双剣27.5 悪魔の主従-星を占る悪の神と星に祈る聖職の悪魔

悪魔の主従-星を占うみる悪の神と星に祈る聖職の悪魔


双剣本編、26、27話の後となります。

――――――――――


 悪界、その中でも悪魔が寄り付かない、いや、普通の悪魔ではそもそも近づくことすらできない場所の内の1つ。

 そこには今にも崩れそうなほどにまで腐食している城が存在した。



     △▼△▼△


「で、ガウラロス。あの腕輪を“あれ”に取り付けろという俺の指示は無事に完遂できたのか?」


 その城の最奥、屋根が崩れ落ち悪界の常夜が覗く謁見の間にて2体の悪魔が向かい合い、玉座に座す悪魔が眼下で跪く悪魔に向かってそう問いかけた。

 それに対し、神代から生きる聖職者であるその跪いている悪魔は少し言葉に詰まりながらも、彼の主の質問に答えた。


「っ……。はい……。最低限、腕輪の取り付けは完遂し、戻ってまいりました」

「最低限?」


 玉座に座す悪魔――悪魔神ガミズルクスはその報告に対し特に驚いた様子もなく、さらに詳しい状況を訊く様に、最低限の言葉で聞き返した。


「は。腕輪を取り付けるところまでは特筆すべきものは無かったのですが、取り付けた後、対象から離し、効果の発揮しない状態であったはずの頸飾が起動してしまい。

 私の魂に刻まれた記憶と此度のガミズルクス様の計画の全てを、魂霊に覗かれてしまいました」

「ふむ。成程な。だがまぁいいだろう。お前に訊かせたのは計画の一部に過ぎんし、その上でその情報は今知ったところで活用できるものでもないはずだろうしな」


 己の失敗を恥じるように話した聖職者の悪魔――ガウラロスに対し、ガミズルクスは特に気にした様子を見せなかった。そしてそれ以上に、よくやったとでも言いたげな雰囲気を醸し出していた。


 ガウラロスはその主の雰囲気を感じ、複雑な感情を抱いた。


(ガミズルクス様は我の記憶が覗かれたという事実に対しては何も思われないのか? それに、我の事を信用していないような言動を。いや、まぁこういう事態が起きた今にしてみれば、ガミズルクス様が我に全てをお話しくださらなかったことは、良くはないが良かったことだろう。それに、今に始まった事でもないしな。我に教えられる情報が全てではないのは)


 この7,500年近くの付き合いで過去にも同様のことが何度もあった事から、それほど重く受け止める様な事でもないと、ガウラロスは結論付けた。

 それと同時にガウラロスにガミズルクスが言っていた、活用できる情報でもない、というのはどういうことかという疑問も浮上してきた。


「ガミズルクス様。あの情報を活用できない、とはどういう事でしょう」

「ん? あぁ、まぁその言葉の通りだが、お前に話し指示した内容はそのまま水人族の青年にあの監視連絡用悪魔を封じた腕輪を付けろという物のみ。その上で、それは全てあの場で確認できることのみだっただろう?」

「確かに、そうですね。あの魂霊は腕輪の悪魔に気づいていましたし」


 そう言われ、ガウラロスはあの瞬間を思い出し、確かにそれだけだ、と思った。


「だろうな。まぁだから大丈夫だ。封印した悪魔に対し魂霊が何かをするという未来は無く、封印した悪魔と俺の繋がり・・・を辿ってここに来ることは、あるにはあるが、今すぐではない」

「ガミズルクス様とその星が言うのであれば、そうなのでしょう」


 ガウラロスはそう言いながら立ち上がり、崩れ落ちた天井の先にある、常に輝きが消えることの無い星々に対し、祈りを捧げる。

 玉座に座していたガミズルクスも立ち上がり、祈りは捧げないまでもその光景を見ようと頭を上に向け、知らずのうちに独りちる。


「いつまで経っても、変わらない。

 初めてこの空を見た時は奇麗だったが、7,500年も見れば飽きもするし、覚えもするか」


 その言葉を誰に聞かれることもなく呟いたその悪の神ガミズルクスは、どこか飽きているようで、また、どこか嬉しそうであった。


「全ての星に告げる。……いや、やっぱり無しだ」


 何かを告げようとしたその悪の神は考えが変わったのかそれとも、初めからと決まっていたのか。


 悪の神が星に何を告げようとしたのかを知る者は、悪の神ただ1人か、それとも。

 全てを知っているこの世界か。



 悪の神が再び玉座に座った瞬間。

 他の星より輝いていたその星が、悪の神が見ていないことを確認したのか、傍目には変化と分からないほどにより一層、輝いた。

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