第3話

 朝三時。

 まだ朝と言っていいのかわからない時間帯。


 砂龍バル=サンドラの巣を目指していると、レオンが口を開けた。


「バル=サンドラは砂に変化することができる厄介な魔物だ」


「そ、そうだったんですか!?」


(しっ、知らなかった)


「じゃあ、どーすればいいんですか?」


 砂になってしまえば、攻撃が通らないはずだ。

 つまり、無敵。

 そんなやつを相手にして勝てるのだろうか。


 少し、困惑しているカルタにレオンは リュックから大量の水筒を見せた。


(なッ、なんて量だ……)


「これを使う。いいか、カルタ。どんな生き物にも必ず弱点が存在するんだ。バル=サンドラの場合、砂になっちまったら、水をかけろ。そうすれば、砂化を解除できる」


 少し、あのレオン・ロードなのか、と疑ってしまっていたカルタだが、やはり普通の冒険者ではないのだな、と関心してしまった。


「なるほど……」


 ほれ、とレオンはカルタに三本の水筒を渡した。


(お、おも……)


「水が切れたら、しょんべんでも使え」


「わ、わかりました。てか、なんでこんな早い時間からバル=サンドラ討伐を……」


「んなの、まだ寝てるからに決まってんだろ。寝てる隙に仕留める、それが冒険者の御法度だろーが」


 自信満々にそう言うレオン。


(そ、そうかな……?)


 あの伝説の冒険者パーティーの団長が言っているのだ、本当にそうなのかもしれない。

 

「剣に水をつけて、首を斬り落とす。ただそれだけの任務だ。まあ、隣で見てろ」


「う、うすッ」


「一撃で仕留めるからな」


 こうして、二人はバル=サンドラを見つけ出すために歩き続けた。

 

 一時間後──


「この辺に巣があるみたいです」


 地図を見ながらそう言うカルタ。


 景色は砂漠から洞穴の中になった。


「うむ」


 レオンは足を止めた。


「カルタ、静かにしてろよ」


 小声でそう言うレオンに、カルタは深呼吸をして息を止める。


 一瞬にして、緊張した空気と化した。


(別にそこまでしなくてもいいんだけどな……)


「この近くからバル=サンドラの魔力が感じる」


(す、すげェこの人……。魔力を感じ取れるだなんて!!)


 レオンは歩き出す。

 後を続き、カルタも歩き出す。


 次第に目の前には、大きな影が見える。


「──ッ!?」


 思わず声が出そうになったが、カルタは自身の舌を噛んでなんとか堪えた。


(見つけたゼ)


 大きな影はしっかりと姿が見えるようになった。

 全身にゴタゴタとしたコブ状の鱗を纏っている、一匹の龍。


「しっかり寝てるなー」


 レオンは剣を抜き、水筒で濡らす。


「一撃で仕留めてやるからな──ッ」


 バル=サンドラの首を目掛けて剣を振り下ろすレオン。


 が、その時だった。


 目を瞑っていたバル=サンドラは恐ろしい青い目を見せた。


「やっべ、目を覚ましやがったな!?」


 凄まじい速さでバル=サンドラは、後ろに下がりながら座ってる空に飛びレオンの攻撃を避けた。


 バサン──ッ!!


 と、レオンの一撃により、地面に切れ目が生えた。


(す、すげェ……本当にこの人、攻撃力バグりすぎじゃ……)


「くっそ、いいタイミングで目を覚ましやがって」


 舌を打ちをしながら、レオンは空に飛ぶバル=サンドラを見る。


「お前、ずるいぞ。空なんかに逃げやがってッ。こっちは、空飛べねェんだよ」


「レオンさん、任せてください」


「ん?」


(そうだ、こういう時くらい役にたたかなきゃ)


 カルタの右手には透明な、けれどもそこには確かに形があるボールがあった。


「魔法使えんのか」


「応用はそんなにできませんけど」


(へえ、結構頼もしいやつじゃん)


「【空気球エア・ボール】」


 と、カルタはボールをバル=サンドラに向かって投げつけた。


 【空気球エア・ボール】はバル=サンドラの羽に直撃し、「グアアア」と声を上げながら地面に倒れた。


「よくやった、カルタ」


「うっす!!」

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魔王を討伐し伝説冒険者パーティー団長は金が尽き冒険者になる。 さい @Sai31

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