一番大切なものがわからない魔術師と、逆に覚悟を決めすぎた騎士と。

現世ではあまり幸せじゃない人生を送っていた少年が異世界に転移して、強大だが代償が大きい力を持った魔術師として生きていくことになる流血多めのファンタジーの二作目です。
前作からがっつり話が続いているタイプの続編なので、前作を読んでない方はまずそちらを読むことをおすすめします。

今作のあらすじをざっくり説明すると、主人公が仕えている姫君の少女が治める王国が、隣国の魔女による民衆の扇動で危ない状況になったので、バディ関係にある騎士やその他の仲間とともに主人公が魔女と戦う話です。

主人公は王国の統治者である少女のことが多分好きで、基本は彼女のために戦っているはずなのですが、不幸な生い立ちのせいなのかいまいち自分にとって何が一番大切なのかわからないらしく、正ヒロインそっちのけで他の女子キャラ(たまに男子も)とのフラグばかりを立ててしまいます。
前作に比べればちゃんと正ヒロインのことを考えているエピソードは増えたような気はするのですが、関係が深まる速度はじれじれって言えるレベルじゃないほどにゆっくりです。

そして主人公との絡みがヒロインよりも多いかもしれない相棒ポジションにいる美形男子は、最強の騎士という設定にふさわしい迷いがないキャラなので、苦悩することが多い主人公との対比が面白いバディものとして読むこともできます。
代償が大きい力を持った魔術師である主人公が悩んで決意するときはだいたい自分を犠牲にする展開ばかりになるわけですが、その隣に立つ騎士である彼がどんな覚悟をしているのかはぜひ本編を読んで見てみてください。