登ったはよいが、降りられない。

 不思議な塔がありました。



 いつからそこにあるのか、

 人間ヒトに聞いても「わからない」と答えるのです。


 そのくらい、ずっと にいるのでしょう。



 風が吹き

 時間ときが経ち、

 朽ちていく……はずなのに


 いびつな塔は

 いつまでも いびつなままで

 届きそうで 届かない

 

 壊れそうで 壊れない


 見れば見るほど

 それは

 不思議な塔でした。


 月の明かりが差し込むと、

 塔のどこからか歌声が聞こえてくるのですから。


 







 あぁ、そういえば

 月の光が澄む夜は、

 箒に乗った女が、ひとり。

 ふらりと塔に立ち寄るそうです。




 月を目指した男の思い……

 塔はいつまでもに建っておりました。



 

 今宵も月光浴がしたくなる夜ですね。






 

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黄金林檎の落つる頃 結音(Yuine) @midsummer-violet

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