第6話

 拍手でもしそうなカイの元に戻りつつ、シャーロットは、機嫌きげんなおった様にうことにした。震えをさとられないようにするためだ。腰に手を当て、胸を張って見せる。

「どうよ? アッシュにこの勇姿ゆうしは伝わった? 『妹以上の女性は、この世に存在しないな』とか言ってたでしょう?」

「あー……、どうかなー? アーサー、電話切って、メシ食いに行ったぜー」

 怒り再燃さいねん

「あの女っ! カイ! アッシュが拉致らちられた! 犯人はブルネットだ!」

「いやいやいや……、意味がわからんて。それより、アーサーから聞いたぜー、家出いえでしたんだって?」

「そこは重要じゃない!」

「いやいやいや……、なんてったっけ? 家政婦の。プレスリーさん?」

「プルーデンス」

「そうそう。プルーデンスさん、心配するから、ちゃんと帰るんだぞ?」

 怒りから苛立いらだちにシフトダウンした様子のシャーロットは、腰から離した片手の親指をむような仕草しぐさと、どこにも焦点しょうてんを合わせない表情で考え込む。

「プルーデンスか……」


 私の心証しんしょうは良くないな。高身長の栗毛。体型を強調するミリタリーウェアの薄着うすぎで家の中を彷徨うろつくくのも不快だし、メモ魔のアッシュが書きちららかした資料を鼻で笑うのも気に入らない。あの膨大ぼうだいなメモの一つ一つを精査せいさして、分類する楽しさが分からないなんて人生損してるわ。一見いっけんすると、無関係に見える複数のメモを帰納きのう法で関連付けて見せた時のアッシュの表情なんて……。おっと、考えがれた。


 彼女の父親が、お父さんの知人で、ハンフリー・コールドウェルだったかな? ミドルネームがカーネルだから大佐。称号しょうごうとかじゃなくて、名物オジサン的なヤツ。零細れいさいPMCやってて、プルーデンスは、そこでスナイパーやってたそうな。


 お父さんの肝煎きもいりでアッシュの護衛ごえいになったんだから、怪しい組織との接点はないと思いたいけれど、それは逆に言えば、お父さんはアッシュがトラブルに巻き込まれるのを想定していたことになるんだよね……。あんな両親でも無能じゃない。何かを調べていたアッシュが、突然日本に行ったら、理由を探らないわけがないか……。すると、クルーズ船が想定外だった……? うーん、これ以上はわからないか……。


「そんなことより、紫オジサンだよ!」


 今のところ、分かってる事といえば……。

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シャーロット・ザ・ホームレス 玉虫圭 @tamamushi_k

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