後日談 サービスするとは言ったけど

//位置:3


「お、おにーさん……アタシとの生活に順応しすぎじゃない?」


「幽霊の膝枕耳かきとかほぼ幻覚だからね」


「まぁ、綿棒も触ったら一応概念的には触れちゃうし持てちゃうけど……」


「あ、後でちゃんと自分で耳かきしてね!」


「もう、本当に甘えん坊なんだから……はいはい、耳かきしてあげますよぉ~」


//効果音:綿棒耳かきの音・ゆっくり


「カリカリ、カリカリ、カリカリ……ふぅーっ」


「どうかな、どうかな?」


「ん……結構詰まってないね」


「耳ってさ、あんまり耳かきしすぎると逆に耳の奥に耳垢押し込んじゃうから」


「一か月に一回くらいでいいんだってー」


「これも入院で得た知識」


「お耳の中に生えてる毛とか?そういうのにゴミが絡んで、垢になって」


「そんでもって、じょじょーにゆーっくり、勝手に耳の外に出てくんだって」


「だからあんまり耳の毛をがっつり切ったりとかはお勧めしないし」


「耳かきもし過ぎは良くないらしいよ」


「って、もうちょーっと耳かきしただけで寝そうなくらい恍惚としてるし……」


「ピアノやってるだけあって耳本当に敏感だよね、おにーさん」


「まだ片耳だよ」


「ほらごろーんして、もう片方もするから……」


「片耳だけとかちょっとなんか気になるでしょ」


//位置:3→7


「はい、ごろーん」


「ん、カリカリ、カリカリ」


「お、すっご、こっちは結構取れるね」


「まぁ、取れてる錯覚しかお兄さんにはいかないわけだけど」


「そろそろ耳かきしてもいい頃合いなんじゃない?」


「カリカリ、カリカリ、カリカリ……ふーっ」


「びくびくぅってしちゃってかーわい♡」


「幽霊の耳かきでここまで反応しちゃうおにーさん可愛すぎ」


「最近はご飯もちゃんと食べれてるし、お風呂も、買い物も」


「生活だいぶできるようになってきて良かったね」


「ぎゅーってしてるとおにーさんの精気がイキイキしてるから」


「回復してるのよく分かるよ」


「え?」


「ごめん、今なんて言った?」


「自分が元気になると」


「は、ハツミちゃんの感触がさらによく分かるから頑張れるって……」


「ちょっとちょっとちょっと!」


「初耳なんですけど!」


「え、もしかして、ぎゅーってしてる時、あたっ、あたってる?」


「もーーーーーー!!!」


「おにーさんの変態!えっち!すけべ!どすけべ!」


「もうぎゅーってするの遠慮なくできないじゃん!」


「意識しちゃうよ、恥ずかしいなぁ……っ」


「ま、まぁ……今夜もぎゅーって抱きついて就寝しますけどぉ」


「そ、それよりさぁ……今夜は弾くの? ピアノ」


「だっておにーさんのピアノ好きだし」


「え、練習程度? やったやった、何弾くの? 一緒に歌いたい!」


「おにーさんが音大復学するのも楽しみにしてるんだから」


「だって私も学校で歌いたいし!」


「えー、いーじゃん、幽霊が通っても学費タダだし」


「おにーさんのピアノに合わせて、おにーさんと大学で歌うのが」


「今のハツミちゃんの夢なんです」


「だーかーらぁー、急がなくて良いけど」


「好きなことは止めないでいいようにゆっくりゆっくり」


「アタシと一緒に元気を溜め込もうね」


「おにーさんにはアタシみたいに後悔して欲しくないから」


「疲れたらアタシを頼ってよ」


「おにーさんの後悔、ぜーんぶやっつけちゃうから」


「だからさ、ずーっとアタシと一緒に居よ」


「それでさ、ちょっとでも恩とか好きとか感じてくれるなら」


「私の為にピアノを弾いて」


「アタシ、おにーさんのピアノで歌いたいな」


「ね、約束」


「急がなくていい、いつまでも待つから」


「だから……これからもずっとずっと傍に居させて、ぎゅーってさせて」


「んふふ、おにーさんが元気になるとハツミちゃんもなんというか」


「立体的に、その……活発になってるって分かったし……」


「い、いつか楽しいことができるかもね……たはは」


「もー、何赤くなってんの? おにーさんのえっち」


「ま、幽霊にそんな期待しないで欲しいけど……でもぉ」


「それもまた楽しみだね、おにーさんっ」

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囁き幽霊少女と死にたいあなたが奏でる夜の夢 斉藤しおん @murasakitooto

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