17才の自分へ

第1話

　　17才の自分へ

いま

未来の君が

17才の君に向かって

手紙を書いています

いつも私は

君の視線を感じながら

長い年月を

歩いてきました

理想をゆずらず

最も厳しい目で

人間を見つめていた

あの日の君

生まれてまだ

17年しか経たないのに

世の中のすべてを

見尽くしていた君

そんな君のお眼鏡に

かなう生き方を

今の私は

出来ているだろうか

君があの時

見上げていた空の

延長線上に

私はいるだろうか

その問い掛けに

答える自信が

正直　私には

ありません

その問い掛けを

思い浮かべる時

私の目に浮かぶのは

涙しかありません

未来の君は

残念ながら

思い描いていた君の

将来の姿ではありません

ごめんなさい

17才の君

ごめんなさい

これまでの私

いくら謝っても

歩いた道は戻らない

過ごした時間は

帰って来ない

それでもいま

未来の君が

あの時の君に向かって

手紙を書いています

ひとつだけ

報告があります

君が想像し得なかった

未来についてです

未来の君は

家族を持ちました

やさしい奥さんと

男の子が一人

男の子の目は

どことなくあの時の

君の瞳の輝きに

似ています

その瞳を見ていると

私は忘れていた

17才の自分を

思い出します

そして私の瞳にも

わずかながら

あの時の光が

残っているのを……

17才の君へ

17才の自分へ

現在の自分へ

私から私へ

いま手紙を書いています

こんな自分を

どうか許して上げて下さい

きっと許せるよね

だって

ここにいる私は

17才の君と

同じ私なのだから

　　　　　　　　　　（了）