以来・・つかなくなりまして」
「おじさん、犯人じゃないの」
「こら三貝そんなことを言うものじゃありません」
私は、娘を、たしなめる中
一人、下へと降りていく音がする
暗い中
夫の死体があるのは、奇妙な感じである
いまだに実感なんて言うのが沸いては来ないでいる
「でも、本当に、お父さんは」
私は、娘のほうに、腕を手繰り寄せて、抱きしめる
なんていうべきだろうか
さすがに、ゲームばかりでも、こんな時にそんな話は、空気を読んでいるのであろう
普段から・・・いや、それでは彼女ではないのかもしれないが
この空間で、向こうから声がする
それはすまなそうであり
「申し訳ありません、当ペンションで、まさか、こんなことになるなんて」
私は何も言えない
私が殺したといわれても、この人は本当に信じてくれているのであろうか
いや、この人が、夫を殺したのかもしれない
なぜなら、ゲーム中、正直私は、周りに、集中できてなどいないのである
誰かが席を離れていても分からない
そう考えると、私以外のアリバイは、どうなっているのであろうか
娘は
腕の中で、小さな姿がいる
「そういえば、この場所には、本当に、かまいたちの伝説は、あるんですか」
見えないが、目白はしゃべる
「いいえ、あれは、完全に、ゲームの中の話で
鬼のような話は、近所にはありますが、かまいたちとは関係ありませんね」
と、私に説明してくれた
何かの糸口になるかとも思ったが
「ねえ、おじさん、おじさんは、ずっと、一回に居た」
その声に、相手はつづける、それは本当なのであろうか
「ああ、ずっと、料理の用意をしていたよ
その間中、君のお父様には、会わなかったけど」
「ねえ、そう言っているけど、合っている」
それは、私たちではない
人間ではないもう一人
機械へとむけられている
「ええ、この部屋には、一人しか、来てはいません、はんにんだけであります」
暗い中、まだ見ぬ犯人が、そこにいる気がして仕方がない
「本当に」
娘が、何の意味があるのか、ダメ押しのように、機械に聞いても同じ答えが返ってきた
「ええ、機械は嘘は言えませんとも」
静寂の中、だれがどんな顔をしているのか、全くわからない
それでも、良くない表情だけはしていないでほしいものである
静寂を破ることは、またしてもすぐに人の声によって、知らされる
「誰だ、あ、あんはんは、おっおまはん、おまはんは、御堂さんじゃ」
奇妙な声が、下から聞こえるが
御堂と、言っただろうか
御堂というと、確か、機械に、音声を、覚えこませた人ではなかっただろうか
ということは、停電の途中に・・・いや本当に、来たのだろうか
「ねえ、三貝、こんな吹雪の中、本当に来れると思う」
「奥さん」
目白の声は、心配そうに私に向けられているように感じられたが
それを、補足するように
「お母さん、何言っているの
そんなこと言っている場合じゃないじゃないの
犯人よ、遅れるとか言って、そういえば、かまいたちの夜にも
まさか、本当に、犯人は、このゲームのすごいファンで
殺して、実際に、ゲームを再現した事件を起こそうとした本物の危ないファンなんじゃ
そうよ、そうに決まっているんだわ
そうですよね、目白さん」
「ええ、まあ、もし本当なら・・・黒松さん、いらっしゃりますか
こういう時、作家先生なら、どうするかわかりますか」
静かな中、下では、何か騒ぐ音がする
しかし、行っていいものかもわからない
「っあ・・寝ていた、しかし、警察はいつ頃」
驚いたように、目白が言う
「下ですよ、下に、御堂さんが、いるとか、三藤さんが、応戦してらっしゃります
どうしましょうか、我々は」
「なあ、お嬢ちゃん、その機械は、暗視カメラ搭載されているんか」
足元で
「わたくしは、人様の物であり、そんな、人権を、破壊するような
睡眠を邪魔してしまうようなものは搭載など」
