②ラッダの第二法則

朝、カーテンが開けっぱなしの窓を介して、太陽光がラッダの皮膚に照射された。


太陽光による光電効果で、今日もラッダは目覚める。


今日は月曜日。


ラッダという名の電子は、今日も今日とて、大学という名の原子核に束縛されている。


やる気はないので、エネルギーはつねにK殻の基底状態にあり、特別な報酬が与えられることでM殻へと励起する。


ラッダは、大学の単位という外発的動機付けに従い、眠い目をこすりながら朝食を済ませ、家を出ることにした。


家から大学までの最短経路をグラフ理論によって最適化し、足早に大学へと向かった。


通学している大学は、私立コヒーレンス工業大学であり、その中でもラッダは理工学総合学部に所属している。


量子力学を含む物理学はもちろん、数学、電気工学、文学、心理学、歴史、芸術などの多くの分野を広く浅く総合的に学ぶことができる場である。


しかし、ラッダは基本的に量子力学しか興味がないため、大学の名前に反して、インコヒーレントであるといえる。


通学路の最短経路を求めたにもかかわらず、そのアルゴリズムの計算時間が長かったために、開始時間ギリギリにラッダは講義室へ入った。


座席はパウリの排他原理に従い、2人で1つの机となっていたが、あいにく全ての席が埋まっているようだ。

つまり、講義室は希ガスの状態であり、そこに現れたラッダは自由電子となり、たちまち部屋はアルカリ金属へと錬金術的物質変化をとげたのであった。


ラッダは、講義室へ立てられたダイポールアンテナのように後ろでひっそりと講義を受信することにした。


しかし、講義室の後ろに陣取っている陽イオンならぬ陽キャたちによる、まるで水分子を逆さにしたような様相をしたキャラが住むファンタジーワールドの話がノイズとしてのるばかりで、まともに講義が聞こえなかった。


しかたがなくラッダは、ひざ立ちになり、身長ならぬ、アンテナの長さを縮めることで、講義の周波数のみを受信できるようにチューニングした。


講義が終わって、もう18時が過ぎた頃、ラッダは疲れ切って、量子力学のことも考えずに足早に家に帰った。


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※理系のため、熟語や言語的表現が間違っている場合がありますが、巨視的な視点で優しくお見逃しください。

※作者は、物理学専攻ではないため、実際の物理用語の意味を完璧に理解しておりません。意味の間違いがあっても、素粒子的ミスだと思ってお見逃しください。

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天才ラッダ・ダメラッダ 〜量子力学的観測〜 キッテル・ユウ @kittel_yu

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