女は箒に乗ったまま、

 月に向かって飛んでった。


 取り残された男は

 塔の上から

 月に向かって叫びだす。


 手を伸ばし

 あらん限りに身に乗り出して


 果てなき空へと


 星々の孤独を飲み込んで


 男は月に向かって


 その身を……









 届くと思ったのだ。


 女は箒に乗っているから

 あのように

 やすやすと飛んでいったのに。


 男の体は泥と粘土と埃にまみれ

 乾いた刷毛が後を追う。


 崩れ落ちたのは男の体。

 倒れずに立ついびつな塔。


 静かな夜に響いた歌声は、

 砂地に散って

 

 思いだけが 月を目指した。






 

 



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