「していないのか」
がっかりしたような松丸の声がする
「いいえ、悪用を阻止するため、ご主人しか使用できません」
「家族でもダメなのか駄目ボット」
「何をおっしゃりますか、有能だから、一歩の線を、間違えません
人間と違って、機械は罪を犯しません」
「怪しいな、お前の正論が相手を殺したらお前の言っていることは嘘だろ」
静かになった機械は、涙目にすすり泣いているような音を出している
「所詮機械か、噓泣きが」
「機械は、嘘は・・・」
下のほうで声がする
「おい、誰かいいひんのかいや、今、ここに、御堂はんが
最後の一人の御堂がいたんや」
「本当ですか」
松丸が、下へと行こうとするが
探り探り行かないことには、外の吹雪で月明かりさえ遮られた室内は
何も映してはくれない
真の闇の中に隣からは、人の気配がゆっくりと下へと下っていく
「見たんですか」
松丸の声に
「いっいや、どうだったやろな、でも、この場所を知っている人間は、限られているさかいな
そうなると、彼奴しかおらへんのや」
皆がどうやら何とかしたに降りているが
しかし、よくよく考えてみれば、犯人がこの場所にいることを考えれば来るべきではなかったのではなかったのではないだろうか
「ばらけないようにしたほうがいいですよね、松丸様」
反対のほうから、声がする
「まあ、作家だから、本当に対しての対処が、プロとは違うし
それに、殺人犯がいる密室なんて
クローズドサークルなんて、皆殺した後でないと」
「物騒な、人権無視をした報いが来ている想定外の作家先生」
しんらつだなーぁと松丸の声がする
「でも、ばらけないほうが、いいのは、定番だよね
一人になった人から死ぬ
でも、いつも思うんだけど、一人になったとしても、その人の場所に向かうのに
よくばれないものだよね
それは、犯罪者補正の才能なのかなあ」
と、不謹慎にのんきなことを言っている
作家なんてやっている人は、犯人の肩を持つのだろうか
まあ、そうしないと、平和すぎて、楽できないのであろう
でも、夫が死んでいるというのに不謹慎すぎである
「じゃっじゃあですよ、先生
皆でまとまっていれば」
「ああ、目白さん、それがジャスティスで、スタンダードだよ
ということだよ」
と、言ったきり黙る
本当にあっているのだろうか
小魚は、群れることで、捕食者から逃げやすくするという
人間は群れることで虐められるという
しかし、この場合、どちらが正解なのかを考えるべきだろうか
「でも、こういう時、みんなで、手を数えたら、怪談話とかで、一人多いってなったら
いやよね」
「こら、三貝」
そういうが、私自体、本当だろうか、今いるかもしれない人がいても何らおかしくはない状況なのであるが、どうしたらよいのか
本当に、数を
「みなさん、だいじょうぶでっか」
今の状況が、大丈夫とは言えなさそうであるが
「それで、三藤さんは、何を見たか改めてお話しいただいて大丈夫ですか」
酔っているのか落ち着いているのか
松丸の声が、鋭く相手に詰問する
「いや、携帯をとろうとしたら
誰かの気配がしたんですわ
それで、携帯を、改めて取ろうとすると、足音が聞こえて
もう後は、無我夢中で」
「つまり、見てないんだな、叔父さんは」
それに言葉が詰まるが
「いっいや、しかし、さっきも説明した通り、ここに誰かがいるわけが」
沈黙
誰も動こうとしないが
もし遠くのほうで、誰かの動く音がしたら、面倒である
それは、犯人以外ないのですから
しかし、その心配をよそに、何の音もしない
「見間違いの、聞き間違いの可能性はないんですか」
松丸の声に
「あれは、あきらかに、人でした、雪の音では」
と三藤
皆が、その声に、耳を澄ます
「それじゃあ、携帯で、相手を照らしたり、外の明かりで、見たということは、ないんですね」
「ああ」
