アイドル殺人事件

@Kid0621

アイドル殺人事件

「今日はサンキュー。 めっちゃ楽しかった。また来いよ。」

「わあ、今日の아안(イアン)様も最高にか っこいい。神様だわ。」

そうかな。私にはただの人間に見えるけどな あ。まあ、いっか。

 私は今、友達に連れられて(いや、連れて 行かれてだな)、「Wolves」のライブに来ている。友達も私の横にいる人もその横にいる人もライブが始まってからずっと叫んでいる。こっちはめちゃくちゃ耳痛いのに。

 ここにいる人たちは誰も、いやこの世界で いきている誰もが予想できなかった。今日が その「아안(イアン)が生きている最後の日だ」なんて、誰も予想すらしなかった。 


次の日の早朝、昨日一緒にライブに行った 友達から電話がかかって来た。

「私、死にたい。」

「何。どうしたの。こんな朝早くに何かあっ た。」

「えっ、何って。キムキム、テレビ見てない の。」

「だって今起きたんだもん。」

そうそう。自己紹介がまだだった。 私の名前は캄루아(キム・ルア)。韓国人だ。 みんなからは「キムキム」と呼ばれている。 年は二十七。職業は探偵だ。しかも超有名。 うそ。そこそこ有名。この前、犯人とばった り会って捕えたら一役有名になった。あ、私 の自慢話の前にテレビ確認しなきゃ。

 私はぽちっとリモコンのボタンを押した。 ちょうど今日のニュースが始まったところだ った。

「今日未明、アイドルグループ「Wolves」が活動する事務所の二階で박아안(パク・イアン)さん、二十三歳が遺体で発見されました。警察は自殺と見て調査を続けています。」

え、うそってその前に友達をなだめないと。 それから二時間ほどかけて私は友達をなだめた。

 その二日後、友達が男の人と一緒に私の事 務所にやって来た。友達の名前は双葉萌音。 職業は警察。階級は警部補って。ふ〜ん、意 外と頑張ってんだ。

 そして、もう一人の男性は、

「椎名渉と申します。今日は有名なあなたに お願いしたいことがあります。昨夜のアイ ドルの事件なのですが。」

「あ〜そのニュースなら拝見しました。ニュ ースでは自殺と。」

「それがわからないんです。自殺にしては不明な点が多くて。」

私はため息をついた。仕事を受けたくないわけではないが、めんどくさそうだ。その仕事が有名なアイドル絡みで友達がファン。引き受けないわけにはいかない。

「わかりました。詳しく聞かせて下さい。」

「被害者は박아안(パク・イアン)さん、二十三だ。今、とても有名なアイドルグループ 『Wolves』の一員で他のメンバーは리아죠(リ・イジュン)、차은우(チャウヌ)、윤소아(ユン・ソア)、来栖心桜(くするこころ)です。自殺の理由として警察は最近自分の人気が少なくなったことに対するストレスからと判断しているのですが、不明 な点というのは、この写真を見て下さい。」

と言って、一枚の写真を取り出した。その写 真には机の足のようなものが写っているが一 本は折れて、もう一本にはロープがむすんで あり、折れている方には他の場所と少し色の 薄いロープの後のようなものがあった。

「これは被害者が首を吊っている間、または  死亡した後に誰かが結び直した跡だと思う んです。」

「どうしてそう思うんですか。」

「それは刑事の勘です。」

また、訳の分からないことを言い出したぞ。「では、取り敢えず一回現場を見せてもらってもいいですか。」

「はい、もちろんです。」


それからすぐ、私たちは現場に行き、桐生 永遠という『Wolves』のマネージャーさんに事務所を案内してもらった。

「ここが現場となった部屋です。」

案内された部屋で私は観察を始めた。今の段 階で不審に思った点は三つだ。一つは部屋の 真ん中に大きな四角形の跡があった。二つ目 は被害者がコートを着ていたこと。今から自 殺しようとする人が寒いからといってコート を着るかな。そして三つ目は、

