一夜明けて

! 開き戸が開く音


! 開き戸が閉まる音


! 床を歩く音


% 扉越しのヒロインの音源


^ ヒロインの鼻歌


! 開き戸が開く音


% ヒロインの音源正常化


「おはよう」


「ああ、この髪飾り?せっかくの『贈答品』ですもの。使わないと失礼と思いまして。なんてね」


「もう怒ってないわよ。あんまり」


「姉さまは近い内に一発殴りに行きたいけど」


「里帰りは、まあ、そうね。別に『孫の顔を見せるまで』なんて、そこまで本気でもなかったし。良いきっかけと思うことにするわ。姉さまの思惑通りなのは癪だけど」


「確かに怒ってはいないけれど、あなたも注意してよ?あの姉さまは本当にスチャラカのテッテケレツのプゥなんだから」


「プゥって、プゥは、その、プゥよ。つまりその、 …… 何かしら」


「ほら、昔から言うじゃない。テッテケレツのプゥとか、トントカのパァとか、アジャラカのポンとか」


「アジャラカモクレンテケレッツノパァ?そんなだったかしら?」


「まあそんなことより、早くおあがりなさいな。今日も仕事なんだから」


% パートナー着席


! 食事音: 飯一合、豚の生姜焼き、ほうれん草のおひたし、きんぴらごぼう、生卵、根菜の味噌汁


「それにしても、姉さんには引っ掻き回されたわ。今だから白状しちゃうけど、嗅ぎなれない香りがあなたの服からして気が気じゃなかったんだから」


「わかるものかって、あなたねえ。そりゃそうよ。何年一緒にいると思ってるの?あなたの素の匂いなんて鼻に慣れてるわ」


「職場の女性の香水かとも思ったけど、汗の香りも同じようにするものだからそれこそ変な想像しちゃって。問いただそうと思いつつ、意気地がなかったのよね」


「そういえば、どうしてあんなに不定期に通ってたのよ。あれも原因で、怖い想像しちゃったんだから」


「え、実家に行ったの2度だけなの?じゃあ残り4度、じゃなくて3度は?」


「上司と飲みに。へえ、初耳ね」


「昨日そんなこと聞いた覚えはないけれど?香りから察するに、ずいぶんとお綺麗なお嬢様方と楽しいひと時を過ごされたようで」


「そこでとっさに顔色を変えなかったことは褒めてあげるわ。でも、そんな歯の浮くようなセリフは朝から言うものじゃないわよ」


「夜ならまあ、閨の中なら、って朝から何の話よ!まったくもう」


「いや、ヤキモチと焼いた豚の因果関係ってなによ。 wキモチは、そりゃ今はちょっとだけ焼いてなくもないけどさ。 bっきまでそんな話知らなかったんだから」


「ならどうしてって、豚肉が焼きすぎなのはその、浮かれてたとかじゃないのよ?ちょっと段取りに不備が生じただけで、他に理由はないからね?」


「気が若くなってるのは認めるけど、昔の私もそんなに料理下手じゃなかったわよ、失礼ね。だいたい、気といっしょに料理の腕も若くなるわけ無いでしょ」


「ほら、馬鹿なこと言ってないでさっさと腹におさめなさいって」


「いや、最初から見送りの接吻とかしなかったから。朝だから説教されないと高を括って、言いたい放題ね」


% パートナーの左隣を通って台所へと向かうヒロイン


「言っておきますけど、気が若くなった私の乙女心は、当時に増して潤ってるんですから」


^ パートナーの左頬へキスをするヒロイン


「あまり寂しくしないこと、お願いね?」


^ 小走りで去るヒロイン


^ 調子の外れたヒロインの鼻歌

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

口うるさい彼女が隣りにいる生活 猫煮 @neko_soup1732

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画