透視メガネの有効的な活用方法について
紬寧々
透視メガネの有効的な活用方法について
「ついに……ついに完成したぞ」
薄暗い研究室の中で一人、喜びの声を上げる者がいた。
その男の名前は土田真士。しがない発明家である。
顎には無精髭が生えており、髪の毛はところどころが白く色づいている。
目の下にくっきり張り付いている隈は、彼が寝る暇も惜しんで作業をしていたことを雄弁に語っていた。
「これで私の……いや、人間の夢が叶うのだ」
彼は目の前にある発明品を大事そうに抱えた。事情を知らない一般人が見ると、口を揃えてこう言うだろう。
"これといった特徴のないただのメガネじゃないか"と。
その発言は間違っていない。見た目はどこにでもある普通のメガネなのだ。
ただし、あくまで"見た目"の話であり、機能は普通のメガネとか一線を画していた。
「下着姿や裸を見まくるぞ!」
それは、"服を透視するメガネ"だった。苦節20年をかけて発明したものは、彼の内なる欲望を叶えるためのくだらない道具であった。
そしてもうおわかりだろう。彼は変態なのであった。
だが、そんなことを彼は気にしない。
「そうと決まれば、すぐに街へ行こう」
彼はメガネを装着すると、実験室から飛び出し、久方ぶりの外の世界へと足を踏み出した。
「右側に付いているボタンを押すと、下着以外の服が透けて、左側のボタンを押すと、全ての服が透ける仕組みだったな」
街へ出た彼は早速、メガネの効果を試してみることにした。
「運命の瞬間だ。スイッチオン」
彼が右側のボタンを押すと、そこには──
"内臓がむき出し"の人々が歩いていたのだ。
「うえぇ、なんで内臓がむき出しになるんだ!?」
失敗かと思ったが、まだ左側のボタンが残っている。
彼が左側のボタンを押すと、そこには──
"骨がむき出し"の人々が歩いていたのだ。
どうやら彼は、服を透けさせるどころか、それよりも強力なものを作ってしまったらしい。
「そんな、俺の夢が......」
人目も気にせず、彼は路上でうずくまるのだった
後に彼は、歴史的に名高い医学賞を手にすることになるのだが、今はまだ知らなかった。
透視メガネの有効的な活用方法について 紬寧々 @nenetsumugi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます