第2話

 いつも通りのはずの通学路。毎朝見ているはずの景色なのに、何だか新鮮に感じてゆっくりと歩きながら眺める。


 今朝はいつもより早く家を出たので、少しゆっくり歩いても学校に遅刻する心配はない。元々、遅刻するような時間に家を出てはいなかったが。


「あ。この家の庭に植えられている花、綺麗だな! ちゃんと花の世話がされているのが分かる」


 美化緑化委員になり花の世話をする機会がたくさんあった。初めの頃は全く分からなかった住宅に植えられている花の名前も、徐々に分かるようになってきた。


 各家庭によって花の植え方が異なり、とても興味深い。毎日通学するのが楽しくなっている。


「この道を通学し始めた時には他人の家の庭を気にしなかったのに、こんなに楽しめるようになるなんて思わなかったなぁ」


 色とりどりに咲いている花を見ながら進む。この辺りは街路樹とその周りに植えられた花も市に管理されているため、道路の端に植えられているものも考慮されていて、綺麗だ。


 委員会の活動で、学校近くの住宅や街路樹の清掃や花を植える手伝いをしているので思い入れもある。


「初めは面倒だと思っていたのが、懐かしく感じるなぁ」


 花を植える作業はまだしもゴミ拾いにはあまりやる気が出なかった。


「面倒だと思っていたのに、地域の人に感謝されたり市の職員に褒められたりするうちに、やりがいを見つけたんだっけ」


 嫌々ながらゴミ拾いをしていたことが恥ずかしいと思えるほど、地域の人や市の担当職員から感謝され、褒められた。それが何度も続くうちに、今自分がしていることは小さなことではあるけれど大切な作業であると考えるようになった。


「何人か、顔見知りにもなったな」


 委員会活動の学外の清掃作業を何回かしているうちに、近隣住民やよく一緒になる市の職員の顔と名前が一致するようになった。時々、道端やお店でばったり会うこともある。それからは会ったら軽く挨拶をするくらいの親しさになった。


「中学生の頃は外での交友関係があまりなかったけど、高校生になって増えてきたな」


 正確に言えば、高校の委員会に入ってからだが。元々人見知りというわけではなかったが、自分から学校以外で交友を増やそうとは思っていなかった。美化緑化委員になったことで、自然と外での交友関係が増えた。


「色々な人と話すのは良い経験だな」


 大人たちなので、子供の自分では分からない話もある。でも親切に軽く説明してくれるので、知識も増えたと思う。


「美化緑化委員になって良かった」


 その委員会に入ったのは不純とも言える動機だったが今では真剣に活動しているし、この委員会に入って良かったと思う。


「今日は花壇の植え替え作業だったっけ?」


 校内には決まった場所に花壇が設置されている。今日はその一部の花壇の植え替え作業をする予定のはずだ。


「何の花を植えるのか楽しみだな」




 そう思いながら学校へと足を進めた。

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普通の1日 エミリー @onemuna-usagi

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