力の使い方

「はぁ……はぁ……」


あれから、俺は様々な修行をこなしていた。

修行と言っても、体作りに素振りで技は全然教えてもらって無いんだけどな。

ムニ師匠曰く、世の中の剣士は剣に魔力――エネルギーを乗せて戦う事が多いらしい。

エネルギーを弾いてしまう体質のせいで、それが出来ない俺は必死に身体能力を上げる事にした。


「うむ、3分丁度――中々早いじゃないか」


俺は障害物走をしていた。

勿論、ただの障害物走じゃない。

途中にあるマネキンを正確にしないと進めない、中々に鬼畜なステージになっている。

これが結構キツくてな……両断するのにも文字通り真っ二つにしないと先に進ませてくれないし、それを妨害するギミックまで付いている。

これを作った奴は本当に性格が悪いな。


「……他の人は1分で攻略してるんだろ?」

「それは技を使った時のタイムだな。ただの身体能力で測ったら、お前は上澄みだろ」


……いや、駄目だ。

世の中には技を使ってくる奴らが大半なんだ。

そいつらに対抗できるような強さが欲しい。


「なぁラーク、お前は何のために強くなりたいんだ?」

「? 弟を探す旅に出るためだ」

「ちなみに、俺はモテたいからだ」

「……それが、何だ?」


ムニ師匠は神妙な顔つきで座り、どこかに隠し持ってた瓢箪の中の酒を飲みだした。


「……いいか。力というものは、目的や意志のための道具なんだ。我々人間は何かを「やり遂げたい」という意志のために力を求めようとする。……だがな、たまにそのものを求める奴が居るんだ」


瓢箪から滴る酒は止まる事を知らず、口から溢れる酒を気にする事もなく、ガブガブと酒を飲み続ける


「昔、力を追い求めてを飲み込んだ馬鹿が居たんだ。……サーディは気絶してて昏睡状態にあるって信じきってる」


真理の魔石……確かにサーディの話にも出ていたな。

だが、気絶してると信じきってるって事は――


「……そいつの名はカヤザール。お前の想像通り故人だ」


……そう、だったのか。

力だけを追い求めて、結局その力に溺れて死んだのか。


「サーディとカヤザールは仲良かったからな。死んでるって思いたくないんだろうよ。――俺が言いたい事分かるな?」

「……あぁ」


俺は弟を探す前段階として、自分を鍛える事から始めた。

だが、力を得る事を目的に変えるのは駄目だと言っているんだ。

意志や目的ために力を使う……確かにな。


「ありがとう。心に刻んでおくよ」


俺はそう言って修行を再開しようとした瞬間、突如として街中に鐘の音が響き渡った。


「この鐘は……襲撃か!!」

「襲撃……?」


俺が後ろを振り返ると、空一面に広がる鳥達と一際目立つ巨大な龍がこの街に向かっていた。

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異世界より MeはCat @sheepgrandpa

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