午後十二時半に、私は「からあげ」を作った

隅田 天美

午後十二時半に、私は「からあげ」を作った

 まず、前説を少しだけさせていただきたい。


 本作では、現実の料理本を使用している。


「リュウジ式至高のレシピ」だ。


 この本では、ほとんどの調理人が回避、または禁忌としていた「味の素」を使用している。


「自然由来のもの万歳! 科学的な調味料は嫌だ!」という人は、この時点でバックブラウザーを押すなり、クローズをしてもらっていい。


 私個人は、「自然由来でも毒素はあるだろうし、取りすぎれば何でも毒になるし、個々人でアレルギーも出るだろうから(私は無農薬のキュウリを食べると何故か唇が腫れる)個々の自由でいい」という思想の元に料理を作っている。


 

 では、前置きはこれぐらいで本編スタート。



 最近『あいつ』が心に住み着いている。


 ちょいとふくよかで優し気で親しみやすいが、その腹の中にはどんな毒素を持っているか分からない、不敵な男。


『賭博黙示録カイジ』のスピンオフ作品、『一日外出録ハンチョウ』。


 ハンチョウこと本名、大槻太郎。

 

 帝愛の違法地下労働施設で働く文字通り班長であり、班員からイカサマ賭博を仕掛けペリカを強奪する男。


 だが、それを使い、地上に出た時。


 彼は、飯大好きオッサンへと変わる。


『お前、今、食べたいものを当てようか?』(ボイスはアニメでも担当したチョーさん)


--あのな、今、夜十時で風呂に入って寝るんだ……


『くっくっ……会社の健康診断で前年より二キロ瘦せただろ? その分のご褒美が欲しいんじゃないのか?』


--ぐっ!


『ずばり、お前が本当に今食べたいものは……からあげ!』



 その日の朝一にスーパーに食材を買いに行った。


 しかし、からあげ。



 私が何度も挑戦し、爆発させ、黒焦げになり、涙とみそ汁を飲んだ料理……


 そこで、心の癒しどころでもある『衛宮さんちの今日のごはん』と料理本『リュウジ式至高のレシピ』を参考にした。


 衛宮さんのほうは安心と実績があるが、リュウジ式のほうは「油の量半分」「二度揚げしなくていい」という『邪道にして最短距離の美味いもの』という理念の元に編み出されている。



 さて、帰宅後。


 手洗いうがいをして大きめのポリ袋に塩コショウ、生姜、にんにく、酒、それからリュウジ氏激推しの『クミン』を入れる。


 スーパーで百二十円前後で売っていた。


 直接、匂いを嗅いでも強烈に「オリエント!」な香りではないが、大槻班長曰く『カレーの香りの素』


 ずっと前に登場した坪和寛久さんの動画で最初に鉄板などでちゃっちゃと炒められる種がクミンだ。


 それから味の素も大量に入れる(八振り)。



 それらを袋の中で混ぜて鶏肉を入れて、小一時間。



 ここが『からあげポイント』


 揚げるときに生焼けなどになるのは中まで常温になっていないからだ。


 すると、ミディアムレアなからあげが出来る。



 タイマーが鳴ったら、たれをざるで切ってボールに入れて卵と絡める。


 次に衣(小麦粉と片栗粉を混ぜたもの)をつける。



 ここも『からあげポイント その2』


 衣はバリアーであり、その衣がない場所はいわゆる水分、水であり、当然熱した油と触れれば爆発する。

 

 なので、気持ち厚めでよろしい。



 フライパンで熱した油に二分半いじらずに見守る。


 今回最大の助っ人と書いて調理器具を手に入れた。

 

 百円ショップで。


 その名前は「菜箸」


 今まで割りばしで間に合わせていたが、楽だ。



 さて、裏も二分ほど上げて、バットなどに移す。


 もちろん、我が家ではキッチンペーパーを厚手に敷いた皿だが……


 油の処理を終えて、一つ、少し冷めたからあげを食べる。



 正直、普通に美味しい。


 過度に塩辛いわけでもなく、生焼けもせず、ざくざくさくさくの衣にジューシーな肉汁がある。


 クミンもほのかに(いい意味で)「大地の香り」みたいでいい。



 ぜひ、おためしを。

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午後十二時半に、私は「からあげ」を作った 隅田 天美 @sumida-amami

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