夏の終わりの海の家

あげあげぱん

第1話

 もうすぐ夏が終わります。海開きから、賑わっていた砂浜も、すっかり寂しくなりました。


 今でも人はボチボチ来ます。けれど、あと数日もすれば海の家は閉まります。やっぱり海の家は夏に開いているから良いのです。夏だけの特別な場所だから良いのです!


 もうすぐ日が沈みます。海の彼方に沈んでいく赤い太陽を眺めながら、お片付け。今日の仕事が終わります。私の夏のアルバイトも、あと数日。そう思うと寂しいですね。


 店主さんは、また来年も手伝って欲しいと私に言います。嬉しくてありがたい話です。少なくとも、高校の夏休みはここで働いてお金を稼ぎたいなあ。


 もうすぐ二学期が始まります。私は学生に戻ります。勉強は大変だけど、友達が居るから楽しい場所です。


 私が高校に通っている間も、海は変わらずここにあります。海の家も、ずっとここに建っていてほしいなあ。私が夏に帰ってくる場所はここだと思うから。


 生きていると、帰る場所が増えていく。そんな気がします。居場所が増えていく、と言った方が正しいのかも。両親が待ってる家や、友達が待ってる高校や、店主さんが待ってる海の家。全てが私の大切な場所です。


 私が帰る場所は、これからも増えていくと思います。色んな場所で、色んな人に関わって。誰かに待っていてもらえるのは幸せです。


 そんなことを考えているうちに太陽は海の向こうへと帰っていってしまいました。夏の一日の終わりです。


 ばいばい、お日さま。また明日。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夏の終わりの海の家 あげあげぱん @ageage2023

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