繋がらないはずの電話

@homare0529

繋がらないはずの電話

20XX年、近頃世間では宇宙旅行が流行っている。宇宙にある全ロケット管理システムというもののおかげで、宇宙旅行が気軽なものになっていた。


ある男は友人と宇宙旅行に行く計画を立てた。彼らはお金持ちではなく、宇宙の知識も乏しいため、格安の旅行会社を予約するしかなかった。それでも彼らは、念願の宇宙旅行に気持ちを高ぶらせていた。


出発当日。彼らは山奥の集合場所に行き、出発の時を今か今かと待ち望んでいた。

周りに人は少なかった。危険がともなうためか、お見送りは禁止されていた。

家族と直接別れを告げることができないのは残念だった。しかし、通話機は持ち込んでいたため宇宙で通話する事を楽しみにしていた。

そしてついに出発の時。

彼らは安全装備を着用していたため景色は何も見えなかったが、とてつもない振動と音でロケットが出発したことをすぐに理解した。やがてアナウンスがあり、安全装備を脱ぐと窓には美しい宇宙空間が広がっていた。画像でしか見られなかったこの光景を、自分の目で見ていると思うと彼らは感激した。


しかし、この頃とんでもないことが起きてしまった。近くの恒星が超新星爆発を起こしたことで、大量の宇宙線が宇宙空間に流れたのだ。最悪なことに全ロケット管理システムが被害に遭い、宇宙を飛んでいた全てのロケットが制御を失い、やがて跡形もなく全滅した。

地球上では大ニュースになり、彼らの家族もこのことを知った途端に泣き崩れた。根拠のない希望を持ち、家族は彼らに電話をかけ続けた。

もちろん繋がることはない。彼らは死んでいるのだから。

ただ不思議なことに、その電話はロケットが出発したはずの場所で今も鳴り続けている。

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