未練、大洋に黒く混じる。


 長年交際してきた彼氏に、呆気なく振られた。

 生きる希望を失った私は、「クジラの背に乗って大洋を進む」という幼少の夢を叶えるべく旅立つ。

 それはすなわち、最高の死に場所を探すことを意味しており……



 本作はホラーではあるものの、その前段階にあたるドラマに惹かれた。

 全てを失って空っぽだった主人公が、最後と割り切って旅をする。
 暗さの中にも清々しさ、吹っ切れた感じがあって、面白く読み進めることが出来た。
 ホラー部分に達したことがこんなに「惜しい」と思える作品も珍しい。