南の黄金郷から来た男に憧れた北の果ての少年。

19世紀末のカナダを舞台にした、西部劇風の年の差BL短編です。
主人公は北国生まれ北国育ちの先住民の少年で、相手はインカやアステカの文化を出自に持った中南米か南米出身の非白人の青年です。
主人公は若年でもかなりの面食いで、ゴールドラッシュで金を求めて北の果てまでやって来た、黄金のように美しいその青年に一目惚れしてしまうのですが、厳冬の過酷な環境の中ではその恋が実るはずはなく…というお話が、ところどころにユーモアが感じられる端正な文章で綴られます。

白人みたいになりたかったから他人の土地からほしいものを奪うことにした、と語る白人に王を殺され金を奪われた国の末裔の青年の拗れ具合は悲しく、その青年の考え方に居心地の悪さを感じつつも、美しいものが好きという気持ちで彼への想いを貫く主人公にはぶれない強さがありました。

「凍えるよりは、燃える方がずっと良い」という言葉が胸に残るラストまで、ぜひ読んでみてください。