追記

【楽茶碗】

 楽茶碗とは、室町時代に千利休が自らの嗜好を具現すべく、瓦職人の楽長次郎に依頼して完成させた茶碗。ろくろを使用せず、手捏てづくねで成形した素朴な茶碗は、「侘び」の精神を表す。楽茶碗の色は抹茶の緑が映えるよう、黒また赤を主とする。

 茶道文化とともに、楽茶碗の製作は楽家代々によって現在まで継承されている。


【曜変天目茶碗】

 天目茶碗とは、もとは宋の時代に中国福建省建窯で作られ、浙江省天目山で使われていた鉄質黒釉の陶器の茶碗である。これが日本に伝わり、現在ではすり鉢状で口縁部がくびれた形の茶碗を「天目」と称する。

 この天目茶碗において、窯で焼成する際に、窯内の温度変化を要因とした釉薬の変質などによって、まるで夜天のような模様を描くものがある。これを「窯変ようへん」、ひいては星の耀きを宿すように見えることから「曜変」と呼ぶようになった。

 曜変天目茶碗は稀少であり、公に曜変天目として認められて現存するものは日本の三碗のみであり、いずれも国宝に指定されている。

 しかし、その製法について伝承は途絶えており、原材料や焼成方法など一切の記録は見つかっていない。国宝のため、科学的調査の方法も限られる中、現代の陶工が曜変天目を再現すべく試行錯誤して完成を目指されている。

 瑠璃色の宇宙を内包する曜変天目茶碗は、陶磁器に興味のない方が見ても美しいと感じる茶碗です。特に、美術館の展示においては最も美しく見えるよう工夫されていますので、機会があればぜひご覧ください。


■静嘉堂文庫美術館(東京)

 https://www.seikado.or.jp/collection_index/collection01/#category-title

■藤田美術館(大阪)

 https://fujita-museum.or.jp/topics/2022/03/25/1903/

■大徳寺龍光院(京都)

 通常非公開。他の美術館の特別展に貸出された際に観覧可能。

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花の色はうつりにけりな 香久山 ゆみ @kaguyamayumi

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