第2話 聖歌隊
初めまして! ペティーです! 大天使様から貴方の案内役を仰せつかりました!
さてお近付きの印に1曲。
……ーーーーーーーー♪
どうですか!? 異世界の方とお聞きしまして、あえてメロディーのみをお届けしました! お気に召せば幸いなのですが!
複数人で歌ったほうが良いかもしれない? はっはっは! 確かにその通り! この曲、本来は賛美歌ですからね! いやはや素晴らしい、異世界のお方は音楽の面にも秀でていらっしゃる!
はい? 声が大きすぎる? はっはっは! それは素晴らしい褒め言葉ですね!
やはり何事も元気に呑気に幸福に! 明るいのが1番です! あーっはっはっは!
はぁ疲れた。
じゃ、普通の声量で喋らせて頂きますね。
おや、どうかなさいましたか? そんな不思議なものを見るような顔をなさって。
別に二重人格ではありませんよ。
「緊張するときや怖いときは、それが消えるくらい明るく振る舞っていればいい。」
孤児院の神父様にそう教わったんです。
さ、私のつまらない過去などに時間を割く暇はありませんから、案内に移りましょう。
私たちが今いるこの場所は神殿、貴方の世界で言うところの「ヤクショ」のようなものだと大天使様からお聞きしました。
神殿は神の世界と死者の世界のちょうど境目に位置しています。ある意味、この世界で人間が存在することを許される最も遠い場所と言えるでしょう。
ですから、死者たちも易々と立ち入ることは許されません。正当な手続きを幾重も挟んでから入る必要があります。
いえ、私はちょっと特別ですから。
私は死者のなかで唯一、天使の方々と同等の立場を頂いているんです。そのうえ大天使様のお側でお仕えできるなんて、天使の方々でもなかなか無いことなんですよ。
さて、この門を出た先が死者の世界です。
異世界のお方からすれば、馴染みのない景色なのでしょうが……
……ああ、ここから見える景色は、やはり何度見ても素晴らしいですね。
はい。この広大な土地こそが、この世界の生きとし生けるものどもが天の神々から授かった、死後の世界です。
美しいとは思いませんか? 貴方の世界とは異なる植生ですが、大自然を見て感動する心は同じと聞き及んでいます。
死者たちは皆、この世界で自由に暮らし、自分の一生を顧み、そしていずれは新たな生に旅立って行きます。
貴方がこれから何と出会い、何を選び、何に行き着くのかは分かりません。
ですが、貴方はこの世界に辿り着き、大天使様と謁見し、選択の機会も与えられた。
それだけでも十分に光栄で幸福なことだと私は思いますよ。
さあ、ここから少し歩きますよ。
向こうに死者たちの町があるんです。そこで次の案内役に引き継いで、貴方の住まいを用意させましょう。
……ん?
さっき言った、私がちょっと特別な理由?
ああ、そういえば言っていませんでしたっけ。いやはや失礼、自分のことを人に話すのは少々不得手でして。
別に複雑な事情はありませんよ。
私、生前の職は生贄ですから。
ダイテンシ対談 蝶々屋 @1ra8ta10bu4
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ダイテンシ対談の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます