第42話 藪を突けば蛇が出る?

「さて、どこから話そうか?」

 半身浴スタイルで、湯舟の縁石に背を預ければ

「全行程!」

 オレの隣に、並ぶレイア…こちらは肩まで浸かっている。


 お互い、湯舟の先に広がる広葉樹林を眺め

「全行程は難しいなぁ~。

 ダイジェストで勘弁してくれるか?」

 オレが折れれば

「ダイジェスト…で良い。

 ダイジェストの意味が分からないけど。」

 ぶっきらぼうに返答するレイアに、思わず苦笑してしまった。


 話しは、あっさりとしたモノだった…が、『送りオオカミ』のくだりから、俄然反応しはじめるレイア。


「それから?」

「まぁ、18号さんの大ハッスルが始まって、出てくるモンスターをバッサバッサと…。」

 チャンバラを演じるように湯舟ではしゃぐオレを見るレイアの顔が、いつも見慣れたモノとは明らかに違って見える。


「もう、パパったらぁ…可笑しいんだから♪」

 口元に手を当て、屈託無い笑顔をみせる。


 その笑顔におもいっきり驚き、言葉が止まると、向こうも気付いたのか、慌てて視線を逸らすレイア…なんだけど、視線の振り方がたどたどしくて、さらにオレの心を鷲掴みする!


「「…。」」

 ここで二人して会話が停滞する…んだけれど、しばらくしてレイアが語り出す。


「何だかホッとした。」

「…?」

「ママやキアとイチャイチャしていたのかと思えば、そんな雰囲気は欠片もないし…。

 かと言って、クレアさんを押し倒すような甲斐性もないし!」

「…なぁ、レイア…。」

「これなら、私が貞淑を守って来た事も間違いはなかった!」

 何かディスられているのか、持ち上げられているのか…訳が分からない。


 スッと湯舟から立ち上がるレイア。

 身隠しのタオルも湯舟に落ちて、一糸まとわぬ少女の裸婦が視界に飛び込んでしまう。

 慌てて視線を逸らそうと顔を横に向けようとした瞬間、少女の両手がオレの顔を無理矢理、彼女の肢体へ向けさせる。


「パパ!

 これが今の私!

 世界一パパを愛してる不道徳な淑女オンナの私…

 もう、目を逸らさないで!!」

 そう言って、震えながら近づいて来る愛娘の顔。


 ああ、オレのファーストキスが奪われ…


「レイア!!

 それ以上はダメェェェッ!!」

 悲鳴にも似た叫び声を挙げ、こちらは全力真っ裸マッパのキャッシーさん登場!


 レイアをオレから引っぺがすと、自分の胸元にオレを抱え込むキャッシーさん。

「これ以上はダメ!」

 ギューと抱きしめられ、そのフワフワぼでいに多幸感を感じてしまうショボいオレ。


「何よぉ!

 ママが譲ってくれるって言ったじゃない!」

 そう言うと、オレに覆いかぶさって来る若々し過ぎる乙女の柔肌。


「それは、それ!

 これは、これ!」

 キャッシーとレイアが押し問答を始めているが…フワフワとピチピチに挟まれて、オレ鼻血を噴き出す程シ・ア・ワ・セ♪


「もうっ!

 だったら、サッサと結婚しちゃいなさいよぉ!」

「あのね、結婚にはイロイロと準備が必要なの!

 心とか身体とか…。」

「そんな暇、私は待てないからね!」

 おやおや、フワフワがピチピチに押されてますよ…言動も物理的にも。


「…分かったわよ!

 んじゃ、このまま縁談進めましょ!」

「!!!」

 ん?

 押し問答終了?

 フワフワとピチピチのせめぎ合いも停滞しましたよ。


「ついでだから、全員でイッ君を支えましょ!」

「ありがとぉ~っ!

 ママ最高っ!!」

「!!」

 オレの意思そっち除けで、祝言のお話は完結した…。

 完結したのか?

 何やら気になる取り決めがイロイロと散りばめられているような文言にも聞こえてくるのだが?

 


 あ、あかん、上気した二人の身体と湯舟に浸かりすぎて…上せて来た。

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その聖剣の名前は『グルメの18号』 たんぜべ なた。 @nabedon2022

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