食べたいモノがありません。

@mishimayuyu

第1話

「まんま!」

そう言って空になったお茶碗を母に突き出す祖父は、どことなく私への強さのアピールにも見える。

自分の娘である私の母に、指示出しが出来るという立場を見せつけることで、この家の主であることのお知らせのようにも感じる言動だ。

母は笑顔で祖父にお代わりのご飯をよそう。

お代わりを勢いよく祖父は平らげる。

「ハッフハッフハッフハッフ」 

「ハッフハッフハッフハッフ」

味わっているというよりは、空腹を満たす為であり、カツカツと箸を鳴らしてかき込む姿は、楽しい食事とはかけ離れた風景である。


私は母と祖父と暮らしていました。

私の母は祖父の娘で、祖母は他界しています。

私の父親は気付いたら出て行きました。

あ、生きてはいますよ。

母は戦争を生き抜いた自分の父を尊敬していていました。

「じいちゃんはすごいんだよ」

「じいちゃんがこの家のルールなんだよ」

そう私に言う母はいつも口元に薄笑いを浮かべて、一緒に幸せになりたいというより、一緒に不幸になる人を探しているようにも見えました。





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