と、肯定の声
「こんな暗闇で、外は見えないやろ
それに、携帯も結局」
今から探ろうにも、非常に、怖い
自分たちが今どこにいるのかは、不明りょなのだ
「あれ、じゃあ、おかしい
二階から下を見たんですけど
一瞬三藤さん姿が、携帯で、照らし出されたのを、見たんですか
「っえ、本当ですか、三藤さん、目白さんは、本当に見たんですよね」
「ええ、一瞬でしたが、顔が特徴的だったので」
「それじゃあ、三藤さんが、嘘を言っているってこと
ねえ、三藤さん」
声が聞こえない
「あれ、三藤さん」
娘に続いて私が声をかけても、返事はない
「すいません、皆さん手をつないでもらえますか・・ええ
お願いします・・つなぎましたか」
その声に続いて、手を触る感触がある
しばらくして、松丸のこえがする
「おかしいですね、今ここには、私、奥さん娘さん目白さん、そして、三藤さんがいるはずですが
手に触れたのは六個の手
勿論私を、除いています
あれ、三藤さん、いるんですか、それとも、声を、出していないんですか
皆さん、本当にいますか、声を出してくださいませんか
私は、松丸です、次の方どうぞ」
「三貝です」
娘が一番に言うので私が続くことにした
「阿部の家内です」
そして
「オーナーの目白です」
としめくるられた後無音が続く
誰もいない
急に一人人間が消えたことになる
倒れたのか
襲われたのか
しかし、悲鳴も、暴れるような音もしなかった
しかし、夫の事を考えると
とんでもないことが起きていても何らおかしくはないのである
しかし、そのあと、静かに、機械のように動く音があった
「わいもいるで問やで」
とんでもない、無機物が、しゃべりだしていた
「こら、三貝、持ってきちゃダメでしょ、こういうのは、現場も保管していないといけないと
ナビスコの人も言っているのよ」
私の知識は、娘に鼻で笑われた
「何言っているのお母さま、犯人が一番に壊すのは
防犯カメラみたいな、この機械に決まっているじゃない
それじゃあ、犯人への足取りが一歩遠のいちゃうじゃないの」
私は、黙るしかない
「わいも、壊されるのが、いやさかい、お嬢ちゃんに、連れてってもらいましたわ」
とんでもなく饒舌な機械である
「しかし、困りましたよ、犯人はやっぱり、三藤さんを」
静寂の中、それを松丸が破る
「それは、分かりません、本当は、三藤さんが、犯人で、我々を、これから殺そうとしているかもしれません」
「どういうことですか」という私のヒステリックも
「御堂さんなど、初めから、ここには、来ておらず、彼が、全てを」
と松丸の声が制した
「ちょっと待ってください
この中で、アリバイがあるのは、誰ですか
私は、どうやら、皆さんが、下にいるのを見ていたようですが
三貝、あなたはどうなの
今いるのは、ほかに、松丸さんですよね
目白さんは、途中厨房などに立ったそうですけど
そうですよ、松丸さんは」
「先生は、ずっと、お酒を、飲んでいたけど
私は、デザートを、その後ろで」
それじゃあ、一体誰が、私たちは、これから、どうなると言うのであろうか
「目白さん以外は、皆、アリバイが、ありますけど」
私の声に
松丸が
「それは違います、今の所、死んでいるのを見つけたのは、旦那さん一人っきりです
みな、息を潜ませて、こちらを見ているのかもしれない
それはわかりません
本当は死んでいるのかもわからない
それでも、分からないことは、言いようがない」
静かな沈黙の中
誰かが声を出す
それは良いわけでも何でもない
要望
私が犯人ではないという自己主張でも何でもない
それは、三大欲求に、入らなければならない第四の欲求
「すいません、トイレに行きたいのですが」
娘の声が、妙に静かに響く
「そっそれじゃあ、私が」
そう言ったものの
この暗闇の中
私はいまだにこの場所のトイレに一度も言っていないことを思い出す
