幽奇堂

painyrain

第1話 わたし、りかよ

私の恐怖体験をお話しましょう。それは暮れも押し迫ったころのことでした。もう、深夜でした。私の電話がなり、私は仕事関係の電話だと思い急いで電話に出ました。

「もしもし」

「・・・」

「もしもし?」

「わたし・・・」

「はい?」

「わたし、りか・・・よ」

「はい?りかさん?」

「いま、あなたのおうちに向かってるの。まってて」

ぷつん。ツーツーツー

「もしもし?もしもし?」

「間違い電話かな?」「りか」という名前に心当たりがなく、わたしは間違い電話だと思いました。でもそれが身の毛もよだつ体験の始まりだったのです。

しばらくして、また電話が鳴りました。

「もしもし」

「わたし。りか。今あなたの街の駅についたわ。もう少しよ。まってて」

「あ、もしもし、間違え・・・」電話は切れてしまいました。

やっぱり間違えているらしい・・・そう思った私は、ちょっと親切心をだして、着信履歴から相手にかけなおすことを思いつきました。

電話機を操作して着信履歴をまいたのですが、不思議なことに履歴はありませんでした。番号も、非通知という表示もなにもなく、着信そのものがないのです。

私は電話の故障を考えましたが、見た限り問題ないようでした。

また、電話が鳴りました。私は、電話のディスプレイを確認しました。

なにも表示されていません。ただ、着信を知らせるディスプレイは光っていました。

私は、そっと出てみました。

「・・・」

「わたし。りかよ。いま、バス停のところよ。いまからあなたのうちに行くわ。まっててね」

電話はぷつんと切れてしまいました。

私は、先日テレビでしていた恐怖特集を思い出しました。

りかという少女から電話が掛かってきて、少しづつ家に近づいてくる。近づくたびに電話をかけてきて、そして最後に、「あなたのうしろよ」って言われると・・・

そんな話でした。。

また電話が鳴る。私の顔は恐怖で引きつりながら、そんなことは、ありえない・・・作り話だ・・・ってそう思っていました。でもなかなか電話をとることができませんでした。電話は鳴り止まず、私はおもいきって、電話に出ました。

「わたし。りかよ。いまかどのコンビニを曲がったところ。あとすこしであなたの家につくわ。まっててね」

ぷつん。つーつーつー

私はしばらく電話を見つめていましたが、窓に近づき外を眺めてみました。暗い夜の闇につつまれ窓のそとは何も見えません。

また電話が鳴りました。

「わたし、りかよ。いま、一階に着いたわ。」

わたしは、窓からそっと下を見ました。私のいる階は五階なのですが外に人影があるようには思えませんでした。

「わたし、りかよ。いまからエレベーターにのるわ」

私は、カーテンを握り締めて立っていました。全身の震えがカーテンを伝っていきます。

玄関の鍵!私は急いで玄関に行きました。鍵はかかっている。ホッとすると同時にまた、ベルが鳴る。

「わたし、りかよ。いまあなたのフロアについたわ。もうすぐ。まっていてね」

私は玄関から後ずさりしました。

「わたし、りかよ。いま玄関の前についたわ。うふふ」

わたしはあわてて、ベットルームの陰に逃げ込みしゃがみこみました。電話は切れているはずなのに、電話から直接りかの声が漏れてきます。

「うふふ。いまあなたの部屋に入ったわ。」

「さ、あなたはどこに隠れているのかしら。」

私は恐怖ですくみました。

突然、私の電話のベルが鳴りました。

私はあわてて電話機をベットの上に投げ捨てました。

見ると番号が表示されていた。

(私の家の番号・・・)

私は一人暮らしをしている…電話をかけてくる人はいない。私はおそるおそる電話に出てみました。

「わたし、りか・・・ちょっと、あんたどこにいるの!せっかく家まで来たのに、いないじゃない!わたしはね、ひまじゃないのよ。まったく!もう次の家に行く予定があるのにいったいどこほっつき歩いてるのよ!さっさと帰ってきなさい!」

電話の主はすごく怒っている。私はいま旅行中で自宅は留守にしている。

「いや、そんなこといわれても、急には帰れない・・・」

私が口ごもると、

「あー、もういいわ!もう次の家にいくから二度と来ないわ!!」

ガチャン!つーつーつー

電話は切れてしまった。

ここは、とあるホテルの一室ですが・・・たしかにリカは私の家にきていた。では、私の後ろにいて、長い髪の、上目使いで私を見つめ、つめを噛んでいるこの女の子は・・・・いったい。

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