中には、こんな運転手!

崔 梨遙(再)

1話完結:900字

 某県の広告代理店に勤務していた頃。


 或る日、会社の飲み会(全員強制参加)があった。盛り上がってはいたのだが、終電の時間が迫って来たので、上司に、


「終電の時間なので帰ります」


と言ったら、


「タクシー代を会社から支給するから最後まで残ってくれ」


と言われた。


 ようやく飲み会が終わり、僕はタクシーを捕まえた。


「〇〇電車の××駅、わかりますか?」

「大丈夫ですよ、乗ってください」


 そこで、僕は不覚にも眠ってしまった。僕はタクシーで眠ることは滅多に無い。むしろ、寝ようとしても眠れない方だ。なのに、この時に限って眠ってしまったのだ。元々、酒が飲めないのに、僕にしては頑張って飲んだからだ。頑張りすぎた。ちょっと後悔、ちょっと反省。車に揺られながら眠るのは心地よかった。


「お客さん、起きてください」


 運転手に起こされた。僕は寝ぼけていた。


「すぐ近くまで来てるはずなんですけど、微妙に目的地がわからなくて……近くのはずですので、後は歩いてください」

「近くなんやね」

「はい、近くです。〇〇〇〇円です」

「高いなぁ、なんで? なんでこんなに高いん?」

「深夜料金とかありますので」

「領収書ください」


 降りると、スグにタクシーは走り去った。酔いが覚めた。そこは田んぼの真ん中だった。


「あの野郎! やってくれたな」


 あぜ道を歩けば民家があるようだ。僕はまず民家まで歩いた。15分かかった。夜遅い時間で申し訳無かったが、玄関チャイムを鳴らして住民に現在地と駅までの道を尋ねた。その場所の最寄り駅は僕が運転手に告げた駅の2つ手前の駅だった。


 時計を見たら朝方だった。僕は20分かけて駅に着いた。あと2駅。僕は始発を待って、始発で自分の家の最寄り駅まで帰った。



 ヒドイ運転手がいるものだ。寝ぼけてなかったら、タクシーを降りる前にタクシー会社にクレームの電話をかけていたところだ。



 善良な運転手さんが多い中、こんなにヒドイ人もいる。こんな人達がいると、タクシー業界の評判が悪くなるんじゃないかと心配してしまう。タクシーに乗るとき、ヒドイ運転手じゃなくて善良な運転手に当たることを祈りながら乗ってしまう。皆様、似たような経験はございませんか?







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中には、こんな運転手! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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