蒼穹堕とす日陰の子

　地底人のスイは、一度も空を見たことがない。
　大昔、突然変異により現れた「新人種」によって絶滅寸前に追いやられて以降、スイの祖先「旧人種」は地の底に身を隠してきた。
　思うように村の仲間の役に立てず、17歳のスイは焦りの中で過ごしていたが、狭く平穏だった地底はある日、何者かの襲撃を受ける。
　スイはただ一人村から脱出し、右も左も分からない初めての地上へと放り出された。
　行き場なく彷徨うスイを、民間軍事組織で副団長を務める32歳の男、ロイドが拾う。
　ロイド保護の下、スイは旧人種という己の正体を隠して生きることとなる。
　地上では、スイの体液を前にした者が発狂する現象が度々発生した。どうしてか、正気でいられるのはロイドだけだった。
　この奇妙な体液にロイドは、自身が長年謎を追う、王政がばら…続きを読む