「あの〜、床暖房はいつもついていますか。」

と桐生さんに尋ねた。

「ええ、朝七時〜夜十二時までは基本的につ いています。夜十二時を回ると勝手にブレ ーカーが切れ、止まるようになっています。」

「そうですか。ありがとうございます。」

次に椎名さんに質問した。

「死亡推定時刻はいつですか。」

「だいたい午後十二時〜午前一時の間です。」

そうか、あっ、もう一つあった。

「桐生さん、何度もすみません。『Wolves』の兄弟関係を知りたいんです。」

「全員一人っ子です。」

それを聞いて、私は一瞬何かが引っかかった が分からなかった。

その日の夜、私はネットの掲示板で『Wolves 』を調べていると気になることが書いてあった。それが『来栖心桜って二重人格』と。他にも似たようなコメントがたくさんあった。その中にまた一つ気になるコメントがあった。『来栖心桜は地方の病院にいる。』このコメントで点と点が繋がった気がした。私はこれをすぐに警察に調べてもらった。すると警察は、

「彼女は茨城県の小さな田舎の病院にいるよ うです。」


その後一週間が経ったある日、私は

「全ての謎が解けた。被害者が亡くなった部 屋に集合させて。」

その声に集合してくれたのは、友人とその上 司、『Wolves』のメンバーとマネージャーだ。

「さて、start reasoning.まずはこの事件は自殺ではなく、他殺だ。」

これを聞いて、皆が驚いた様子だった。

「まず犯人は自殺に見せるために椅子を支え られるぐらいの大きさの氷を用意した。そ れからこの部屋の隣のトイレに睡眠ガスを ためておき、被害者を眠らせた。その後被害者の首にロープを巻いて氷の上に吊るし、もう片方の切り端を正面の部屋の机の足にくくりつけた。あとは全て床暖房に任せればいい。床暖房が少しずつ氷を溶かしていき、少しずつ被害者の首を絞めていく。だが、犯人の盲点だったところがある。それは氷が溶ける時間を計算しなかったこと。夜十二時を回ってもまだ氷が残っていた。多少まだ床が暖かかったから小さくはなったが、完全に溶けなかった。だから跡に残ったんだ。さらに朝、警察が来る前にここに来て紐を括り直したことだ。被害者も暴れたのだろう。それに耐えられなかったのか、括り付けていた足が折れてしまった。だから、慌てて括り直した。手袋をしていない手で。調べたら指紋が出てくるだろう。来栖心桜さんいや心優さん。あなたのね。」

「え、なんで私。それに『心優』って。」

「君の本名だろ。あなたは心桜さんの妹の心  優だ。すべてお姉さんが話してくれた。自分がこのグループで仲間から暴力を受けて、入院していること、その仕返しに妹が私となって機会を待っているということも全部。さあ、心優さん。あなたの口からも話していただきましょうか。真実を。」

少し黙っていたが心優は話し始めた。

「私は心桜の双子の妹。お姉ちゃんのアイドル活動をいつも一番近くから見ていた。いつもニコニコで明るいお姉ちゃんが好きだった。でもある日を境にお姉ちゃんは笑わなくなった。テレビではそれまでと同じように笑っているのに家に帰ってくると笑顔を見せなくなった。そればかりかアイドルを辞めるとまで言い出した。」

「その境目になった日って。」

その友人の問いに私が答えた。

「来栖心桜さんがセンターに選ばれた日だよ。」

それを聞いてメンバーがざわついた。

「そう。その日を境にお姉ちゃんは아안(イアン)から暴力を受けていた。それまでセンターだった아안(イアン)はセンターを取られた腹いせにね。」

「それだけで君は아안(イアン)を殺したのかい。」

リーダーの차은우(チャウヌ)が口を開いた。それを聞いて心優はすごい形相で차은우(チャウヌ)を睨んだ。

「それだけ。ふざけるな。そのせいでお姉ちゃんは二度と歩けないんだ。だから踊ることも出来ないし、アイドルも続けられない。それをお前はそれだけに済ませるのか。お前たちだって同罪だ。誰も아안(イアン)を止めなかったんだからな。」


 その後はとても忙しかった。来栖心優はおとなしく逮捕され、『Wolves』は当然解散。連日ニュースになっている。そのせいで友人は病んでしまった。その友人をケアするのが一番大変だ。そして、これをきっかけに仕事がどんどん降ってくるようになった。ああ~、忙しい忙しい。

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