星を砕く海

ラッセルリッツ・リツ

星を砕く海

 星屑の夜。私は冷めきったコンクリートの桟橋から藍色の海へ飛び込んだ。哀れにも海面を静かに波揺れる星屑を捕まえようとしたのだ。およそ正気ではない。薬に泡蒸し果てた異常者のようだ。半ばそれは正しいのかもしれない。掬いもできない幻を追いかけるのほど星に縋っているのだから。


 こんなことをしてなんになるのか。


 手から零れる星と何度も問い掛けてきた言葉が照らし合わさっていた。なおもまだ寝耳のままか。身を包む海の冷たさは身体を蝕む毒のよう。そう微睡む。

 砂に文字をなぞっては波に攫われ、残るは切ない記憶のみ。夜も眠ろうとすれば夢のうちにそればかりなのだ。けれども独楽は無情に回り、反して私は耐えるがごとく写し見の感情を抱いた。ある時は燃え盛り、ある時はこと澄まし、ある時は焼き切れ、またある時は空を駆け抜ける思いだった。して辿り着いたのは悪魔がいれば口付けさえも厭わず、ありもしないものを求め、毒気づいた脳に苛むばかりである。


 憧れたのだろうか、見惚れたのだろうか、愛してしまったのだろうか。憎いほどに空は瞬き、皮肉なほどに手は届かない。あたりまえのことだろう、いつから願い惚けたのか。いつからそうも傲慢になったのか。果てに妬み、悔しくなって、海を叩いては星を砕こうとした。


 流れるばかりの星を見てさらに憤って気づいた。私はもとより星を求めてたのではない。怖そうとしていたのだと。


 やはり太陽に焼かれたのだろう。太陽ならば嫌でも目に付く。星は輝いても昼ならばその眩しきゆえに見えない。夜を殺すのはまた強大な一つ。星を砕きたいのは、太陽に焼き焦がれてしまったからだろう。浮かぶ星をよそえばいづれ集まって太陽となせると足掻いたのだ。しかしどうだ、その一つの屑さえに指先さえも触れられないではないか。実に滑稽な始末だ。


 日を思い、月に弾かれ映る己の水面、また哀れに波と踊る。まるで嘘吐きのピエロのようだ。実に哀れだ。こうまで失望すると熱も冷めていく。毒は名ばかりとなっていく。


 すると焦げた心は海に涼み、ここもまた星なのだと思い出した。


 浮気心か月に引かれる水溜まりも、日に喘げば雲となる。地球に生まれ波揺られる宿命とわかって熱が冷え切り、いささか凍りつくと震えるのは若さゆえだろうか。しかしもう疲れた。このまま水に灌がれようか。また浮かぶ軽さも価値の無い様だ。されど透明に浮かばぬ重さはあるところ――あればこそ星に届くというのに――私は存外ではないと水に酔うのも悪くはない。


 星を砕かれ、私は静かに漂う。虚構なる星を、もう浮かべはしないだろう。


――あとがき――

 思いついた詩を繋げて適当に作った。だから内容がガタガタという。頑張ったんだけど難しかった。

 それでも面白いと思ったのなら☆ください。なんてね。


ちなみに

 「その屑が日を未だに憎むのならば、それはいつか暗い太陽となり星屑を黒く染めるのだろう」

 というのも浮かんだが、使い方がわからずやめました。

 


 


 

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