しかし、ついていかないわけにもいかない
「ねえ、三貝は、トイレの場所分かる」
「いいや」
首を振るのが音でもわかる
「わっ私が、一応、ここの管理をしています
目をつむっても歩けるかどうかは、分かりませんが」
私は考える、信用してもいいものかどうか
「それじゃあ、全員で」
松丸の声に
「いやじゃ、一人で」
結局、もめたが、目白さんにが、一緒に行くことになった
「誰が、金魚の糞を、するかい」
娘の怒りの声が、やけに耳に響く
二人の足音が、広間から遠ざかる
今のところ、テーブルにぶち当たるような音は聞こえない
その都度
「そこらへんから曲がったほうがいいかもしれません」とアドバイスの音が聞こえる
いかに人間が視覚に頼っているのがわかる
「本当に大丈夫でしょうか」
私は、言ってみるが、それがどうやって確証をしてくれるというのだろうか
「さあ、やはり、全員で行ったほうがいいかもしれません」
遠くのほうで、娘の否定する声が聞こえた
「やっぱり私たちも」
先生は、否定も肯定もできず
「まあ、死ぬときは死にますから、なんでも」と、無責任なことを言っている
静かな中、しかし、相手が犯人ともわからない
「でも、本当に、奥さんが殺したんですか」
私は、それを否定も肯定もできない
分からないのだ
私がもし、知らない間に私から抜け出して、皆に気が付かれないうちに、階段を上り
扉を、擦り抜けたとしたら
「私を、皆さんが、見張って・・いや、見ていたんですよね
じゃあ、私にはそれ以上何かを証明することはできませんよ」
「まあ、そうですよね」
それは本当に納得したのであろうか
「そういえば、あの鍵って、内側からかけるものだったんですか」
「っえ・・ああ、まあ、内側から、かけられるけど・・ああ」
「どうしたんですか」
「いや、鍵穴の蝋は、外側から入れられていたから
つまり、犯人は、部屋を出たことになるんだよ、つまり、部屋は密室ではなかった
鍵も見つからなかったし・・・どういう事だ」
一人悩んでいるが
どれくらいたったのだろうか
娘たちの物音がしない
どうして帰ってこないのであろう
「あの娘たち・・・あの」
私が声をかけると
「ああ、行きましょう、何かあるかもしれません」
二人で立ち上がる
彼は、場所を知ってはいるが、何度もぶつかっていた
「ああ・・ここです」
彼が手探りで、ドアを押すと、内部で、トイレだけなのだろう
消臭剤のにおいがする
「・・三貝・・・三貝いる、目白さんも居ますか」
返事はない
私は中に入る
そして、一つ一つトイレを探る
全てが、座る用の物であり
彼が言った通り、男子トイレではなさそうだ
私は、最後の扉を開いたが
そこに娘の姿はなかった
隠れているのであろうか
私は
「三貝」
と、もう一度、声をだすが
誰も返事はない
「松丸先生、娘がいません
目白さん、居ますか」
誰の声もない
私は、トイレから這い出す
何度も調べたが
誰かが隠れているとは思えない
タイルを這うようにしてもだ
私が廊下に出たとき
そこに、誰かがいる雰囲気はない
「松丸さん、松丸さん」
声は届かない
誰かが、そこにいることはないのだろうか
「ねえ、誰も、誰かいないの」
私は、寒い中廊下に立っている
もう一人の誰かがいるのだろうか
(奥さんに刺されました)
機械が、そう言っていた
しかし、私は、私は
「ねえ、犯人さん、あなたは、そこにいるんですか
それとも私ですか」
廊下には、どうやら私一人が立っているようであった
もちろんそこには誰も答えない
犯人は誰
・阿部夫
・阿部妻
・阿部娘
・三藤
・目白
・御堂
・その他
・ロボット「問」
私は、妻を、選んだ
これは一体どういう展開なのであろうか
しかし、最後まで生きていたのだから、犯人に違いはない
それに、刺したと言っていたのだから
