第5話 女神様?

「あいつ、三股もかけてたのよ! 本っ当に、信じらんない!!」


 カレンは缶ビールをゴクゴクと飲むと、プハーッと豪快に息を吐いた。

 今日はBBQのやり直しだ。


「こうなったら、さっさと次の人を見つけて、幸せになってやるぅうーーーっ!!!」


 カレンは、いつもの箱庭で力強い雄叫びをあげた。


 ピーちゃんがその声にびっくりして、バサバサッと飛び立っていった。


「あたしにも、この魅惑のFカップがあれば……」


 カレンは据わった目で、ジロジロと私の胸を見てきた。


 でも、カレンは凛々しい感じの美人だ。モデルさんみたいに背が高くてスラリとしてて、背が低くてぽやんとしてる私とのセットは、いつも周りからは凸凹コンビって言われてる。


 カレンなら、すぐにいい人が見つかりそうなのに。


「むしろ胸にばっかり視線がいっちゃって、『私の価値って胸だけなの?』って逆にこっちが興醒めしちゃうよ? 肩は凝るし、他の所もお肉が付きやすいし」


 私は脇腹のお肉を摘んだ……ゔぅっ、ちょっと成長してない……?

 成長期はもうとっくに過ぎてるはずだよ? 自粛して?


「むぅ……贅沢すぎる悩みよね」


 カレンはむすっと頬を膨らませてそう言うと、やけ食いとばかりに、バクバクとカルビを食べ始めた。



 食後のデザートに焼きりんごを食べていた時、カレンがびっくりして叫んだ。


「へぇ〜、最難関ダンジョン・ウルティマが遂に踏破されたんですって!」


 カレンは最近、ダンジョン系のニュースをチェックするようになった。

 私がダンジョンに入るようになってからだ。


 私はただダンジョンを楽しみたいだけだから、そういったことにはあまり興味が無かったけど、「情報は大事よ!」ってカレンにピシャリと言われてしまった。


 ぽやぽやしてる私と違って、カレンって本当にしっかり者なんだよね。


「ダンジョン・ウルティマ、別名『翡翠のセノーテ』の九十九階層には楽園があって、真っ白な四獣に守られた癒しの女神様がいるんですって! 夢があるわね〜!」


 カレンがざっとニュース記事をまとめて教えてくれた。


「すごいね! ミュートロギアって、本当におとぎ話の国みたいだよね!」

「ねぇ、見て。この人が単独踏破したんだって。エルフのSランク探索者エルメル・エバーグリーン。結構イケメンじゃない? アリサの好みのタイプでしょ?」

「え〜、どんな人? …………えっ!!?」


 私は、カレンのスマホを覗き込んで、びっくりしすぎて固まってしまった——あのエルメルさんだ!


 うそ、ウソ、嘘っ……!?

 もしかして、ダンジョン・ウルティマの女神様って……!!?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

箱庭ダンジョン・セノーテ 拝詩ルルー @rulue001

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