ぶつ切り

@takenoko437

逃げ逃げ……逃げ逃げ……


寛容でありたかったと思っている。

頭痛を抱えていたかったと思っている。

日和見ではない、中途半端でもない。

高みと高みのスキマの、溝にハマった僕は、とんでもなく惨めだろう。

高みにたどり着く前に高山病になって、逃げて、結果どこにも立てなくなる。


僕は、勉強に逃げた。

運動は得意でなかったから。

僕は、SCPに逃げた。

上のさらに上に上がいると知ったから。

僕は、謎解きに逃げた。

勉強への執着が僕を知の方へと向かわせたから。

僕は、現代4コマに逃げた。

一度逃げた場所に通用するはずがなかったから。

とにかく逃げに逃げて、そして僕はこうやってエッセイまで逃げてきた。


真剣になれない僕に、一日、また一日と失望が溜まっていく。

真剣になるたびに耐えられなくなるから、真剣になれない。

真剣になってまた新たな場所へ逃げるのが怖い。


自慢できるくらいに頭良くなってみようと思った。

自分の位置を知って、ほど遠い高みを見るのがつらくなった。

一つくらい記事を残せるようになってみようと思った。

一つくらいにたどり着くまでの努力を知って、面倒くさくなった。

素晴らしい謎解きをもっと作れるようになろうと思った。

これまでに素晴らしい謎解きを作ったことなどなかったと知った。


繰り返しの多い表現になってしまうけど、繰り返しの多いこれまでであったからしょうがない。

僕はいつも繰り返している。

ちょっと褒められていい気になる。

それはまるで歩いた赤ちゃんを称えるような、いや、非力な小動物を見て頑張ったね~、と称えるようなものなのに。

そして、もっと褒められよう、胸を張って褒められる人間になろうと思って、高みを目指す。

それで上を見て、すぐ苦しくなる。

当たって砕けられないまま、少しづつ朽ちていく。

そういうループ。

そういう自意識。

いまだに抜け出す方法を見つけられないでいるのか。


ストイックにありたかった。芯を持った人間になりたかった。頭痛を抱えたかった。

苦しみを、憤りを、頭痛を、創作にぶつけたい。

なのにそれは、どうにも僕から漏れ出ていく。

僕は頭痛を大事に抱え持つことすらできない。

漏れ出た憤りで僕の中の趣味の領域が満ちて、苦しくなって、逃げていく。

勉強も、SCPも、謎解きも、とてつもなく楽しかったのに。

逃げたくない。本当は、逃げたくなんかない。


結果、僕は寛容であることを説いた。

でも、それは嘘だった。僕は嘘を本当みたいに書くのがそこそこにうまいみたいだ。

僕が許したいのは、あなたでもみんなでもなくて、僕自身だけなのに。


満ちていく憤りを寛容に解消したかったのだろう。

でも、たぶんそれはできていない。

見て見ぬふりしているだけなんじゃないかと、いつも感じる。

これまで汚いヘドロみたいだった憤りが、有害ガスみたいに、危険で不快なまま見えなくなっていってるんじゃないか?


きっと、僕は自分を見つめなおすなんてこと、不可能だったんだろう。

僕を見つめている僕を、僕は見つめられていないからだ。

僕を見つめている僕を見つめている僕を、僕は見つめられていないからだ。


次の僕の逃げ場所は、どこなのだろうか。

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