掌編「ユーモア」


「そのシャツの……デザインもかねた、英文? なんて書いてるの?」

「えっと……’和訳してください’……かな?」

「え? いや、おれは英語苦手だから、代わりに和訳してほしいんだけど……」

「そうじゃなくて、和訳してください、って、英文で書いてあるんだよ」

「和訳してくださいを英語で言ってるの……? なんで?」

「さあ?」


 意図はなんだ?

 ただ、デザインであり、内容はどうでもよかったのかもしれない。


「ようするに、なんて書いてあるのか読み解く必要はないですよ、ってことを言いたいんじゃないの?」

「でも和訳しないと見えてこない配慮なら、意味がないんじゃないか?」


 読まないでください、を和訳した後で分かったみたいなことだろうし。既に読んでしまっているから読まないでくださいと言われても……もう遅い。読んでしまったよ。


「ははーん、ならこれは……ユーモアだよ」

「あん?」

「だから作り手側のユーモアってことなんだろうなあ」


「…………ユーモアって、なんだよ」


 だからさぁ、英語苦手だっつったろうが!



 …了

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