「いいか、言われたとおりに、お願いするよ
aiが、記録できるのは、起動している間だけだ
その間に、全てを間違いなくやってくれ
映像は、その時だけ残る
いいか、やるぞ
良し、起動っと」
夫が、問のスイッチを入れる
私は、ナイフを、胸に抱き
振り返る夫の胸に突き刺した
「あぁーーーーーーー」
ロボットが叫ぶ
どういう表情だろうか
私は、それをインプットした人間の事を気にしないように
すぐにその場を立ち去る
時間は、午前七時の事であった
夫はすぐに、機械を停止させたことであろう
その日、彼を含め
私達は、信州の宿屋に来ていた
ゲームに興味なんてない私でも、その宿は知っていた
夫がよく話している
娘は、興味なさそうに、袋を手に持っている
「車の中で、本なんか読むからよ」
私が、そう言うが
「うるさいよ、ゲームなんて、やってる暇あったら本読む
五千円もだして、文章量を考えれば、中古の本買ったほうが徳
というか、好きな本買うのが最善策
これ常識」
どこの常識かは、分からないが
ゲーム嫌いには分からないのであろう
「それにしても、ワクワクするな、これからの事を考えると、皆さんの驚く顔が
いや、それよりも、冷静に、仕掛け人こそ冷静に
それが冷静であればあるほど」
珍しい夫の姿に、私は、賛同し、協力したが、大丈夫であろうか
車の荷台には、夫にそっくりの機械が、横たわっている
本当は、側だけで、中身のないものであるが
それは、偽物とは思えないほどのリアルさであり
以前夫を起こしに行って
驚いた記憶がある
あの時は死んだとそう思った
「どうも、今日は、およびいただき」
私は何度も繰り返した
言葉を、相手に言う
こんな人の好さそうな人を、だますのは気が引ける
しかし、それ故に、曖昧なことはできない
ファンとはそういうものらしい
彼らとの会話の中
私は、できるだけ、彼らがそう思うのではなかろうかという反応をした
それは顔を見れば、なんとなく分かる
夫が、皆の後ろで、あの死体を運び込む間中
私は、初心者のふりをして
ゲームをやる
見ていてくれるかはわからなかったが
無事うまくいったようだ
娘はつまらなそうにしていたが
どちらにしても、しばらくして、私は、用意が整ったことを考慮して
たっぷり時間をかけて、それでも、最速で、クリアーをすると
皆に、心配していることを言って
上に向かう
そしてその感想は常に、私の感情を顔出らわす
全てが、目論見通り
部屋に入ると、夫が、鍵穴に、蝋を入れている
正直お粗末だが
内部に何とか入ると
そこには、瓜二つの死体
皆で検視のまねごとをした後
ロボットが、私の犯行を言う
確かに正しい
嘘は言ってなどいない
全ては、上手くいく
あとは、工業高校卒業後
電気関係をしていた
夫が、電話線を止め電気を止めた
感情的ではないあの人が、一体あのゲームのどこにいつ触れたかは不明である
しかし、それでも、あのゲームがそうまでさせているのだ、面白いことに
暗い中、夫が携帯の画面を
三藤さんに見せる
それはつまり、ゲームに参加してほしいと言う
説明書き
「ゲームオーバーあなたは死んだ
指示に従って」
暗視ゴーグルを、かぶった二人は、現場を去っていく
そして、残った我々は、下に向かい集団になる
その中で、機械が、三藤のまねごとをして
居るようにする
そして、娘に、連れ去られた目白さんもどうように
脱落
最後に残った小説家さんも
同じ
全ては、かまいたちのような
我々三人による
完全犯行である
一人の語り部は信用ならない
あなたも一人なら、それは信用ならない
「奥さんが、主人を、刺したんです」
完
かないたちのよる イタチ @zzed9
★で称える
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