第8話 大切な人

……あれから、もう1ヶ月が過ぎた。

外の景色は、赤や黄色へ色づき始め、秋模様である。


良美に一通のメールがきた。

秀人からだ。


短く『会えないか』というものだった。

1ヶ月の間、秀人は何を思っていたのだろう。その文章からは、うかがい知ることは出来ない。


秀人は、私の大切な友人だ。

秀人に会おう。


秀人は日中は仕事があるので、夜に会うことになった。


千賀子との待ち合わせで利用した、ペデストリアンデッキにあるステンドグラス前に、良美は立っていた。


程無く秀人がやって来た。

気のせいか、先日会ったときより元気にみえる。


「良美さん、お待たせ。此処の地下に、美味しい寿司屋があるんだ。其処で、食事でもしよう」


仕事から直行したのだろう。ネイビーのスーツを上品に着こなしている。

少し、ドキドキしてしまう自分が恥ずかしい。


駅ビルの地下にある寿司屋は、三陸の新鮮な海鮮を出す、地元でも食通には知られている店だ。


秀人は馴染みらしく、親方と軽く挨拶して、右手にあるお座敷に座った。

カウンターもあるのだが、余り話を聞かれたくないのだろう。



「良美さん、あの時はありがとう」

秀人は、頭を下げながら良美に言った。

「よかった。気持ちが通じて。

きっと奥様も喜んでいらっしゃるわ」


1ヶ月の間、秀人はあの出来事を何度も思い浮かべていたそうだ。

今までは、神秘的な世界は興味がなかった秀人。

ある日、響子さんの夢を見た。

夢の中で、響子さんは微笑んで、宇宙を指さして消えた。


「神秘的というか、現実の世界なんだね。響子は、苦しんでもいないし、宇宙に居るんだ。それを知らせるため、雪虫にメッセージを託したんだ」


「秀人さんなりの受け取り方で良いのよ。命は繋がっていて、無くなりはしないから」


「そうなんだね。それを教えてくれて、本当にありがとう。感謝してる」


良美の顔から笑みがこぼれた。


「…良美さんって、何者なの?」

ふざけた顔をして、秀人が言った。


良美は、すかさず笑顔で言った。

「ほら、中学の時に、恋文ならぬ変文を渡したの、覚えてる?私は、変な人なのよ。(笑)」


2人は、尽きぬ話をしながら、酒を酌み交わした。


秀人は、不意に言った。

「その力、もっと役に立てる気ある?」


…え?…

酔いもまわった良美の頭の上を、言葉が流れていった。



◇◇◇◇◇◇   ◇◇◇◇◇◇   ◇◇◇◇◇◇   ◇◇◇◇◇◇


拙い文章ですが、最後まで読んで下さり本当にありがとうございます。

このお話は一旦ここで終わりますが、秀人と良美のシリーズで

書いていきたいなと思っています。


また、これからも皆様の書かれる小説を楽しみに読ませていただきたいです。

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真夏の雪虫 @Sumiyoshi

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