第13話 エピローグ

 大会前日の夜、空には厚い灰色の雲がかかり、小雨がぱらついていた。大会が開催される場所は僕が住んでいる町から高速バスで九十分の町だ。城があり有名な観光地でもある。その町の明日の天気予報は曇り。傘マークが明け方まで並んでいたけど、スタート時間になるころには雲のアイコンに変わっている。そして午後からはお日様マークが並び、申し分のないコンディションだ。

 僕はバックパックに二人分の寝袋と、シートとランニング用品一式を入れた。電気を消して部屋を出た。駅までの道のりを二人で一つの傘に入り、二十分かけて歩く。午後七時発の高速バスに乗り、大会が開催される街へ移動する。そこは多佳子さんの故郷でもある。僕たちは去年のその大会で出会った。僕は相変わらず車の免許を持っていなかった。多佳子さんは免許も軽自動車も持っていたけど、高速バスで移動したいと言った。

 マラソン会場には午後九時頃に到着した。既に準備は整い、照明は落とされていた。あちこちに大会やスポンサーの幟が立ち、確かにここで大会があるということを教えてくれた。それを見て、僕は安堵と興奮が入り混じったような幸せな気分になった。きっと多佳子さんも同じ気持ちだと思う。二人でこの場所に立ち、この感情を共有できることが、僕はなによりも嬉しかった。

 階段の下にシートを敷き、自転車で囲んだ。まるでつがいのバービーハウスのようだ。僕たちはそれぞれの寝袋に包まり目を閉じた。

 翌朝、多佳子さんと僕は同じ爆走天使のTシャツを着てスタート地点に並んだ。今年は二人とも裸足だ。

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爆走天使は裸足で走る @kujira_23

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