明日は、晴れるかな
黒片大豆
1. 日が照っているのに、急に雨がぱらつくこと。日照り雨。
「雨だ」
自宅の外は、いつの間にか灰色に染まっていた。
雨はしばらく止みそうにない。9月の天気は気まぐれだ。
その時ふと、父が傘を持っていっていないことを思い出した。
私は明日の準備を止め、そして気分転換にと、男物の傘を持って駅に向かった。
***
「で。自分の傘は忘れてきた、と」
「うっせ」
中途半端な気持ちがそうさせたのか、恥ずかしいミスをやらかした。
傘を持ってきたのに、ビニ傘を買うのも馬鹿らしい。
結局私は、父との相合い傘を選んだ。
通り慣れた道を、しばし二人で無言で歩む。
「明日は、晴れるかな」
私は沈黙に耐えられず、私が今、一番気にしていることを口にした。
「ん、大丈夫だろ」
父は適当な相槌を打つ。
「さみしく、無いのか?」
私は、二番目に気にしていることを口にした。
「まあな、慣れたな」
「そんな簡単に慣れるなよ」
父の適当な答えに、被せ気味に否定する。
「……だな、一人は、正直さみしいぞ」
父の持つ傘に、パラパラと当たる大粒の雨。
「あの、さ」
「ん?」
「いままで、ありがとうな」
「どういたしまして。幸せになれよ」
生暖かい雨が、私の頬を伝っていった。
雨はまだ降っている。けど、
いつの間にか空は青く、日が照り始めていた。
明日は、晴れるかな 黒片大豆 @kuropenn
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