蛇足 後日談

長年にわたる家庭生活で、翔太は莉奈との関係を深めながらも、家族としての役割を果たしていった。


母親のような立場になった彼は、日々の生活の中で次第に心と身体に微妙な変化を感じ始める。


鏡を見るたびに、以前の自分とは違うものを感じるようになっていた。


以前よりもさらに肩幅の広さや筋肉質な体つきが和らぎ、よりしなやかで女性的な外見が表れていたのだ。


「おかしいな……」


そう呟く翔太は、かつての自分が持っていた男性的な身体とはかけ離れた自分の姿に戸惑いを隠せなかった。


しかし、そんな彼を受け入れてくれる莉奈や、二人の間に生まれた子供に対する愛情が、彼を支えていた。


翔太はいつしか、家庭内では完全に母親としての役割を担うようになり、莉奈とともに子供を育てていた。


特に彼は、自分の娘に対しては深い愛情を注ぎ、育児に没頭していた。


二人の子供が成長していく中で、翔太は自然に「もう一人の母」として振る舞うことが増え、そのことに特別な違和感を感じることはなくなっていった。


しかし、ある日、ふとしたきっかけで莉奈がその変化に気づくことになった。


「翔太、あなた……最近、なんだかますます女性らしくなってきているわね」


その言葉に、翔太は一瞬驚きながらも、鏡を見つめ返す。


確かに、彼の体はいつの間にか完全に男性的な輪郭がなくなり、より女性的な姿へと変わりつつあった。


家事や育児をこなすうちに、体型が変わっていくことは理解できたが、それ以上に女性らしい姿になっていることに気づかされたのだ。


「そう、かもしれないな……」


翔太は困惑しつつも、その事実を受け入れるしかなかった。


彼は莉奈に支えられながらも、家族としての絆を強く感じていた。


それが、彼にとって何よりも大切だった。


しかし、この変化には実は隠された理由があった。


奈緒美が、昔から密かに翔太の食べ物や日用品に少しずつ女性ホルモンを混ぜていたのだ。


翔太がより自然に女性として生活できるようにとの配慮だったが、彼自身にはそれが気づかれることなく、時間をかけてじわじわとその効果が現れていた。


奈緒美は、翔太が自分の手のひらで徐々に変わっていく様子を遠くから見守りながら、微かに笑みを浮かべていた。


彼女にとっては、翔太がまさに自分の「娘」として育ち、幸せな家庭を築いていることが何よりも喜ばしいことだった。


そして、翔太が完全に女性のような外見を手に入れた今、奈緒美の願いは叶ったのだった。


翔太と莉奈、二人の子供が成長していく様子を見ながら、奈緒美はふと、遠い昔に抱いていた夢を思い出していた。


「二人の娘ができたようなものね」


奈緒美は、自分が長年にわたり翔太に施してきた小さな細工の数々を思い返しながら、心の中でほくそ笑んだ。


翔太は、彼女の手のひらの上で、理想の「娘」として育ってきたのだ。


やがて、翔太と莉奈、そして二人の子供たちは、家族としての絆を強めながら幸せに暮らしていく。


翔太自身も、以前は感じていた違和感が徐々に消え去り、今の自分を受け入れるようになっていった。


彼が父親としてではなく、「もう一人の母」としての役割を果たすようになったその姿に、家族は何の疑問も抱かず、日々を過ごしていた。


奈緒美はそんな彼らの様子を微笑ましく見守りながら、心の中で満足感に浸っていた。


翔太が完全に自分の理想の「娘」として成長し、彼自身もその運命を受け入れた今、奈緒美の中にはもう何の不満もなかった。


「これでよかったのよ……」


奈緒美は、二人の子供たちの笑顔を眺めながら、翔太と莉奈が築き上げた家庭を祝福するように心の中で呟いた。


そして、家族の幸せを願いながら、静かに微笑みを浮かべたのだった。

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彼女の願い、僕の未来 古都礼奈 @Kotokoto21

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